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「かなちゃん通信」vol.17
『平安のハナナガ〜はやしカナ展13』
7月1日 はれ めっちゃあつかった
今日も朝は暇。でも、ちょっとだけのぞいてみようかな、というお客さんが平日よりは多いようだ。
舞ちゃんがきた。カナはたまってしまった日記をぜいぜい言って書いているので、今日は舞ちゃんがアトリエにすわる。カナは椅子にすわって机にむかう。はたなかさんがでてきてこれをみて驚く。
「あっ、いれかわってる」
舞ちゃんはこのアトリエが居心地がいいという。昨日、浜田さんがくれたねんどで作った立体作品に色をぬったり、自分のキティちゃんの手帳をハナナガ手帳に描きかえたりと、ばりばり制作している。カナがいつまでたっても終わらないので、カナが塗るはずだった、浜田さんが形を作ってくれた立体ハナナガにも色を塗ってもらう。舞ちゃんに浜田さんのことを説明する。あのおにいちゃんは画家で、彫刻もするからこういうのがとくいなんやと言うと、また舞ちゃんは、え、そうなん?と驚く。そういえばここんとこ舞ちゃんは、随分たくさんのアーティストと知り合いになっている。ギャラリー経営の準備はもう始まっているんだな。
とかなんとかして過ごしていると、おや、あの外にいるオレンジのベストのひとは、浜田さんではないか。噂をすれば影、そのまんまだ。彼はこう言った。
「昨日の韓国の鍵ハモまた見せてほしいと思って。それと、やっぱりはがきもう少し欲しいな、と思って。で、また交換してもらおうと思って色々かき集めてきたんだけど」
浜田さんとは、じつは昨日も物々交換した。昨日は、浜田さんのおばさんにもらってきたばかりの服(古着)。今日は、貝殻や鳩の羽根、外国でもらってきた色とりどりの紙吹雪などなど。交渉の末、交換。
浜田さんは、たましい芸術大学(略してタマゲイ)というのを2年前に天使とふたりで始めてて、学生はいま7人くらいいるらしい。ちなみに、浜田さんは天使と話ができるひとで、ヒョワキタソオ(ヒョワ)という天使に、色々きいてくれる(自分の意志で決めるべきことは答えてもらえないが)。ハナナガとぞうの未来を聞いたら、ハナナガはむちゃむちゃ明るくて、ぞうはくらいことばかりらしい。でも、ぞうも描きたかったら別に描いてもいい、それは自分の意志、とのこと。
天使のはなしをしていたら、舞ちゃんがすごいワザを披露してくれた。3つくらい何かをならべ(なんでもいいが、3つとも、例えばおなじコップだったりすると、似ててやりづらいらしい)、舞ちゃんがうしろを向いているときに誰かがどれかを触る。で、どれを触ったかあてるのだ。舞ちゃんは3つをそれぞれ触ってたしかめて、3分くらいして、
「これ!」
といいあてた。すごい。でも家だともうちょっとはやいんだそうだ。慣れない場所では時間がかかる。舞ちゃんのお母さんは、すぐあてらるんだって。舞ちゃん前はできなかったけど、お母さんに教わった。家族のいうことをちゃんと聞いてやさしい気持ちをもてていたら、神様が教えてくれるそうだ。でも舞ちゃんいわく、神様信じてなかったらできないと思うし、今のも、なんべんもやると、教えてもらえなくなるそうだ。あてられるときはなんかピーンとくるんだって。
そうこうしてるうちに、こんどは楽器をさわることになった。どんちき演奏していると、やまなかよしゆきさんがやってきた。このひとは、前回の展覧会にきてくれて、舞ちゃんとかとず〜っと絵を描いていた。だから今回もそうなるのかな、と思ったらやはりそうなった。もう4人で楽器ひろげて色鉛筆とか紙とか絵の具ちらかして、腕相撲して遊んだり「きのこ狩りをするハナナガ」に助言をもらってあーだこーだとはなしたり。
するとそこへ、高見さんご夫婦がやってきた。高見さん背広だし、奥さんの知子さんもきれいな格好してる。4人ともはっとし、あ、お客さんや、って感じになって片付け始めた。やまなかさんも浜田さんも舞ちゃんもまるでここのギャラリーのひとのようだ。
