Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》01/06/29
●2001年6月 <その2>
ちょうど良いサイズの劇場●大野城まどかぴあ
800席余りの中劇場です。福岡市に隣接する大野城市、複合市民サービス施設の大ホール。他には図書館と多目的ホールという名のコミュニティスペースがあります。市役所の隣に建っていて、広い空の下、のどかな空気が満ちていました。
自主企画はヴァラエティに富み、例によってコンサートも講演会も、芝居もダンスも、映画もラインナップされています。ただ、本当に大きなものはお隣の福岡で開催されるわけでしょう、背伸び・無理のない感じで気持ちの良いプログラムと思いました。お行儀の良い市民会館(というか市的公民館みたいな感じなのですが)があるとすれば、その代表的な一館に数えられると思います。
ロビーがほぼ全面ガラス張りなこと、前庭が恰好の開放スペースになっていて見晴らしが良いこと、図書館と劇場の2階出入り口もガラス越しに見透せること、その景色になじんでいるのが制服の中高校生や普段着のおばさんやおばあさんだったりすること、などなど本当に普通のコミュニケーションが成立する大きさの会場でした。
ホールは1スロープ。舞台に近いところは勾配無し、最終列が2階フロアの高さになるように2段階の勾配がついています。とても見やすい良い客席だと思います。
空間容積は大きすぎず、少し天井が高い印象がありますがそれでも壁面デザインに助けられて、居心地の良い鑑賞環境が作られています。特筆すべきは、舞台からの客席観が素晴らしいこと。押し付けがましくないパースペクティブが感じられて、とても集中して客席に向うことが出来ます。良くある会館の客席観は、妙に平面的な視線の移動を誘われて落ち着かなかったり、あるいは正面の壁や遠い客席に視線が引き寄せられて開放されなかったりというものですが、ここはキャパのちょうど良さも手伝って、自然な視野の奥行きと広がりを味わうことが出来ます。
そんなことから思ったのがこの劇場のサイズのちょうど良さ。見やすい客席と集中できる舞台からの眺め。演劇は400を一応のラインにしたりするのですが、800とかも悪くないじゃん、という感じです。何がどうでそうなるのか、客席デザインと舞台の関係については深くて難しい理論もあることでしょうけれど、偶然の産物的な成り立ちもきっと見過ごせないのでは。ぜひそうした劇場を天然ならぬ「偶然」記念物として保護していきたいと考える次第です。
補足。会館の管理を任されているスタッフさん達は、この会館ならでは。やっぱりとってもフレンドリーで、自然体の人間関係が成立している印象。こういう労働環境についても、ユネスコの世界遺産を見習ってぜひ「業界」遺産として大事にしていくべきだと思いました。
(2001/6/29)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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