12 1999/10/8(金) 

桃園会『うちやまつり』再演 

AI・HALL

10.8.金 

AI・HALLの前の広場に、髪の毛を染めた高校生ぐらいの男の子たちが集まっている。

自転車を訳もなく回って乗ったり、相手をこずいたり。なんだか所在無く(もちろん芝居を観るわけもなく)いらだって群がっているように見える。彼等の週末の夜はどんな始まりをするのだろう。

桃園会第18回公演、AI・HALLリージョナルシアター(東京国際舞台芸術ファスティバルと連動してこのリージョナルシアターが行われる)『うちやまつり』再演。
19:35〜21:29。
ほとんど無彩色な(パンダの仮面も白黒)冬の世界に、赤い林檎菓子だけが、どぎつく「赤い」。

客席で「小山さんちの庭」をかいま見るのも3度目。この芝居の5ヵ月ほど前の出来事を扱った「熱帯夜」では、夏祭りの参加者になぞらえられていたが、また私たち観客は声なき団地の住人、この空き地を監視、盗聴する団地びとになったようだ。

だいぶん様子は分かってきた。そのためか、もう少しテンポをあげてもらいたいぐらいだ。ここの地中に殺さればらばらになり埋められた、まだ行方不明の多くの団地の人たちや、不安や苛立ち、愛情過多の犠牲になって殺された数多くのペットたち。それらの惨劇やら物語、この団地が出来る前の小さな神社だった頃の静かな?歴史が眠っているのだ。

その地上はゴミ袋に廃自転車、いらなくなったソファー。縄が長く蛇のようにとぐろを巻いていて、立つのも歩くのも不安定な状態を強いる。その上には綱が天上から降りてきて、雀防止の大きな目玉がいくつも浮かんでいる。これは野性化したインコ(鸚鵡?)を防止するためらしい。熱帯林からペットとして連れてこられ、正月の寒空にそらじらしく、天然色の派手な声が響く。

もっと群衆劇のように思っていたが、意外と柱になる人物は限られているように今回は思えた。でも今日が初めての観客は面食らうだろうが。つまり、「超高層団地の一角にある空き地を舞台に、主人公である青年が連続殺人の犯人に仕立て上げられていく・・・」物語。その青年(29歳なのだが若く見え、定職もない)が、鈴木さんの息子さん(亀岡寿行)。「仕立て上げる」中心にある佐藤さんの奥さん(江口恵美)、それに冒頭から狂ったように主人公にからむ、妻は実家に帰ったと嘘をつく寂しい佐藤さん(風太郎)。

藤原さん(「熱帯夜」では中心人物だったが今回はすでに殺されている)と不倫をしていた山田さん(25歳、荒木千童)が、不倫の間、録音し続けたテープを捨てに来る。孤立する密室とのっぺりした反復する密集が生む、盗聴癖と露出癖。真実の秘匿と不実な噂話。正反対のベクトルが同時に生じる不安な社会がもろに出ている。

最後に少ししか出てこないが、「熱帯夜」で予習しているために、藤原さんの奥さん(谷野智美)の子どもを、振興宗教の上田さんの奥さん(川口真理)が預かって連れて帰り、藤原さんの奥さんは、すでに死体となった亭主に向かうときの、薄気味悪さは格別。アトピーになって上田さんの奥さんに殺害されて埋められた猿の話が、リアルに描かれているように思えて、奇妙に人間よりも可愛そうな気持ちになった。

まだまだ書くことは無限にあるので、省略。山本さんと山本さんの娘さんが殺したかも知れない山本さんの奥さんの「顔」のこと。前田さんの娘さんと高木さんは、始まる前からキャッチボールして後半は夢の中のように後ろの方で抱き合う姿を見せて(もっとも醒めた現実的な人であると「熱帯夜」で前田さんの娘さんについて感じたが、今回もその感じは変わらない)。田中さんと、田中さんの妹さんと呼ばれる田中さんの妹ではない女性のカップルの、狂言回し的なコミカルな演技。

そうか、佐藤さんの奥さんは佐藤さんに殺されていたかもしれないなあ、とまた分からなくなる。でもセックスのあとか前のお弁当の話は余りにも詳細だったし彼女が犯人だと思ってみていたはずだしなあ。それと、何だか一人だけでどこにも繋がらないみたいな、松田さんの息子さん。パンダ仲間の言い出しっぺなのに、おでんを買いに行ったカップルを待たずに、電話がかかると家に戻る。えっとひょっとしたら、藤原さんの奥さんの不倫相手だったんだっけ。もうやだなあ、記憶テストのようで。

でも大丈夫、記憶が混濁する方が、この芝居は成功しているのだからして。感情移入ができないように、どこかそらぞらしいのもこの芝居の意図的演出だけれど、もう少し、初めに書いたように、何らかの濃密なテンポがあったらいい、と思う見る方の空白があって、それは回を重ねる(今日が初日、七つ寺共同スタジオで10/29〜31に「熱帯夜」があるというのも、役者としては大変だ)うちに解消される性格のものでもあるようにも思いつつ。


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