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伊藤多喜子の「別冊 邦楽ノート」 Arts Report 2006/10/22 出演/東京藝術大学邦楽科卒業生、広島風声会 ほか 曲目/一部 古典長唄の魅力 二部 ジャンルを超えて広がる輪 三部 古典長唄 〜伝わる音、伝える音〜 広島から東京芸大にすすみ、プロとして活躍しはじめた若い演奏家たち(の親御さん)が中心となって企画した長唄の演奏会。そもそも、その親御さん世代が
邦楽に携わってきた(広島風声会という篠笛のグループ)といういきさつで、“二代目披露”の意味合いが強い。出演者の平均年齢は26歳(しかもほとんど
女性)というから、一般的な邦楽の演奏会ではありえない若さ。というより、若い弟子だけでこれだけ大きなコンサートを行うこと自体が難しく、広島とい
しがらみの少ない地方都市でどこまで自由で斬新な企画が打てるのか、とても楽しみに会場入りする。ところが「新しい」「これまでにない」が宣伝文句で連
発されるわりに、とくに新しさを感じるポイントがみつからない。プログラムも通常の長唄や現代邦楽の演奏会と同様だし、「鶯宿梅」という曲のストーリー
を可愛い墨彩画のイラストでスライドショーにしてくれたのは面白かったにしても、この手法自体はどこでもやっている。客入れ時にジャズのBGM(しか
全体として、一般に行われている邦楽のさまざまな「新しい」試みと比較すればかえって昔懐かしい雰囲気が強く、ノスタルジーを売り文句にしたほうがよほど的確だったかもしれない。・・と思ったのは私だけなのか、客席の大半を占める中高年の観客は素直に驚いたり喜んだりしている(ようだった)。この企画の中心人物・S氏自身がたしか還暦前後ということもあり、中高年による中高年のためのノスタルジックでリラックスできる邦楽、といった趣。高齢化最前線の地方都市では、この世代をつかんでこそ、か。 企画の善し悪しはともかくとして、おそらくは師匠に厳しく仕込まれた筋の良い古典曲はどれだけ聴いても飽きない面白さがある。録音物などで「枯れた名演奏」に慣らされすぎた耳に、まだ若くつやつやとした長唄と囃子はくすぐったく、笑みがこぼれそうになる。 それでも評価できるポイントは、彼らの師匠に怒られそうな(?)自由奔放な内容でも、地方都市というポテンシャルを逆手に取って臆さず実行してしまったことだ。逆の言い方をすれば、師匠が満足するようなことばかりやったところで、何の議論も軋轢も変化も進歩も期待できない。少なくとも各方面に気を遣いすぎた結果、つまらない残りカスみたいなステージが出来上がってしまうよりは、面白かった。 主催/風声会 邦楽玉手箱イン広島実行委員会 |
伊藤多喜子の「別冊 邦楽ノート」の扉へ
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