Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》01/03/30
●2001年2・3月 <その13>
サドラーズ・ウェルズ・トラスト●約300年の歴史を持つサドラーズウェルズ劇場は、建物の改築と共に「トラスト」として再出発しています。それ以前はヴォードビル、芝居、バレエなどの小屋として長い物語があるようですが、2次大戦後は王立バレエを擁する由緒ある劇場として、今のエリザベス女王の母、皇太后をパトロンのトップとして迎え、そのほかの数多くのスポンサーからの援助で成り立っていたということです。
トラストは財団法人とはまた違うのですが、旧サドラーズウェルズから改築を経て受け継がれた劇場の建物やその他の財産を信託して運営、つまり王立ではないがパブリックの劇場である、ということのようですね。地区の教育委員会との共催で行われるフェスティバル等のイベントも多く、そもそもこの地域がちょっとした文京地区でもあって、新世紀の劇場はいろいろな意味での公共性を獲得しようとしているんだと思いました。
どう言うわけか虹色がモティーフになっています。劇場の看板、客席のライトはオートマティックに7色に変化します。裏と同じく客席側も完全なバリアフリー構造で通路は広く明るく、特にロビーは開放的で居心地が良く、会場の1時間くらい前からすでにお客さんが集まって飲んだり食べたり良い感じでやっています。映像装置をふんだんに使ったインテリアも面白く、気の利いた最新式のオフィスビルのよう。
バスの内の一路線はサドラーズウェルズ・バスになっていて、例の2階建ての赤い胴体にハートの形と路線番号をあしらったシンボルをつけてもらっています。バス停は劇場のまん前、街路樹に小さな電球がちりばめられていて、遠くからでもそこと分かり、終演後も楽しい感じを絶やしません。場内係りはおそろいのTシャツで、フレンドリーというのかカジュアルというのか、やはり楽しいムードをいつでも漂わせています。
バレエの公演が多いのは当然なのだけれど、取り上げられるバレエはモダンやコンテンポラリーが目立ちます。「ジキルとハイド」「ドラキュラ」とか、「アーサー」(アーサー王の話で2晩もの)とかがここ最近のラインナップ。ロビーのお土産屋さんには子供サイズのシャツや稽古着、バックやシューズが飾ってあるところから見ても、バレエファンたちが親子で足しげくこの劇場を訪れているのでしょう。ロマンティックバレエの公演は他劇場でもあるので、ここはロンドンっ子にとって穴場みたいな感じなのかもしれません。山海塾はこの劇場では少々スペシャルですな。春には近松座の公演も予定されているということですが、歌舞伎にはちと辛いこの小屋、果てさてどう言うことになますものやら。
金曜日と土曜日は正規料金の設定で約5千円見当の入場料ですが、火曜日から木曜日までをオフピーク料金での入場として4千円弱ほどに押さえています。結果、週末のお客さんは中高年の落ち着いた雰囲気、ウイークディは学生やダンサーなどの若い層が主になって、それぞれ全く違う反応になりました。
小屋のスタッフは毎週入れ替わり立ち代わりするゲストカンパニーの迎え方にとても熟達しているのでしょう、打ち合わせの進め方、作業段取りの組み方、見事なほどに無駄がありません。最小限の人数で対応するためのノウハウはきちんと勉強したいと思いました。照明・音響・機構すべてコンピューターでコントロール、各チームにオペレーターが一人づつおり、そのほか若干名のスタッフが適宜細かい仕事についてフォローをいれていきます。
怒鳴らない、走らない、投げない、等々の事故を未然に防ぐ行動規範も確立しています。静かに、しかし手早く、そして丁寧な仕事ぶりはさすがに「ジェントルマン」の国。一つ一つの動作、作業の結果の記録、決めたことに対するきちんとした対応、これはこの国の美風なのか劇場ではそうあるべきという教育の成果なのか、学ぶべきこと、見習うべきことは相当に沢山あると感じています。
(2001/3/30)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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