あ、どうぞどうぞって感じでコップとかさげてくれるし。思い出すと笑える。高見さんたちそんなに堅苦しいわけじゃないんだけど、みんな我を忘れてたんだなあ。片付いたら浜田さんは帰っていった。
つづく
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『平安のハナナガ〜はやしカナ展14』
7月1日 つづき
すわって、麦茶をのんでもらう。しばしおしゃべり。「加奈ちゃん幼稚園のころから全然変わらないのよね。背丈とかはもちろんのびてるんだけど、目が純粋でキラキラしてるところはそのままなのよ」
と、知子さん。うう、て、てれくさい。これ書いててもすごい恥ずかしい。知子さんが言ってるときは、キリっとさっぱり、すらっと言っていたので、ここまではてれくさくなかったのだが。でも、うれしい言葉だあ。
おふたりはふだんとても仕事が忙しく、高見さんは会社員で、知子さんは法律事務所で働いている。知子さんは、ふだんコンピューターの画面とかばかりみていたりするし、仕事でつらいこともあったりするので、ここでゆっくり絵をみたり、話せたりするのがとってもいい、というふうに言ってくれた。ちなみに、高見さんはここのすぐそばの市岡高校の出身だし、知子さんはとなりの大正区の出身なんだそうだ。いま神戸に住んでいるが、会社にいくことを考えても、この辺に引っ越したいと思っているんだって。それは楽しみだ。それにこのあたりは下町で、みなさんとてもひとなつっこくて、知らないひとにもがんがんはなしかけたりするし、しつこいくらいに親切(それがすごくいい)なのだが、知子さんはそのほうが性にあっているんだそうだ。
話のながれで、また舞ちゃんと舞ちゃんの作品を紹介することになった。作品の中に、以前由利さんが教えてくれた絵遊びがあった。紙をじゃばらに折るのだが、少しずつずらして折る(ひろげると階段みたいになるように)。折れた状態の紙に生き物の絵を描く。このとき、目が段差にまたがったほうが面白い。できたらひろげて、切れてる線の間を描きたす。で、できあがり。もういちど折り畳んで上から順にあけると思わずぷっと笑ってしまう。おでこがのびて、目がのびて、胴がのびてというふうに、変わり絵みたいのができるのだ。
知子さんがあんまり喜ぶので、つくってみましょう、と誘う。折った状態で知子さんがねこを描き、カナが描き足した。合作、できた。知子さん大ウケ。高見さんもウケている。なんべんやっても知子さんはつぼにはまるようで、嬉しそうだ。これがあれば、きっとつらいことがあっても笑えるだろうと思い、持ってかえってもらった。
高見さんご夫婦が帰って、しばしやまなかさんとおしゃべり。彼は絵を描くひとだが、以前大学にいたころは映画の美術とかをやっていたそうだ。映画を作るっていうのは、時間も人手もお金もかかるからなかなかできず、しばらく作ってないって。
そこへ、みんぱくの仕事で一緒だった山口明香ちゃんと、以前マルガサリにいた(明香ちゃんもいた)加藤裕子さんがやってきた。しばらくゆっくりみてもらう。カナは、「ハナナガのきのこ狩り」を描いている。あとで彼女等にも助言をもらおう。
池田幸恵ちゃんから電話がきた。彼女もみんぱくで一緒だった。なんと、今弁天町駅でこれからくるって。またまたすごい偶然だ。
やまなかさんと舞ちゃんが帰ってから、明香ちゃん裕子ちゃんが机の上のハナナガこものいれを発見する。なかには、例の、家族全員生きて向こう岸に渡らせよクイズを考えるための、父とか犬とか書いてある紙がはいってる。
つづく
「かなちゃん通信」vol.19
『平安のハナナガ〜はやしカナ展15』
7月1日 つづき
家族8にんのはややこしいので、まず初級編を説明した。人食い人種3人、そうじゃないひと3にん。ボートは一槽2人のり。人食い人種のほうが数が多くなると、食べられる。全員生きて向こうの島に渡るには?という問題。2人がうんうんいって考えてる間、カナは「ハナナガのきのこ狩り」を描く。考えてる最中にも助言してもらう。答えがでたころ、幸恵ちゃんがたどりついた。そこで、もうひとつのクイズを説明する。ひとりひとりで没頭して解いたら達成感はあるんだろうが、せっかくみんないるんだしあーだこーだいいながらやってほしかったので、3にんで考えることをすすめて、解いてもらった。なかなか楽しいのだ。
