Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》02/10/29

万国文化中心報告 vol.80

●2002年11月  <その2>

ちょっと嘘がありました●UCLAのドラマスクール

 ロイスホールに働いているスタッフは、全員プロでした。但し、彼らはローカルユニオン(つまり労働組合)には所属しない新しいタイプの技術者だったんです。

 ロイスホールは1919年のUCLA設立時からの大変由緒ある建物です。西側キャンパスを望む絶景のテラスこそ立ち入り禁止(ここはサークルのメンバーがパフォーマンス前後に集うサロンになってます)ですが、後は地階から3階までの全ての空間が教室やセミナールーム、教授陣のオフィスとして使われています。
 地階はUCLAパフォーミングアーツの事務所、楽屋、ダンススタジオ、地上階は舞台とホールの空間を除いてその外側は廊下をはさんで両側が部屋になった造り。ですからロビーから階段をぶらぶら上がっていくと、いつの間にやら大学の教室の並ぶ妙に見慣れた風景になってしまって慌てます。

 UCは日本でも知られている様に、いくつかのキャンパスを州内に持つ総合大学ですが基本的にはその街ごと特色ある学部運営がされています。LAはグラデュエイトレベルの充実がなされ、ここでの学位を元に合衆国内のあちこちの大学のマスタースクール・ドクターコースに進むわけです。ドラマ・ダンス系でもそれは同じです。
 もちろんUCLAにもマスター・ドクターの講座はあるのですが、必ずしも特別優秀という訳ではないとのこと。アートマネジメントやシアターテクニック、アクティングやダンス、ドラマライティング(劇創作)は東海岸の伝統校が圧倒的に良いらしいです。・・・東と西とでは全く文化の様相が違うし、そうだろうなと思います。

 UCLAのドラマスクールは、学部で文学や美術史・芸術学を学んだ者が主で、演技実技のほか若干の劇場技術系の研究が可能だそうです。舞台発表はあくまでも自主的なもので、課外の時間を使って作業を進めるとのこと。要は論文のための研究実験と同じ扱いですね。技術指導などは特に無いので、いろいろ工夫しているみたい。
 私たち山海塾の公演のバラシに5名ほどが手伝いに来ていました。慣れない手つきで工具を扱って、プロの技術者に苦笑交じりで教えられたり、退場を命じられたり。課外活動なので学部生も混じるようですが、バイト代稼ぎにもなっている様子。そのあたり、自由な大学生活感があって懐かしく素敵でした。

 コースの構成としてはドラマとダンス、それぞれの創作、芸術学的な研究(歴史や評論)、敷衍して劇場文化・舞台芸術一般の研究、応用的な課題としてマネジメント・プログラミング・マーケティング等の職業的な分野についての研究と実践・トレーニング。劇場学的な技術系の、本格的な講座はここにはありません。
 ロスアンゼルスとその近郊にはそうした芸術技術系の学校が幾つもあり、なかには大学や大学院と同等のコース設定がなされているところもあって、地場産業の映画や娯楽業界に対して豊富な才能提供を図っているとか。そうした学校出身の技術者はユニオンに属さないことも多く、従来の業界とは一線を画す訳です。

 ユニオンが労働者の地位を護ることが第一義であることを考えれば、前衛的実験的な作品創作の現場ではユニオン外の技術者が重用されることは明らかで、日本でもそんな状況はよくある話だと思います。もちろんデザイナーやプランナーの立場に立てば、オペレーターの健全な労働環境を整えることは作品の完成度を上げるのと同じ位に困難で面倒な仕事です。となれば、だからこそ、フリーランスの技術者同士の互助的な組織が必要になってくるんです。それがこのロスの集団だと思います。
 何時の日にか、日本でもこんなNPOが成立する筈です。是非その実現を図りたいと、強く思ったことでした。

(2002/10/29)


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