Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》02/1/12
●2002年1月 <その3>
KAVC・かぶっく●神戸アートヴィレッジセンター
神戸はアンサンブルゾネの本拠地です。この会場では二回公演。ダンサー4名(振付本人含む)と音楽家1名(出演あり)、構成的にはカチッと決まっているものの音楽家の演奏は半ば即興なので、上演成果はたびごとに違います。それもどうやら落ち着いてきて、満を持しての凱旋公演という感じ。
かぶっく、ホールや開館に愛称をつけるというのはいつ頃からの流行なのでしょうか、この愛称には妙にすっとぼけた感触があって結構好きな名前です。マンションと一体化したような建ち方をしていて、不思議な施設です。新開地の場外競艇場の前を抜けて、なんとなく震災後のさばさばした殺風景な空気の漂う街の一角にあります。
ビルの1階に喫茶店とギャラリー、地下にシアター、2・3階部がホール、4階が事務所と稽古場。小規模の複合施設を成しています。1階の喫茶店はライブなどの開催もしているようで、そんな訳で音楽・美術・舞台の3ジャンルが仲良く共存しているアートセンターです。
ホールは真っ黒ではなく、でもそれに近い深くて濃い茶色です。ロビーは外壁がガラス張りで外の空気を感じることが出来、明るいグレーの印象でまとめてあります。
所々おしゃれなのか経費節減なのか、どっちをねらってのデザインか俄かに判別しがたい細部もありますが、さすがに現代的な仕上がり。観客は比較的に冷静に客席に導入されるはずと思います。ぼく自身の経験から言うと、新開地の地下駅、地下街、アーケード、場外、食べ物屋さん、を順々にたどってKAVCに着くまでに大きくゆれる自分の精神と向き合ってしまうので、受付を済ませて2階のロビーに立っているとそれだけで冷静になれる気がします。特に冬場はロビーで過ごす僅かなひとときは、とても大事になりますね。
この種の体験は扇町ミュージアムスクエア(OMS)でもお馴染みで、劇場の立地について考えてみるとこのタイプの小屋は少なくないのかもしれません。商店街に隣接するもの、官庁街に近接するもの、住宅地にあるもの、全く何も無いところに忽然と建っているもの、そしてざわざわした場所・歓楽街などに建っているもの。普通のお店などとは違って通りすがりに覗いていくような施設ではないので、確かにどこに建っていても不思議ではないのですが、立地によって得をしている小屋、損をしている劇場、行きにくい印象のホール、なんとなく寄って行こうかと思う館、実は様々に出し物が影響を受けていることが多いのではないでしょうか。
そう思うと本当にロビーでのひとときは貴重で、ロビー・ホワイエの内装や展示、受け付け廻りの雰囲気は、上演者にとって無視できないほどの影響を観客に与えていることが予想されます。日常生活の緊張をクールダウンする緩衝帯、あるいは期待感を盛り上げる舞台への前哨地、こうした役目をきちんと担わせることができるだけのゆとりが上演作品に出会うまでのどこかに、時間的にも空間的にもあるようにしたいです。でも文化中心そのものが本来はそうしたゆとりを具現化したもので、そこまで丁寧に観客の精神を保護しなくてもいいのかもしれないですけど。
ホールは、愛知の小屋のニまわり分小さいサイズ。ここはブロックで天井が降りてくるトラスシステム、床面の昇降設備は無し、常設で平台を組んだ舞台が置いてあります。ギャラリー後方にガラス張りの調整室は、場内の静粛を妨げない設計です。
ロールバック式の座席はロビーからすぐにアプローチします。色々と考えてあって、とても使いやすい劇場だと思います。搬入も便利だし、楽屋もしっかり、スタッフも親切、言うこと無いですね。
自分の年齢のせいか、訪れる劇場がどこも素敵な会場に思えてきて、昔の修行時代のような悔しい体験が遠い思い出になりつつあります。それとも、デフレが叫ばれる昨今、いやみな体質の劇場スタッフは続々とリストラされているということがあるのでしょうか。久々の日本国内の劇場巡り、想いは複雑です。
(2002/1/12)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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