それから、みんなでごはんを食べにいったのだった。
「かなちゃん通信」vol.20
『平安のハナナガ〜はやしカナ展16』
7月2日 晴れて暑い
朝いちから舞ちゃんがやってきて、少ししてお昼ごはんを食べにかえりまた戻ってきた。
「舞ちゃんねんど買ってこようかな」
どうも、浜田さんにもらったねんどで作って以来、彼女は立体作品にも目覚めてしまったようだ。ねんどだけではなく、色々なものを手掛けている。例えば、昨日のキティちゃんのノートは、ハナナガノートに変わってしまったし、それから犬や猫の写真のバッチとかアルミのペンケースとか、みんなハナナガグッズに変身する。彼女はこれらを「コレクション」と呼んでいる。
舞ちゃんは自腹をきって紙ねんどを買ってきた。するとそこへ、高野さんがやってきた。高野さんが書いた本をカナが借りていて、今日返す約束をしていたのでとりにきてくれたのだ。
「高野さん、正直言って(時間が足りなくて)拾い読みをしました。でもとても面白かったです」
この本は、高野さんそのまんま、という感じの本だった。読んでいるのに、高野さん本人の話を聞いているみたいだ。彼は本当に真面目で正直なひとで、言っていることはすごく納得がいく。正しいと思うし、理想だとも思う。しかも彼は、考えだけでなく実行してきたひとなので、リアリティが感じられる。それに、とにかく素直だ。
カナが本の感想などをはなしている間にも舞ちゃんの創作はがんがん始まっていた(このときは、3人とも椅子にすわり、四角いテーブルを囲んでいた)。と、そこへ、6月25日にきてくれた寺井さんがやってきた。ありゃあ、このひとはこの前も高野さんと舞ちゃんがいるところへやってきてて、今日も同じメンバーだ(舞ちゃんは毎日いるが)。こういうことって、何だかよくあるなあ。
舞ちゃんがみんなにねんどをすすめる。
「なんか作って」
高野さんは遠慮。寺井さんはのりのり、カナも挑戦。寺井さんは舞ちゃんといい感じで相談しながら、制作する。ハナナガは本来、あのまるっこいかたちでからだ全体を表しているのだが、彼がとりくんだのは、ハナナガの全身が顔になっている人間、つまり、ハナナガに人間の首から下がくっついているものだ。しかし、つくっているうちになんだか人というよりペンギンになってきた。じゃあペンギンにしちゃえ!とつくり続けていたが、ペンギンにしてはやせているのでお腹をでっぱらせてみた。すると、ん?なんかこれではタヌキじゃんか、いいやタヌキでも、よし、サングラスをかけさせよう、ありゃりゃこれはどうみてもモグラだ。そしてさらに舞ちゃんの発案でタバコをくわえさせることになり、りっぱなモグラ番長ができた。最初のハナナガはどこへ・・・でも面白いな、話をだらだらとしながらみんなでねんどを触って、ひとつのねんどの塊がどんどん色々なものにかわってく。
そうやっているあいだ高野さんはずっとその様子をにこにこと眺めていたが、舞ちゃんにこう言われてしまう。
「お願いします。何か作ってください」
舞ちゃんって大人だ。こんなきちんとお願いされては高野さんもことわれず、ねんどをとる。つくったものはお魚。とてもリアリティがある。本物を船でしょっちゅうみてるんだろうなあ。それにしても、この魚の顔が高野さんにそっくりなのだ。ほんとうに、高野さんはなにをやっても高野さんだなあ。
つづく
「かなちゃん通信」vol.21
『平安のハナナガ〜はやしカナ展17』
つづき
しばらくして、正章鶴さんから電話があり、もうすぐこちらにつくという。正章鶴さんはもともと野村くんの昔からの友達で、いま奈良で農業をしているひとだ。野村くんは今日はあとに予定があるので、そろそろ帰ろうとしていたが、せっかく正章鶴さんがくるので、もうちょっといることにした。
