Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》01/03/16

万国文化中心報告 vol.21

●万国文化中心報告 2001年2・3月  <その9>

ハウス・オブ・ダンス、ひとつの思想、良く暮らすために●引き続きストックホルムのダンセンフュスについてです。プログラムは、若いバレエダンサーのためのコンクールからヒップホップ・ストリートダンス、レスキスやピナバウシュ、ネザーランドダンステアター、など多岐にわたります。こうしたセレクションは特別に目新しいわけではありませんが、この劇場の成立のプロセスを考えるとなかなか深いものがあります。

スタッフの仕事ぶりの印象をレポートしましたが、後に聞くと、大体3年間かけて一応のスタッフワーク(舞台・音響・照明)を学ぶことの出来る態勢を整えているそうです。毎年、毎月、毎週、毎日、毎朝と毎昼、それぞれの作業を始める前に全員が集まってミーティングを持ち、情報と意見の交換をする。舞台を修めたい者は音響か照明から入門する。音響を希望する者や照明に興味ある者は舞台の仕事から覚えていく。現場では経験のある者が何も知らない者に順次指導を交えながら基本的に2人一組で作業を進めていく。そして一通りの技術を経験してから、自分が最も関わりたい分野の技能を高めていく。ここで劇場の仕事を始め今では別の小屋に勤める者も幾人もいるとのことで、75%が国、25%が市の予算での運営の背景には、そうした教育機関的な役割も評価されてのことだそうです。この劇場は次のステップへの扉なんだ、と言われたのが興味深かったです。

ダンスは、元気を出せと勇気づけられたり、知らない未知の世界を垣間見せてくれるものだったり、明日や未来の存在を信じさせるものだったり、そういうアクティブなジャンルだから、この劇場に関わるすべての人々(それは、観客もゲストもスタッフも)が、いつも前向きでいられる様にしよう、そういう建物にしよう、ということでの「ハウス・オブ・ダンス」であり、プログラムなんですね。

この劇場での体験や経験が、自分の人生の次ぎの一歩へ必ずつながる。その扉はここにあるから、あなたはその扉を、自分の力で開けていけばいいんだよ、と温かく言ってもらったような気分を味わいました。

思えば今の日本よりはるか以前から少子化・人口減の課題に直面し、いろいろな施策を通じて社会構造の維持を図ってきたこの国のこと、年齢や性別、言語、身体的不都合の有無等などを問わず、働く気があれば必ず働ける環境を造ろうとして長い時間をかけています。1日8時間労働、週40時間制の厳守もその表れですが、その結果の豊かさは例えばアメリカにはないものです。特出した財産家は誕生しないかもしれませんが、社会に参加している人たちはみなとてもゆったりして、時間を大切に過ごしているように感じます。物価が高いのも高税率のためですが、それは必ず社会に還元され社会全体の向上を支えるわけで、なるほどなぁと思います。

ストックホルムは今ごろの季節は昼と夜とが大体同じ位の長さで、長い冬もあと2ヶ月ほど。山海塾の公演のあとは劇場は、引き続きロングランのヒップホップダンスがショウを再開します。私たちは彼らの1ヶ月半の公演の半ば、彼らのホリディの隙をねらった1週間の企画でした。
(2001/3/16)


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

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