Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》02/1/8

万国文化中心報告 vol.47

●2002年1月  <その2>

愛知芸術文化センター小ホール●豪華な小規模劇場

 アンサンブルゾネとのツアーは名古屋にも廻りました。県立美術館を最上階にいただき、コンサートホールとオペラハウスをそれぞれ擁し、情報スペースや中央の吹き抜け大空間が印象的な、大殿堂「愛知芸術文化センター」。地下の小ホールが会場です。小ホールと言ってもオペラハウスと比べてのことで、ちょっとした多目的ホール程度の空間容積を誇る、堂々たる劇場設備です。

 これだけの大施設ともなると、搬入のための経路、入場者のアプローチ、作業スペースの配置など、ややもすると全てが大げさです。多少鼻白む感も否めませんが、開館からすでに10年を越えてスタッフも落ち着き、出入りの技術者にも慣れがあり、決して不愉快ではない豪華さを味わうことになりました。

 今では日本中ですっかり当たり前の景色だったりするのですが、この小屋でも作業中の安全ヘルメット・安全ベルトの着用が義務付けられています。みんなでお揃いのヘルメットをかぶっての仕込みは、なかなかに微笑ましい。迅速さを要求される場合には邪魔にも感じるヘルメットですが、安全第一の現場感覚、急ぐときには増員をして、無理の生じないスケジュールを心がけるのが大切という訳です。

 搬入には劇場スタッフが立ち会って、シャッターの開閉、エレベーターの昇降、ワゴン等を使っての搬送、すべてにおいて安全確認を怠ることがありません。おかげで迷子になることもありません。ちなみに、楽屋口からの入館には身分証明書もしくはスタッフ証が必携です。さらに小ホール楽屋事務所でもチェックがあって、厳重な保安態勢。驚異的な予防措置と言うべきか、事故は絶対に起こさないぞ感が満ちます。

 ホールは黒い内装です。5本のブリッジが一間ごとに切られていて、その切れ目を一点吊りが前後自由に移動する仕組み。下手から上手の5本の一点吊りを一まとめにしてバトンを仕込みます。ブリッジによる不自由な天井レイアウトをなんとか使いこなす工夫だと思います。照明機材がブリッジに仕込まれることになるので、結局は道具バトンとしては中途半端な気もするのですが、感心する仕掛けではあります。

 照明デザイン的には天井の印象がストイックにまとまらないので、中規模ホールでの上演のような締まった感じを作ることが出来ないのが難。小ホールと思えばそのままなのですが、せっかくの空間容積を無駄に照らしてしまっているようで、辛いシーンが幾つか出来てしまったのが残念でした。

 床装は黒板張り。電動昇降によって適当な勾配を作り、ロールバックの座席と合わせて適当な客席を構成するようになっています。照明席音響席はギャラリーにむき出しであって、最後列のお客さんのすぐ背後なので、操作中の臨場感はまずまず。お客さんにも緊張感を強要する結果になっていないと良いのですが、ともかく重厚な空間印象。実験的前衛的な出し物には適当でも、この黒内装・ブリッジ・ギャラリーの会場は華やかさには欠けますね。多少の内装的な配慮が無いと、舞台成果だけでは明るい気軽な観後感を生むのは大変そう。

 特に、この小ホールはロビーが真っ白の吹き抜けからアプローチした、明るい清潔な空間なので、客席とのギャップがきつすぎて。

 確かにこの県立の施設全体にめまいを覚えるポイントは数多くあって、意図的とは思えないけれどこの小ホールの造りもその一部。非日常と言うキーワードを建築的に具体化するとこういう結果になるのでしょうか。美術館の入り口に至る遠大なエスカレータ、ガラス素通しのエレベータ、大ホール(オペラハウス)も花道が仮設できたり色々の仕掛けがあって。面白い建物です。

(2002/1/8)


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