Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》NIBURORU-TokyoPool

89.
5/11(木)
ニブロール『東京第一市営プール』トリイホール

気合いの入った公演の現場に居合わすのは、実に楽しいものだ。ニブロールは、ダムタイプやEt in terra paxに日常性を加味した、多ジャンルクロスオーバー集団であるとは思っていたが、基本にはしっかりとしたダンスへの挑戦があることが、よく感じとれる公演だった。

トリイホールはいい具合に満員。『東京第一市営プール』(東京都営とか世田谷区営ではなく、東京なのにどこの市か分からない市営っていう題からまあ、おかしくシュールなもの)。19:37〜20:36。1時間と思えないほどさまざまなことがあった。

ダンサーは、秋吉扶美、今井尋也、加藤文子、たかぎまゆ、ジョー高橋、鶴見未穂子、手塚夏子、林貞之、矢内原美邦の10人。まず、ニブロール代表の矢内原美邦の手紙を紹介しよう。

《ニブロールは制作のいないまま2000年をむかえ、矢内原(彼女は振付)とジャンケンに負けた映像の高橋(啓祐。映像は高橋と山本伸介、神戸千本)、あまり役にたたない音楽の加藤(由紀、音楽は加藤と坂井俊太郎)を中心に様々な仕事をこなしております。・・

《今回の新作のタイトルは「東京第一市営プール」です。これは決して溺れることのない、安全の保証されたプールのことを意味しています。私たちが育ってきた環境、現在の私たちを取り巻く状況を、コンクリートに囲われた海、つまりプールとたとえ、そのぬるま湯に浸かりながらアクセク泳ぎまわっている自分たちの姿を、決して悲劇的にではなく、あくまでそうした状況を受け入れるという姿勢で、ポジティブに表現しようというものです。》

ニブロールって、「鈍いクロール」って意味だったのか、とステージを見ながら思った。冒頭の映像では、裸の男が立入禁止の扉に顔付けて映っている。携帯で誰かと話していて、今回も映像が中心なのかな(前はコンピュータ映像が印象的)と思う。実はトリイホールの控え室(ホールの1階上にある)から、いままさに実況している映像だとは気づかず、隣の大谷燠さんに指摘されて初めて知る。

クロールだったか背泳だったか。救命シーンではドックンドックンと音響が鳴っていた。

踊れ鯛焼き君みたいなアニメが、初め上に一つだったのに、どんどん増えてきて下に落ちてくる。ひっくりがえっているやつも多くて、金魚と同じでこいつらは死にかけなんだ。ぼんやりした古い相撲のテレビ。丸がひっついている。ちょいと懐かしいJ-ポップス。

初めの男女の衣装(矢内原充志)は、どこか福祉医療の世界を連想した。一日人間ドックに入ったようなそんな不安定な空白の時間。

映像のスクリーンの下に水の入った洗面器が並んでいる。ダンスでこぼしたので裸で初め映像として登場した男が、変なスカート履いて拭きに来る。水面がスクリーンに映るのもいい。倒れた人の脚の影もV字に映っている。

ダンスシーンは色々あってどう紹介したらいいのか。たとえば、下手に女二人がまねっこしている。真ん中で男女が拒否するシーンの繰り返し(ちょびっと暴力的)。一人鞄を踏んでいた女がその鞄を持って歩いている。これはあるシーンの断片。でもまた違う組み合わせが始まる。

あるインタラクションを二人でやっていても、時が来たらすっくりと素面になってまた別の組み合わせで踊り出す。その間合いは実にシームレスなスマートさがある。

一人の男性は体が良く動くし、髪の毛をバックにしてパーマでふわふわにしている女性などもスピーディな踊り手のようだ。強く腕を振り続ける、とか前に突き出す、とか強い運動の断片が一貫して現れる。確かにダンスだけだとそんなに長く見続ることができないが、うまく音響やポップス、バイオリンの実際の演奏などを入れて変化をつけている。

登場した当初は、バイオリンを弾けないようなギコギコ音を出す女。でも実は彼女は弾けるのだった。という手のパタンはダンスでも反復する。一方、バイオリンを弾く女に寄り添って座っていた男(初め裸で映っていた男ね)による、ダンスとは区別された、口に薄いきれをつっこむパフォーマンスなどもある。

ゆっくりしたシーンは少なかったが、3人の女のたゆたうような場面は一番印象に残っている。下手の女Aはお尻を隣の座ってる女Bへ向けている。真ん中のその女Bは隣の女Aのお尻に頭を倒そうとする。と上手の女Cがその倒そうとする女Bの頭を戻す。

実に一瞬の動きだけれど、すごく、このA、B、C、3人の関係がその瞬間によって浮き彫りにされたようで、どきりとした。ねちっこそうな関係が滲んできたんだ。


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