Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》PMP in CAP

46. 

1/16(日)
CAP HOUSE(神戸/旧ブラジル移民センター)『Personal Music Party』 

元町駅からまっすぐに北へと鯉川筋通りを上ると15分ぐらいで、毎日ここの管理人岩渕拓郎のメールマガジンを通して馴染みのような気になっている「CAP HOUSE」がある(なんて、今日は初めてなので三ノ宮からタクシーで行ったのです)。帰りはまっすぐ降りていって、元町駅の北西に群立する店の一つ上海料理「新楽園」に寄り(CAP HOUSEの住所録を一手に引き受けていた地球救世軍/大野裕子さんから、どこの中華店でも美味しいと地元情報を得ていた)、満足な日曜日。

CAP HOUSEの外観は白っぽく思ったより普通の建物だった(中に入り、階段空間を見上げたり3階に上るとぐっと濃密な歴史的存在感を感じたけど)。「CAP HOUSE」のC.A.P.とは、「芸術と計画会議」という関西在住のアーティストと美術愛好者によるNPOグループのことで、94年に結成。震災後も積極的に町中のプログラム(CAPARTYなど)を展開している。

そのC.A.P.が、99年夏で誰も使わなくなった「旧ブラジル移民センター」を使ってこの「CAP HOUSE」を1999/11/3から始めた。「アートな190日間」2000/5/10まで、「アートの実験の場、そして芸術への新しい興味を育てる場」として活用。「70年間の風雪に耐え人々の歴史を刻んだ建物内で、いろんなアーティストが何ができるかを探り、作品制作・・・また、誰でも気軽に寄れるアートの広場として、訪れる人達との双方向のコミュニケーションも」。

このブラジル移民センターとは(まるで知らなかったけど)1928年に国策として建設された「移民収容所(800人)」(石川達三「蒼氓」の舞台)。移民する人達が全国から集まって、10日間ぐらい健康診断、予防接種、ブラジルの風俗言語を学習。戦後移民は減少したが1978年まで存続。当時の写真を見ると、回りには移住者向けの販売店があったり、ここで結婚式をした写真なども残されている。

どういう理由で移住を決意したかが分かる手記は余り残されていないのが残念(移住の後の日記類は多いけど)、と2階の「メモリアルルーム」にいた女性が話してくれた。コーヒー100円。

CAP HOUSEの館長の下田展久さんが壁の中から見つけたという「手紙」の便せん(や当時の雑誌、はがき)をちょうどみんなに見せていた。便せんには昭和36年(1961年)の日付がある。3階の部屋に案内されたとき聞いたのだが、寝室は天井を低くし配管をむき出しにして、これから送らなくてはいけない船上生活を予習するように考えられていたという。

2階の211号室サロンに、金山直樹「ミレニアム正月展」(辰)がちょうど展示されていた。金屏風に、鶴と亀が華やかに描かれ、前に祭壇?。鶴亀という縁起のいい日本酒と、賽銭箱が置いてあった。ライトアップするようになっているので自分で明かりをつけてみたりする。

あとは作業中の部屋だけど、杉山知子(事務長)の部屋は、白く塗られて自分の創作環境に近づけるよう細心にやさしく飾られていたし、対照的に藤本由紀夫の部屋の天井は、剥がれたままの状態になっていた。でもそれが美しいというか、藤本由紀夫らしく思えてしまうのは、微妙な手の加え方をこの空間にしている(秒針だけ回る時計が置かれたり、小さな球が入るとき目の前にぶら下がっていたり)からかなあと思う。

倉智久美子さんはいま助手?の二人の男性とドリル音高らかに部屋の改造工事中、樋口よう子さんは5月の展覧会までじっくり盲人の歩行補助サインを置いていく。椿昇ルームはハノーバー万博の日本館に使う巨大で大量のCGを制作中、あと建築家集団の部屋とかアクトコウベの部屋とかいろいろ。

さて、ジーベックホールで3年前から行われていた(最近はジーベックホールが方向転換してしまったために、彦根ACTでしたり、点々としている)『Personal Music Party』。今日は、回りのこともあり「ジミ編」。つまり今回16回目のお題は「小さな音」。テーマに沿って作品を発表する「音の持ち寄りパーティ」がこのPMPで、「オリジナルな音(音楽)であれば内容やジャンルは自由」だそうだ。

今日は、9組プラス最後の飛び入り(セッション)。15時予定だったが、16時過ぎから2時間足らず?

