Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》02/2/1
●2002年2月 <その1>
アミアンの文化会館●美しい劇場
フランス、パリから車で1時間ほど北の街、アミアン。美しく大きな大聖堂の所在で有名なこの県庁所在地の、文化会館(メゾンドゥラキュルチュール)での公演は今回で3回目となります。10年ほど前に新装なったこの小屋の印象は、奇異に響くのを承知の上で言えば、「美しい」の一語に尽きます。戦災から立ち直った街並みの中で新鮮な外観の建物がこの会館だけ、との事情はあるとしても、実際かなり抑制された構成や機能の充実には感嘆しました。
外装のカーテンウォールを円筒形にしつらえ、単調なモダン建築の直方体の構成をカバーします。円筒形は同時に客席の空間のイメージを伝え、さらに建物のそこここのデザインもこの正弦カーブをモティーフとしています。とてもスマートです。観客のエリアは白とブルー、出演者始め裏側のスペースは白とアンバーと臙脂、客席はグレーと黒、色彩計画の厳密な適用には頭が下がります。
この劇場の美しさは例えば客席の構成。900席程度のたっぷりした空間は、最前列の客席までの壁を明るいベージュのウッドパネルで覆い、そのラインから舞台奥まできっぱりと真っ黒の塗装壁が続いている。客席のシートは真っ黒の別珍張りだが、床の明るいグレーのカーペットが重くなりがちな客入れ時の空気を沈ませません。
一階席前半分は「双子回し」に乗っています。盆と盆の間は凹レンズ型になった昇降台でそのままでも狭い通路を舞台と客席に架け渡すことが可能です。それぞれの盆の舞台側4分の1程が昇降してオーケストラピットになったり前舞台(エプロン)になったり、下手と上手と2つの盆が内側に向かって回ると「でべそ」、もう少し回ると「中央花道」、が出来あがります。緞帳との組み合わせで、ファッションショウ・ヴォードヴィル・お芝居、各種コンサート・ダンス、かなり多様な客席と舞台の関係が実現する設計です。
楽屋スペースは例によって無愛想な仕上げなのですが、それでも床のリノタイルがリズミカルなパターンで丁寧に敷きこまれていたり、ドアがその性格に応じて(事務室・楽屋・非常扉・客席等への動線、など)色を変えてあったり。半年ぶりのフランスの小屋は何もかもが素敵に見えます。
正面玄関の前には広い、ほぼ建物の敷地と同じ位の広場があります。ロビーはギャラリー(地元の写真作家の展覧会を開催中)とショップ(CDや作家モノのクラフトなど)、チケット売り場・インフォメーション、それにレストラン。比較的天井が低く造ってあって劇場スペースとの雰囲気の違いがはっきり出ています。
劇場スペースはすっきりと高い壁が気分を開放し高揚させてくれます。窓も大きくて明るいし、床から天井まで全て真っ白でピカピカしていて余分な色味もなく、おしゃれと言っていいのかどうか、ともかく気が利いています。
小劇場もあります。こちらはフリースペースで落ちついた茶色の内装。室内楽などに向く感じ。コミュニティシアターなどの演劇が上演されているようで、きれいなカーテンがたっぷりと吊ってありました。
アミアンはちょっと倉敷みたいな感じの観光地でもあります。市役所を中心にショッピングモールが展開していて、明るいベージュ色の石畳が起伏を持って広がっています。駅から真直ぐにこのモールをそぞろ歩いて、10分くらい、するとモダーンなこの会館が建っているという仕組み。私たちが滞在していた時期はどんよりした曇りがちの毎日でしたが、春からのシーズンはさぞ美しい街並みなのでしょう。
フランスらしい街と、そして劇場を堪能しました。
(2002/2/1)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室