Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》01/10/31

万国文化中心報告 vol.41

●2001年10月  <その2>

オペラの現場●パリ・シャトレ劇場

 山海塾のツアーをお休みして、今年の秋、来年の春まではオペラでヨーロッパを廻ります。その始めの会場がパリにあるテアトル・ドゥ・シャトレ、猿之助や歌右衛門歌舞伎の会場にもなったシャトレ座というと通りが良いかもしれません。
5層の馬蹄型客席、キャパ2000程、オーケストラピットもある中型のオペラハウス。パリ市立音楽劇場というのが正式名称の、1909年にディアギレフのロシアバレエで開場したれっきとした民衆(公衆)劇場=パブリックシアターです。
 劇場のプログラム、オペラの運営、実際の作業スケジュールなどを何回かに分けてレポートしようと思います。なにしろ仕込み期間が10日もあるので。

 このシャトレ座の2001−2002シーズンは、9月24日に始まり6月30日に終わります。ジェシー・ノーマンの冬の旅(シューベルト作、演出ロバートウィルソン)が開幕を飾り、オペラが10演目、バレエ3カンパニー、8リサイタル、コンサート16、それ以外にピアノや室内楽のコンサートやリサイタルが毎週入っています。例えば日曜日の午前中には子供も入場できるコンサート、ウイークデイのランチタイムにもホワイエを使ったコンサートがあります。さらにははっきりと子供向けのプログラムや若い音楽家を招いてのコンサートなどもあって、山海塾常打ちのテアトル・ドゥ・ラ・ヴィルとは全く違った内容です。

 こうしたプログラムは今年の初めには、つまり昨シーズンの半ばには小冊子にまとめられて発表され、シーズンチケット以下、順次各晩のチケットが発売されます。ドゥ・ラ・ヴィルは会員制の優先前売りシステムを持ってますけど、シャトレの場合はそう言うわけでもないみたいですね。音楽の場合ダンスよりは固定客が多いものか、あるいは聴きたいものしか聴かない客が多いのか、多少おすましムードの香る方式がクラシカルで良いということでしょうか。

 場内は例によって金と赤の内装、シャンデリアはクリスタルで飾られて、客席の大空間を柔らかく照らしています。オーケストラ(日本で言うところの1階席)は見上げになって舞台には近いものの余り良い景色ではなく、サークル席がちょうど正面になります。ここが特等席。バルコニー席は次の2層にあって、ここまでの観客がグランドホワイエを使います。4・5層目は2等席、さらに6層目にあたる天井桟敷もあります。その見下ろし感たるや絶景で、旧南座の3階席も斯くやと言うところ。

 バルコニーを支える柱は所々にあり、その後ろの椅子に座ると全く舞台が見えません(!!)。席によっては地下鉄が真下を走っているせいで時折地鳴りが響くこともあり、決して平等でも静穏でもない劇場環境なのですが、見た目の大事なショウや空調の音さえも気になるような演目を並べているわけでもなく、こんなもんなのかなぁ、と言う感じ。

 椅子は上等中等下等の3段階、装飾趣味はベルエポックのパリ・エッフェルタワーと同じようなもので、一部鉄骨造。面白く思うのは、劇場の外側の道路に面したぐるりが出入り口以外全てテナントになっていること。セーヌ川側にカフェや園芸店があって、反対側にもレストランや旅行店が入っています。両側とも上層部はホテルで、これが街音の遮蔽効果を上げている気がします。

 現在の日本で新しく建つ劇場が商業施設と一体になっているものも、こうしてみると、全く不思議な現象ではない、のですね。2年前の全面改装で客席の椅子の入れ替え、舞台機構の全電動化、オフィススペースの合理化(イーサネット完備・冷暖房・自動保安設備・スタッフルームの完全リフォーム・等)を済ませたばかりとのことで、近現代の混在した不思議な建物であります。

 舞台は11mのほぼ正方形、下上に若干のスペースがあり、奥に8m程のゆとりを持っています。オケピを上げればさらに5m程度舞台を広げることが出来、毎日曜日のコンサートはその緞帳前のステージで催されることが多いそうです。
ランチタイムのコンサートは正面玄関の真上のオペラの時などには休憩時にバーとして利用されるグランドホワイエを使います。このホワイエはちょっとしたオーディションやリハーサルも行われ、何かいつもピアノを調律していて、そんな場面に出会うと「あぁ音楽劇場にいるんだなぁ」と感じたりして。

 専属のオーケストラも合唱団も無いのに全館これクラシックミュージックで満たされている小屋もあるんだ、というのが今回の現場の印象でした。(補記:ラジオフランスのフィルハーモニーがここで不定期にコンサートを持っています。また、舞台の空いている日にTF1というテレビ局が放映用の演奏を録画したりしているので、専属ではないにせよ関係の深い演奏団体は幾つかあると思います。)

01/10/31


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

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