9番目に自分もパフォーマンスしていたKen Kohdaさんが司会進行。まず、今日パフォーマンスする人が手を挙げて、順番を決める。準備の都合とか、3番目ぐらいがいいとかいう人とかが話し合って瞬く間に順番が決まる。

1)あきWe(ゑ)。帽子をかぶった小柄な男の人。机に紙を置いて、一人ずつそこに耳をつけて聴いてください、という。何の音がするかを聞き取る。水琴窟のような反響音がしたり、モーターの回る音(これはかばんのなかの別の人のパフォーマンス道具だったようだ)など。実際は、机に響く自分の回りの音(自分が関心を持ち何のようかを聞き分けることができるもの)を聞いていることになるのだろう。初めから、耳を間接的に互いにつけあっているような、間パーソナルで、ひそやかな音(意図されている音はなし)を聴くことになる。

2)坂出達典。中年の男性。AMラジオを二つぶらさげてチューニングを少しずらす。するとスーとかキーとか、砂浜を歩くような音がしたり、少し音楽的になったり(ランダム干渉)。アンテナの頭には銀紙、これは偶然にガサ、とさせるため。二つのラジオが近づいたり遠ざかるのは、扇風機による。

3)濱川普紀。藤本由紀夫が披露するメロディ計算機やおもちゃを使った「テーブル音楽」に似ている。携帯電話の着信メロディーがマイナー(短調)な繰り返し。ボイスレコーダーに入れた口笛。アイウウウエエエオアアと言う、小さな子供用の学習おもちゃ。あと、良く分からない光るおもちゃ。どう終わらすか、と思っていたら、うまく印象的に途切れていって、事切れる。すべて、どう終わるかにかかってるようにも思える。

4)YUKO nexus6(北村祐子)。15人の合唱隊を募集(即席混声合唱団)。一人ずつにその人だけに言葉(音程までは分からず)を耳元に囁く。私には「がー」。でも語尾が色っぽくしなくてはいけないかと勘違いしてびくびく。さて、彼女の指揮による合唱。眼と手が自分と思うと声を出す。実は「出た出た月がまあるいまあるいまんまるい、おぼんのような月が」がばらばらに分解されて、15人に分配されて歌われていたのだが、下田さんに言われるまで全く分からず。というか、自分はそれでよかったのかどうかすら分からなくなって変に声を上下していた。

5)井上裕二。アポリジニの楽器デジャリドゥ。実に明瞭に二つ以上の音を同時にホーミー的に響かせていて、音楽にしようとしない分、純粋に響くようだ。柱に背をつけ屈んで演奏。

6)グループ「DJ SOUND TEAM なぎさ」。4人の若い男たちが、ケーキのロウソクを囲んで座っている。お化け屋敷で鳴らすようないかにも怖い、というレコード音楽。ロウソクを消していく。ロウソクをつけている間に怖い話をして消していく、そんな遊びだ。最後の100本目。三重県の怖い話を男がする。一緒にいる連中が、それで、とか聴く。そんなパフォーマンス。

7)岩渕拓郎。管理人の彼は「かわいこちゃん」ずき。やってきた若い女性とどうしたらもっと接触できるかを追求して考え出したのがこれ。ヘッドホンをつけてもらって、彼が音を彼女の耳へと送る(ぺちょぺちょ、ぶるぶる、って肉感的に)。その音を聴いて変化する女性の顔をビデオで撮るというもの。エロものになる直前を狙っているようだ。再現するとどうも雑音が多くて、少し残念。

8)山下克彦。彼は始まる前に岩渕さんらと一緒にだべっていたので、「音日記」、「名前の収集」(と言って知らない人の名前をその人から録音するもの)をやったりする変なおじさんだとは知っていた。その彼のおかしなパフォーマンス。まず大きな黒いバッグを下げてきて、おもむろにあける。大事そうにクッキーの缶を取り出す。秘かに「コトッ」って音がしている。そおっと、それを床に置く。少しモーターの音とかが大きくなる。中をいつあけるのかな、と固唾を呑んでいると、そのままそれを持ち上げ大事そうに鞄にしまい、チャックする。終わり。(本当は中のオモチャが元気が良くて缶が動く予定だったのだけど・・)

9)Ken Kohda。「お風呂でブクブクinデジタル」。彼が用意していた大きなボウルに入った水のすれすれに手をかざすと暖かくなる、という驚きを、その前からみんなかってにやっていた。そのボウルは、彼がお風呂場の湯船に頭から使って音を聴く状況を作るためのものだった。実はよく分からずじまい。水に顔をつけている彼がヘッドフォンをつけて聴いているはずの音と、水から音を拾ってパソコンでディジタルに変換している音(それをヘッドフォンで聴いているだけなのだろうなあ)との関係など、あまり考えず。彼がかなり水に入っているので、頭を抑えたくなる気持ちはもちろん周囲にはむくむくと生じてきて・・・もがくあぶくが音を作る。これは「ジミ編」というより「体編=大変」だ(インターフェイスミュージックねえ)と話して遊ぶ。

10)飛び入り。あきWeさんと井上さんがデジャリドゥを吹く。打楽器が欲しい、ということで、山下さん登場。玄関へと山下さん移動。暮れに紅白鍋をしたという四角くて大きな鉄鍋?を使う。まず、ぞうきんに水を含ませて絞って鉄へと落とす音。そしてその物体自体を引きずって、床とこすり鍋を響かせてMAKING SOUNDS。その頭上、2階と3階あたりにそれぞれ長い筒を伸ばして、低く響くディジルドゥが呼応する。暗くなってきたので照明が味のある光を落とす中、垂直の音の靄が上下左右するのが見えるようだった。

こういう古い建物で音を空間とともに聴くのは私にとって「至福」に近い。何かを吸い寄せてまた散らしていくように、風が動く。パーティに集まっていた人は、夕暮れとともに神戸の町へと帰っていき、部屋で作業する人は思い思いの美術の時間を過ごし続ける。


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