寺井さんが帰ってすこしすると、みんぱくミュージアム劇場のとき劇場内の警備員をしていた矢野さんがきてくれた。このひとは、いつもあかるく元気よく挨拶をしてくださる方で、みんぱくの仕事のときカナは、毎朝矢野さんの「おはようございます!」の声で気持ちをひきしめていたものだ。
矢野さんはゆ〜っくりみてくれた。色々おはなししようかな、と思って、例のuniこのお葬式をした2枚の絵の変わっていった様子を説明しはじめたところ、野村くんから助言が入り、また描きすすめる必要がでてきたのだった。この2枚はつながった絵なのに、全然つながってみえない。後から描いた右の絵が平和すぎるのではないか、というところから始まりみんなで絵をみているうちに、衝撃的な事実が判明した。uniこは、ハナナガがひっくりかえったものだったのだ。uniこはまるくて、ほそいしっぽと目だけがあるいきものだ。このしっぽの部分が釣針のように曲がったハナナガのハナにあたる。まずそれを描いてみた。う〜ん、くわい(お正月とかに食べる球根の野菜)のようなハナナガがご〜ろごろしてて面白い。
そのあともこの絵は順調に強烈な変わりかたをしていく。うしろの山は火山になり、ハナナガの結晶も一緒に降ってきている。火山はハナナガの顔をしていて、あいた口からパチンコの玉のようにりんごのようなくわいのようなハナナガがじゃらじゃらでてきている。そして、この絵の右端に天使のようないでたちのカナの自画像がいたのだが、このように絵が変わってきては存在意義を認めることができず、テトラポットのようなへんな手足のぞうになりかわられてしまった。
絵の進行中、もうほぼ大変化をなしとげたころ、正章鶴さんがやってきた。正直いうと、こういう時いつもつい思ってしまうことがある。ああ、もうちょっと早くきてくれたら、すごく変わるところ一緒にみられたのに(みてもらえたのに)、と。でもやはり現実はこうなのだし、さっきの、過去のことをみのがしたりみせそびれたからといって、なんの心配もいらないのだ。現在、未来にまた面白いことや素敵なことで過ごしたらいいし、どんな状況にもきっとそれなりの意味があると思うから。
後藤さんがまた、ちょっと様子をみにきてくれた。後藤さんは、この展覧会の色々な面をみてくれている。家がちかくて、1日になんべんもこのギャラリーの前をとおるので、平均して2日に3回くらいのぞいてくれる。ほかのお客さんにギャラリーのひとと間違えられるくらいだ。
「かなちゃん通信」vol.22
『平安のハナナガ〜はやしカナ展18』
7月3日 はれ、あつい
今日は月曜だし暇だろうと思い、ずっと撮りそびれていた会場の写真を撮りまくる。う〜ん、楽しい展覧会だなあ、こ〜んなにいっぱい絵があるし。数えてみたら48てんもあった。1つ1つの絵をみていろんなことを考えたりする。色々な方向にふくらんでいく気がして自分自身わくわくする。
撮影だの日記つけだのをして午前、午後いちとすごしていると、あ〜下牧さんのおかあさんだ。及子(ちかこ)さんという。彼女は文字や文章をすみで書くひとで、家庭の主婦でありながらとってもアーティストである。とてもはっきりしていて、話をしていて気持ちのいいひとだ。しかもとても華やか。服装とかの問題ではなく、印象が華やかなのだ。カナは下牧家に何日も泊めてもらったこともあり、たいへんお世話になっている。みんぱくで働いていたときも泊めてもらった。及子さんは、
「あんた絵描いてたほうが(みんぱくでスタッフしてたときより)楽しそうやなあ」
という。そりゃーそうだ。他のアーティストのお世話やら企画発案者と現場のひととの間にたっての連絡係やらその他臨機応変にする仕事。とてもためになったし色々舞台もみられたし色々なひとと知り合えたし、面白かった。でも、これが自分の天職とは思わないなあ、全然。絵描いてるとか演奏してるとか躍ってるとか、なんかコーディネートするとかひとと一緒に何かするとか(すべて、ひろい意味で)、そのほうが楽しいしむいてるだろうし、やりたいことでもあるわけで、今日のほうが楽しそうなのは当然だろうなあと思う。及子さんが楽しそうや、って言ってくれてとても嬉しかった。
