Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》01/05/18

万国文化中心報告 vol.28

●2001年5月  <その2>

世田谷パブリックシアター●壮大な演劇上演実験現場

今年の5月から6月にかけて計画されている山海塾の6作品連続上演、その2作品目の幕があきました。水舞台のピースですが、最近のハイブリッドな劇場機構は水分や粉塵を決して得意とはしていないので、いろいろとその準備・後始末が大変です。そうは言っても、連続上演の主な会場となるこの世田谷パブリックシアターは劇場スタッフの方たちの熱心なサポートのおかげで、大変気持ち良く毎日を過ごすことが出来て感激的です。

劇場として特筆すべき設備・組織上の工夫はいくつもありますが、今回のレポートでは、観客席の勾配可変機構を取り上げなければ、と思います。既にあちこちの専門誌等で詳しく報告されている(だって開館から5年も経ってるわけですから)ので、ご存知の方も多いはずですが、実際にその効果を目撃体験すると、これはちょっと自慢できるスリリングな物語になります。

最前列の客席が約2m沈下します。空間容積が大きく増える(音響的な変化があります)のと、照明投射角がくっきりきつくなる他に、プロセニアムの高さが強調されて非常に縦長なプロポーションを持った舞台に早変り、演劇小屋ともオペラ小屋とも、もちろんコンサートホールや講演・集会場とも違う、極めて個性的で特異な劇場景観が現出することになります。なんと言うか洞窟感のある、深い穴の底に導かれたような、谷底から空を見上げるような、自分は決して尊大で超自然的な存在じゃなく、なのに日常生活や社会環境についての思考はとりあえず当座忘れてしまうような感覚。

もちろん二・三階席からの舞台は、見下ろしの角度で遥か感とでも形容せざるを得ないようなある種の浮遊感を伴った見え方で、それはアメリカ合衆国のあちこちの大都市に残っているグランドシアター的であったりします。客席勾配がゆるい時の感じがなんとなく普通の会館風であったりするだけに、その変化の振幅たるや真に劇的です。ただ内装が自然石風の硬質な印象なので、どうしてもカチッとした緊張感がいつでも漂います。現代日本の触感にも似て、やや大げさだし、直裁とも言い難い風情なのでお客さんの好悪の判断はいろいろでしょう。

それほどの大変化が15分ほどの時間で眼前に繰り広げられるのには、めったに出会え無いことと思います。前回のアメリカツアーで訪れたシアトルの劇場がやはり客席可変の大設備で度肝を抜かれましたが(平土間席がアイススケートリンクに早変り・アイスショウの常打ち小屋でした)、普段舞台を変幻自在に操る者の盲点をつく客席転換の刺激に慣れてないだけなのかもしれませんね。
(2001/5/18)


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