Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》tannno-mirror
少し早く、神戸アートビレッジセンターへ行く。
準備が続いている。丹野賢一のパフォーマンス写真がエントランスの壁に掲げられて、その照明を取り付けていたり、パフォーマンス衣装の展示があったり。彼のトークサーフィン(司会が小暮)のときに、ロビーで麦酒を飲むため、受付に麦酒をつぐ道具が設置されている。
神戸ニュー・ウェーブ・シアター2ND WAVE
『008---MIRROR』 presented by 丹野賢一/ NUMBERING MACHINE。
構成/装置/身体:丹野賢一。舞台美術/MNtu、音/松本じろ、衣装/尾竹宣彦、照明/渡部真紀、舞台監督/三津久、アートディレクション/芝崎隆哉。
19:12〜20:29。
去年から今年にかけて、けっこう彼や制作の松本美波さんとは会っているのだが、一昨年に3度彼のパフォーマンスを観てからはずっと御無沙汰している。
彼のパフォーマンスは、アーツともダンスとも呼ばれていないので、紹介するのが大変だ。とりあえず、「もの」で特定するのが一番。今回は「舞台上に屹立する約4mの高さの鏡の壁と直径5mの鉄製旋回マシンを使用」する。
より明確な紹介のために舞踊評論家/立木さんの「赤い泥の中で」の文章を借りると:「美術のインスタレーションのように注意深くセットした選ばれた環境の中での、身体と動きのシンプルな提示」。
受付で渡されていた鏡の破片の整理番号を渡して、ホール内に入る。赤い光が場内を覆う。客席が赤く、自分がメモるノートも勿論赤い。舞台の鏡が客席の人たちを写す。人の座っていない椅子だけの像が気になる。自分がいくつも写っている。赤い光に自分も含めていつもの姿よりかっこいい。
舞台下手の鏡の部屋に、黒の毛皮に包まれた物体が蠢き。顔が少し見えて。眼の強調された臆病な「けだもの」。上の鉄網の蓋を開けて、のぼる。まるで怪獣映画のようだ。
ぬいぐるみ、左腕はやけに長く。飛んで落ちる。旋回マシンに乗る。巨大な歯医者の椅子のように思える。恐怖の絶叫遊園地マシンか。虚ろな顔、やるせないけだるさ。シャープさはどこにいったんだ、動きに生彩がまるでない。死んだ世界を見ているように思う。
左手を右手でもって、自らの腹部に何度もぶつける。左手が物のように見えてくる。シンプルな繰り返しが印象的だ。「001 BLOCK」のときよりも切り削いでいるように見える。
どこか虚しさが、凶暴さや鋭角さよりも増しているように感じられる。それとも何かがまだ足りないのか。
19:43。ギターがメロディーを奏でる。懐かしいもの。動きが同じでもまるで違う情感が生じる。でもこの音楽がやってくることも、そういえば無意識に予感していたようにも思えてくる。マシンの縁を切なくじめじめとさまようようにも思える。いや求愛のようでもある。
回す大きな旋回マシンに丹野の頭がぶつかる。ぶつからないときもある。ぶつかる頭を観て、この前観た映画「π」が飛び出してきた。目玉と脳。と、赤と白の吹雪のカクテル光線。また、頭ぶつかる、がくっ。
今度は、上手のガラスの中に入る。縦の蛍光灯が赤く増幅する。軽快な音楽。下半身も使う動き。このあたりは、身体の動きが表に出る。リズムに合わせて真ん中に戻ってくる。と、手には鉄の棒。鏡とのナルシスティックな関係。合わせ鏡、棒に跨る。息の白さが鏡を曇らす。自動車の音のような音響。
そっけなく、鉄棒が鏡に当たる。ばん!破片は飛び散らず、細かい模様。反射するつるりとした面から写らない葉脈の様な模様の鏡へ。割り続ける。でもまだ、残っている鏡に丹野の姿が写って、写っている丹野が本物で鏡の中に入ってしまったようなそんな錯覚。
真ん中の鏡群に打ちつける。ばん!と、今度はひび割れずに鏡が崩れ落ちる。そして背後からの光の放射。客席を照らす。割るたびに光が白く増殖する。ガラスの欠片の上で足踏み。細かくくだける音がする。彼の身体による音を初めて聞く。
一度姿が消える(20:17)。白黒の恐怖映画を思い出す。正面の上の方の鏡が割れる。客席へと破片が飛び散る。前の方へ。空を叩く丹野。木枯らしのような音。マシンをまわす、ひたすら。
闇と共に、丹野は消える。あとは、回る物体のみ、白い光。また、やみ。少し拍手。それもきっと不要なものだろう。
21時少し前から、ホール内ではなく、ロビーでトーク。
メイクを落とし普段着(もちろんかなり派手)の丹野。椅子が足りずに床に座っている人たちも。
二人の前にテーブルがあったのを、彼は除けて欲しいというので、はずす。
質問しやすくなったが、私は麦酒をこぼしてしまう。
レスリングの話を聞く予定が急遽、レスリングは丹野にとって奥が深すぎる、という理由で直前に変わる。このパフォーマンスの技術的な話題から始める。会場からの質問や感想がよくでて、まずまず。
目の前に座っていた女の子がやっと口を開く(初めから何かを言いたくてでもなかなか言葉にならない、と彼女の顔が言っていた)。
お父さんが壊している、でも止められない(どうしよう〜)、とそういうふうに観た、と言う。
これが一番わたし的にはぐっときた。
20日の日は、19日の公演よりも格段によくなった(と私は観た)。
昨夜は、どう明日に向かおうか、ということで、彼は頭がいっぱいだったのかも知れない。
時間は、15分以上昨日よりも長い。それなのに、一つ一つの動きに確信が増強しているのか、虚しい感じが減って、禁欲的な繰り返しに軽やかな強度が生じる。
この公演で自分としては一番好きな、左手を右手で持って下腹部に打ち付けるシーンは今日は昨夜より激しさを落として行われた。けれどそれもまた、毛皮の左手の伸びたもの(手のしっぽ)を、寝たまま床に軽く叩くその前のシーンとの連関がクリアになって、新鮮。
照明の位置を変え、毛皮を脱ぐ場所をマシーンの中ではなく前方に変えたのが、一番昨夜と変わったところ。毛皮が客席の方に落とされてすっきりと舞台がなった。
客席へとのめり出す感じが今日は多くあって、終わった後の耳鳴りも、昨夜より長く続いた。旋回マシーンで頭は今回は打たれず、背中あたりを数度打たれていた。
2度目のトークサーフィンは、丹野賢一が予定より早く顔を出し、質問をした人に逆に丹野が質問するような、やんちゃな面も出て、昨日よりもこちら(一応マイクを客席に渡したりもするナヴィゲータ)としてはやりやすかった。でも、思わぬ感想をいう人は少なくて、昨夜の前列に座ってくれた若者のような人たちとももっと交流が出来たらよかったのだけど。
最後に、レスリングにアニメや特撮などの話もしたかったんですが、と私が言うと、仮面ライダーが好きでした、と丹野。(やっとほぐれてきたなあ)こんな話もいつか別に彼から聞ければ、と(ナヴィゲータはサブカルチャーに詳しい人がいいかも知れないけど)思った。
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