及子さんが帰ってだいぶたってから、松本佳菜子さんというお姉さんがやってきた。はたなかさんからこの展覧会のことを聞いたそうで、ここに寝泊まりさせてもらっていることも知っていた。
前の展覧会の写真などもみせつつ、いろいろおしゃべりしていると後藤さんがやってきてみかんをくれた。
「ねえねえこれみえる?私どうしてもみえなくって、昨日からずっとやってるけどダメなのよ。私またあとで来るから、2人ともやってみておいてくれない?」
と言って置いていったのは、新聞の切り抜き。花畑の写真があって、自分の目のピントを、その写真がちゃんとみえるところから少し前か後ろにずらしてみると、また別のものがみえてくる、というものだ。松本さんもカナも挑戦する。2人とも5分くらいでみることができた。花畑の中には巻き貝がかくれていた。
そうしてるうちに、目がぱちっとして、細くて、でも胸は大きい(失礼しました。でも実際カナはそう思ったのだ)薄紫のノンスリーブの女性がはいってきた。おとなしそうだな、声をかけないとすぐでていっちゃうかもと思い、しばらくしてから麦茶をすすめた。
「よかったら座ってゆっくりしていってください」
と言ったら座ってくれた。松本さんがみてくれていた、前の展覧会の写真がそこにでていたのでもしよかったら・・とすすめたり、uniこがどんなふうに誕生したか、今回この絵がどんなふうにかわってきたか、などの話をした。すると、おとなしかった(いや、カナが勝手にそう思い込んでいただけだった)そのひとがぐいぐいと口をひらきはじめた。
「uniちゃんが生まれてどんどん変わっていったんだったらこの絵の右がわにその変わっていったことをかいたほうがいいんじゃないですか?! それに、なぜ火山は爆発してしまったんでしょうね。そういう物語りを脇にかくとか。それにもっとグラデーションになってたほうがいいと思います」
このひとは、自分の意見をすごくはっきり言うひとだった。カナはなんてみる目がないんだろう。予想おおはずれ。彼女の突然のストレートないいっぷりに、カナはたじたじである。冷静であれば別にふつうに受け答えするのだが、きっぷのよさにおされて、カナはあまりうまくものが言えなかった。例えばこんなことも言う。
「(別の絵をみて)この絵とかあ、構図がすこしずれてるじゃないですかあ、絵って三角形の構図がいちばんよくみえるんでしょ。ごめんなさいね、生意気なこと言っちゃって」
というのだ。このひとがいってるのを生意気とは全然思わないが、この意見はちょっと変な気がする。三角形の構図の安定感が最高といわれた時代もあっただろうし、いまだって自分の意志でその構図をとるひともいるだろう。自分の目的に応じて、必要で方法を選んだりみつけたりするものだと思うのだ・・でもカナはこのときはなんかドギマギして、こんなふうにはいえなかったんだなあ・・まあそれはいいんだけど。このとき、いったいこのひとは何者なんだろうと思い、お仕事などたずねてみた。このひとは看護婦さんだったのだ。今日は夜勤明け。う〜んなんとなく納得、話し方がストレートなところとか、なんか感じが。
「かなちゃん通信」vol.23
『平安のハナナガ〜はやしカナ展19』
7月4日 はれのちくもり。搬出なのに夕方激しい雨。
午後になってその松本さんが来てくれた。今日はおみやげにふうせんかずらの種
をくれた。
「これ、いまからでも撒いたらまにあうと思うから」
嬉しい。しかしふうせんかずらの種をまじまじみたことはなかったが、これってハート模様になってるんだ。黒くて、一部分だけ白くなっているのだが、そこがちょうどひとの顔みたいですごいかわいい。彼女が今年作った年賀状を1枚くれた。それは、ふうせんかずらの種をずらっとならべて「2000」という字を作ったものを、写真にとったものだった。そのうちひとつに顔が描いてある〜。かっわい〜。
