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116.

7/22(土)
清流劇場『ぼらるじんの一日(イチンチ)』扇町ミュージアムスクエア

(東山青年の家で昼にOne On One『枯れ葉、舞う』を観て、特に豊島由香の堂々とした女性の演じ分けに感心した)次の芝居も、約90分(19:36〜21:02)の長さ。観る方の立場からは季節にかかわらず最適な時間である。

清流劇場『ぼらるじんの一日(イチンチ)』。作・演出/田中孝弥。扇町ミュージアムスクエアもほぼ一杯。照明/岩村原太制作の鈴木俊啓が携帯電話の注意を念入りに。

内容的には、前作の「かたつむりの島にへんな人がたずねてくる記」をより深化させ、身体的であったり歴史的社会的であったりする差別意識をモチーフにして、重層的にそれらを日常世界に織りなしながら、善意と悪意、情愛と偽善、嫉妬を過不足なく描いていく。

場所はアーケードが新しくなった商店街の履物屋と向かいのコインランドリー(そして、黒幕の前の路上)。いくつかのドアをスライドさせる舞台転換装置によって、履物屋のディスプレーとコインランドリーの洗濯乾燥機が交互に現れる。巧みな舞台美術(B.flow)。

残念なのは、地球から浮かび蜘蛛の巣に絡み取られているバッコスの絵のチラシとこの芝居の題名だ。ボランティアをする人を「ぼらるじん」ということにしたと、作者の田中はチラシに書いてあるので、そうかなあと分かるし、ボランティアについてを描くのは阪神淡路大震災以来、関西では特に切実であったことは理解できる。

問題は、このチラシではあまりにもこの実際のお芝居を伝えていないではないだろうか?ということだ。 

さて、このお芝居の重要なワードは「ボランティア」と「差別(コンプレックス)意識」である。まず、差別意識から整理してみよう。

身体と言っても社会の中で意味づけられたものではある。が、とりあえず身体的な差別(コンプレックス)ポイントとして出てきたのは、

1)でぶ、2)どもり、3)包茎、4)車椅子生活、5)徘徊するボケ老人(寝たきり老人も話には出てくる)。

他方、社会的な差別(コンプレックス)としては、

6)外国人、7)在住コリアン(日本籍取得家族も含む)、8)被差別部落、9)学歴(中卒と大卒、学歴詐称問題)、10)職業(衆議院は郵便局より上だろう?介護福祉士vs.旋盤工)、11)その他(知識のあるなし、県会議員の妻で夫人会長と平の会員たち、前から住んでいる者と新参者)などである。

この劇団の魅力は、車椅子役者であるはしぐちしん(伊東という姓だが、在日コリアン家族でもあるという役柄)。そして「でぶ」であることの悲哀とおかしさが体当たりする石本伎市郎と森下浩充がいることだろう。

石本と森下は兄弟で、兄(石本)は床屋で中卒、弟(森下)は郵便局員で大卒(農学部)という設定。弟の兄貴思いは、少しボランティア的な部分もある。

ということで、この芝居の「ボランティア」性をピックアップしよう。

1)まずは、仕事でもあるが介護福祉士守(松蔵宏明)。彼は仕事柄、ボランティアに働くことがセットになっていて、商店街のホームページを作ったところなのに、婦人会のホームページも婦人会会長寺本(山下りき)から頼まれている。

2)守の妹喜美江(武資子)は、大学生で兄のお手伝いをしているから、純粋にボランティア行為である。彼女は、どもるせーちゃん/清嗣(植村好宏)と付き合っているが、ある事件の犯人ではないかという疑いがかかってから心が動揺している。

せーちゃんはまた被差別部落出身(「高速道路の下に住む」という在所を示す言い方でほのめかされる)であり、実は喜美江の兄守が、二人の仲を割こうと卑怯な真似(郵便による誹謗)をしたことが明らかになる。

3)車椅子の伊東正幸(はしぐちしん)は、自分のぼけ親父を介護している。その大変さは特に介護福祉士の守にはよく分かる。

また、正幸は親類の韓国から来た3人の若者を泊めてやる。ここにもボランティアな気持ちが重層しているが、肉親の情愛との混合もまた特色と言える(ボランティア精神のもとのクリスチャン的なミッションとはまた別のアジア的な大家族的な相互扶助精神である)。

4)その3人のコリアン(船戸香里、高木健太、菅本城支)は、街角で募金をする。自分たちの渡航費のためだが、そこには募金ボランティアについての戯画がある。

また、前作からその気持ち悪いおかしさがインパクトを持つチャンポン創作言葉が話される。韓国語尾(〜ニダ)を持ち、日本の方言も交じる実にいい加減な言葉だ。

MONOの中部ミソ交じりの創作方言と共に、清流劇場言葉が出来つつあるようだ。

5)婦人会会長寺本(山下りき)の野良猫集め。これは、PTA会長になっていることも含めて似非ボランティア性が顕著である。つまり夫の県会議員という仕事とのセットであり、彼女の虚栄心がぷんぷんする。この野良猫を押しつけられていやといえない婦人会会員(堀内、堀米)。この堀米(小畑香奈恵)がまた新参者の堀内(西宮久美子)を苛める。堀内の寺本への仕返しは・・・

物語的には乾燥機に回る寺本の子どもの半ミイラが退屈な商店街に強烈な事件を提供するはずなのだが、筋の展開よりもこの芝居では、キャラクターの描き分けによる絡みの方に興味が湧いて観ていた。

前作よりもどたばたした騒ぎに中身が伴ってきて、劇団「大人計画」みたいな、強烈な差別意識への告発的な笑いには勝てない部分もあるけど、逆に清流劇場ならではのもっちゃりした面白味がある。


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