Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》Mii-Temple Butoh
60
第4回成安造形大学卒業制作展。
大津パルコや大津市歴史博物館、大津市伝統芸能会館でも展示があるが、公演を見るのが主目的なので、三井寺参道会場を見るのが精いっぱい。それでも、37の作品(制作者)がある。ヴォイスギャラリーの松尾さんも作品を見ている。新居浜の池上博子さんに会う。
眼に止まったものをいくつか。「この仁王」、金堂の下の空間に木の彫刻。そして中に椅子。入って、見学に上がってくる人たちを眺めるのが気持ちいい。「凛」のファイバーアートも眼を引く。
「3月5日、風」、この人もファイバーアートだ。唐院への上り階段に、サーモンピンクの和紙がずっと並べられていて、唐院自体が美しいのだけれど、それを引き立たせている。風に激しく動く和紙によって。
野外の造形はその日の天候に見る方は大きく影響される。今日はまさしく風に動くものにどうしても注意が働く。顔の表面をパックしたものを木立に並べた「外面」、それに、空き缶の一部を、内部の銀色(清涼飲料水の違いに関わらず一様)を表側にして簾状に並べ風にはためかせているもの。
その他、観月舞台のある処より上に上ったところにある「龍の吐息」。ぬかるんだ土の窪みに置かれた、風水に関係しているような立体造形(研究科のリュイス・サンスの作品)。
観音堂客殿には、住環境デザイン群の卒業制作。廊下に明かりを落としてアンティークドルを並べたりなかなか面白い。びわ湖の周りの設計模型なども多い。ふと白塗りの女性が通りすぎるのが眼に入る、ここが楽屋になっているのか。
さて、観音堂観月舞台に行く。と、カメラの人が金堂から練り歩いて来ると教えてくれる。階段の下あたりで待っていると、通路にさーっと光が当たったりまた去っていったり。風が強いので雲と太陽が鬼ごっこをしているのだ。
そのうち、遠くから囃子の音。14:08、踊ってくる者どもの姿あり。前は黒い衣装の変な楽隊(セクシャルハラスメントという太鼓中心のユニット。ギターは騒音的使い方)。
成安造形大学芸術計画クラス4年の竹内理恵の大学卒業制作として、この園城寺観音堂観月舞台奉納舞踏公演/今貂子(作舞・演出)+倚羅座(結成して初めてのお披露目)『じゃんもんもんもんもん』がとり行われるのだ。
口上からだと14:16〜15:16。無料だが終わってから大きな釜のなかに寸志を入れる。私はパイプ椅子に座ったが、それ以外の場所に腰掛けたり、地べたでカメラを写したり。観る方も無料と言うことで自由に出入りしているようだ。
(私は真ん前で、切り取られた青空を背景画のようにして心ゆくまで集中していた。眼中には、踊り手を通じて間近に感じられる舞台堂と樹木、時折飛んでいる鳶のみしかなかった、全身風の冷気に浸しつつ。)
どんどん近づいてくる。裃つけた今貂子がちらしをまき、倚羅座の面々(4人が女性、一人男性)がお餅(5円玉がくっついていて終了後配られた)などを持って踊っている。
今貂子が白虎社出身であることを思い出す。
パイプ椅子に座っていると、観月舞台の前の空間でまず、口上。上手前にセクシャルハラスメント。下手からずらりと。
衣川博志、浦濱亜由子、今貂子、yum、天野景子、Yang Jah。yumとYang Jahは、髪を少し残してあとは坊主姿。盆栽のようになった頭や弁髪様。女性の分異形な感じが強い。
倚羅座の5人がまずは背伸び。鮮やかな着物に、首の赤い涎掛けから「地蔵様→つまり童」という連想が容易に行われる。謡曲「三井寺」、その鐘の音がこの舞踏の標題なら、かなり変容した音になっている。これから、幼い子どもと生き別れた母が狂ってやってくるんだろう、とぼんやりと思ってはいる。
でも、目前の5人の姿がいまはすべて。鳥の鳴き声。まず、yumとYang Jahが戯れて。舞台へと上っていく。舞台の柱は、紫、白、緑、赤の布が巻かれている。その真ん中が雲の流れる青空の天然ホリゾントだ。下の3人がウマになったり、アクロバットのようなことをしたり。そのうちに舞台に上った5人でうさぎうさぎを歌い、柱に隠れる。アカンベーをしたりして。
14:41。セクシャルハラスメンツの一人が鳴らすじゃかじゃかという紛い物の鐘ではなく、本物の鐘が聞こえる。
と、今貂子、下手の方から登場。破れたうすぎぬ、その肩の部分には、羽が刺さっている。
凄い風が一陣吹き抜ける。
光がこーっと当たる。
今までの青白い顔が明るさを持つ。
歯を見せる。黒い色が置かれて、口の中まで、妖しさが漂う。彼女が歩む足元を見て、初めて意識が地上のディテールへと赴き、そこの石の模様を知ることになるのだ。
下手客席へと倒れ込む貂子。再び立ち上がり、あげそうな顔に。木魚の音に読経がかすかに聴こえる。にくい演出?
14:51、観月舞台へと上る。激しく舞う。
伸び上がって、すとんと横に倒れる。舞台の床が少し振動する。バウンドする死体のようだ。いや超死体。むくむくと起きあがって、一転やさしい手の動きをもたらしつつ、座って頭を回す。
憑依する状況へと誘う音と回転。コリアンの舞踊を連想する。
15:02、音がやみ、5人の童が拍手する。
6人ともが鳥になったのだろうか。舞台上にあった布を各々両手に持って舞台から私たちへと降りてくる。ゆらゆらと風を起こし渦を作って。
「こぐれ日記」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室