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劇団黒テント公演『メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス』

5月21日(日)まで。

下北沢ザ・スズナリ

16日の夜、Bプロ拝見。

この芝居はダブルキャスト(ひとつの役をふたりの役者が交代して演じる)になっていて、僕が観たのはそのBプログラム。ドライブイン「楽園」で働く、フーちゃんこと藤山(さとうこうじ)と、長距離トラックドライバーのリーダー的存在である菊地(齋藤晴彦)はA・Bいずれにも出演しています。

《プログラム》より

場所は東名高速、深夜の川崎あたり。無線を通じて聞こえてくる長距離トラッカー達の会話。やがて、彼らは、たまり場であるドライブイン「楽園」に集まってくる。そこには、女手ひとつで店をまもっている夢子と、三十歳になっても子供の心をもった下着ドロ常習者のフーちゃんが働いている。この物語は、「楽園」で働く二人と、そこに集まる個性豊かな長距離トラッカーを中心に、夢と現実が交錯しながら進行する。・・・

このお芝居の中で、現実としてとらえることができるのは、深夜のラジオ番組「鹿島洋子のカミヨンドライプ」のDJ鹿島洋子。4人の長距離トラッカー。そして、4人が集まるドライブイン「楽園」で働く、夢子とフーちゃん。つまり、人が存在するということだけ。

芝居の中で語られる出来事は、時と場を超えて行き交う彼らの、事実と幻想が織り成し創り出した事象(たとえば、ドイツと、天国=死者と、留置場と、「楽園」が改装されてできたコンビニと・・・ひとりひとりが違う場所にいながら会話している、らしい)。

ダンボールでできた四角いトラックの中に入って、肩紐でかつぐ中年トラッカーたち。‘運転者は君だ、車掌は僕だ、あ-との・・・’と子供達が遊ぶ電車ごっこのよう。物知り顔のトラッカー桜井が、かつて、またぎだった菊地が狩りに出てしとめたうさぎだったり。この時、菊地が動物の言葉を理解できるようになり、山を下りて、トラッカーとなったのに、トラックで熊をひいて車が大破し、クマっつゃった、って。この山にはラッコもアザラシもいるみたいだ。‘エンリケ’と呼ばれ、トラッカー梅さんが買いたい洗濯機がダンスしたり、ターンしたり。奇想天外。自由奔放。過眠症(いつも眠たい)のトラッカーや、22時すぎには食事を出さない深夜営業のドライブイン「楽園」も笑える。

物語は深夜1時スタートのラジオ番組の始まりから、終わりまでの時間の中で展開されます。

もういまから30数年前。今年結成30周年を迎えた黒テントが生まれた頃、ラジオの深夜番組が若者達の心をつかみ各局がこぞって意欲的な企画を打ち立てていました。「セイ・ヤング」「オールナイトニッポン」・・・。投書を読み、音楽をかけ、悩みごとの相談にのる。ディスクジョッキーという呼ばれ方が一般化したのもこの頃から。朝方3時頃から長距離ドライバー向けの番組もあり、こうした番組を担当した女性アナウンサーはアイドルでもあったようです。

ラジオを通して自分に話しかけてくれるDJ。無線で結ばれたトラッカーたちの絆。現代のコンピュータ社会が生み出した疑似体験や、真実が語られているかどうかもわからないままに友達と呼び合う、メール友達。行き場のない切なさ。よりどころをつかみきれない、もどかしさ。科学技術は進歩を遂げても、電波や回線でしかあたためあうことのできない友情?が存在する。人が求める、コミュニケーションのありようはこの30年、どうやら進歩していないらしい。

台本では、場面がかわるところが暗転になっていたけど、暗転にせず、前の話と後ろの話をクロスさせながら明転でストーリーを展開していったそうです。開演前に、演出協力されている山元清多さんにうかがいました。「だから、ちょっと難解かも」。「テレビのように正解を見せるのではなく、不思議なままを心に刻んでもらいたい。そして、それがある日、何かのきっかけで芽吹き、そういえばある時の黒テントの芝居の意味はこういうことだったのか」というようなこともおっしゃっていました。観劇の余韻が人生に活かされる芝居をしていきたい、と。不器用な伝達方法だと思いますよ、演劇は。視聴率を稼ぐために作られ、消えていくマスメディアのドラマとはやはり違う。

お金を払って、わざわざ時間を割いて、劇場まで足を運んで観に来てくださるお客さんに、手作りの芝居、場内が一体感で包まれる芝居を観ていただきたい、大人の鑑賞にたえる演劇。そのためには小劇場の空間が最適なんです、と山元さん。

設立当初、テントを張って公演をしていた黒テントの原点は、小劇場という空間に生き続けているようです。

今回の公演では、現代人のつながりの希薄さや、せつなさを、ユーモアとナンセンスを織りまぜながら場や時空を超えて展開し、大枠では、おおらかに自由闊達に「自分の目標」(梅さんの場合は洗濯機‘エンリケ’を買うこと)や自分自身の楽園を求めて歩き続ければ、きっと道は開けるよ、と伝えたかったのでは。僕はそんな気がしました。初戯曲だとは思えない、まとまりの良さはさすが漫画家だから!?

言葉と言葉の連鎖による言葉遊びや言葉の使い方をズラす笑いなどはよくあるけど、言葉とシーン=場面転換による状況描写の連鎖から生まれるナンセンスは新しいかも。

メザスヒカリノサキニアルモノ。それはあなたの目標、夢や希望。先行き不透明な現代社会の中で、その道のりを照らしてくれるヘッドライト。それはあなたの情熱や信念。行き詰まったら無邪気に笑おう。笑う門には福来たる。ケセラセラ、って笑っちゃえ。

アーク編集室・鈴木英生


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