それから今朝伯母からもらったさくらんぼをだして一緒に食べた(今朝カナは、搬出のために京都の親戚の家から車できた。伯母が色々もたせてくれたのだ)。松本さんとはなしあって、お買い上げくださった絵に月を描き足すことにした。月を描いて、うらにはタイトル、サインに、「かなこさんちへいってらっしゃい」の文字をいれた。
そうこうしてるとお客さん、あ、竹内くんだ。彼は前々回の展示にきてくれて知り合ったひとだ。彼は絵本を描くひとで前にみせてもらったのだが、それがすごくいいのだ。22才くらいで、今出版関係の仕事をしているが今日は、「あ〜も〜、俺はでかけてくるぞー」と言って会社をぬけだしてきたという(大丈夫なのか?大丈夫なのか!)。会社が忙しくてなかなかこられなかったって。
竹内くんは自転車で会社に戻っていった。すこしして舞ちゃんが友達をつれてやってきた。舞ちゃんが家庭科の時間にフエルトで作ったという「悪いハナナガ」をみせてくれた。もお、これが最高!すごいいい。カナが感激して写真をとりまくっているとそれをみた舞ちゃんが、
「それ、あげよっか」
という。
「ええっ!いいの!えっ、でもいいの?」
というと、いいのだという。舞ちゃん大人だあ。やさしいなあ。この物欲のなさ、思いやり深さ、カナのほうがこどものようだ(はやしカナは物欲がすごい。物持ちたがり。うわっあれ欲しい、これも欲しい、というほう。高校、大学の頃がピークで、今はすこしマシ)。そばにいた舞ちゃんの友達が、カナが「舞ちゃんやさしい」と言っている様子をみて、
「舞はほんまにやさしいで。学校でもいつもそうや」
といった。カナはちょっと情けないような気持ちになりながらも、やはりうれしいので素直にもらうことにした。舞ちゃんには、今度くるときまでになにかいいお礼を考えたい。
つづく
「かなちゃん通信」vol.24
『平安のハナナガ〜はやしカナ展最終章』
つづき
それからあやかちゃんがお母さんといっしょにやってきた。昨日はありがとう。あやかちゃんはビニールのペンケースをもってきていた。どうやらこれに絵の具で絵を描きたいらしい。また舞ちゃんが制作しているのをみて、「かいてもいい?」ときいてくる。
カナは「いいよ」と言った。でも正直言って、舞ちゃんのときとは違って、カナはあまりときめかなかった。舞ちゃんがここで作業をするのには必然がある。動機が純粋というか、すごく自然にそうなっていったし、カナ自身が、その成り行きが面白くて、楽しみでわくわくしたのだ。あやかちゃんとカナのあいだには、舞ちゃんとカナのあいだのような信頼関係はまだ、ない。もちろん今後のことはわからないけど。ちなみに、あやかちゃんのおとうさんは昨日まで韓国でトライアスロンをしてて、今日帰ってくるそうだ。カナはそのおとうさんに前回会っているが、まさかそんなたいへんそうなスポーツをするひとにはみえなかった。面白そう。おかあさんも、話していていい感じのするひとだ。これからまた、このあやかちゃんのご一家ともゆっくり話してみたい。
山崎さんが妹さんと一緒にやっている事務所がここのギャラリーのすぐならびにあり、前買ってくれた作品もそこに飾ってあるというので、ちょっとみせてもらいにいくことにした。歩いて30秒。こんなに近いなら、出前アフターサービス追加作画も展覧会期中にしに来られるなあ。わくわく。
ギャラリーに戻ると、もうあと20〜30分で5時(搬出のため、最終日は5時終了)。今日来ると言っていたミミちゃんがまだ来ない。心配だ、ひょっとして7時までだと思ってはいないだろうか、と思っていたら、10分前にミミちゃん到着。よかった。彼女はガムラングループのマルガサリのメンバーで、みんぱくの仕事でも一緒だったひとだ。おやつをいっぱいおみやげにくれた。わあい。
2000年6月22日〜7月4日 於・ギャラリーはたなか 平安のハナナガ〜はやしカナ展
はやしカナ本人による日記・・・おわり
はやし カナ
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