Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》02/3/18
●2002年3月 <その3>
伊丹のアイホール●学習と勉強の場
実に5年ぶりくらいにアイホールで仕事をしました。伊丹市立演劇ホールです。このホールには、まだ山海塾との付き合いが始まる前からちょくちょくお邪魔しておりまして、全くの素人に近い時期からのお付き合いになります。いろいろ学び、また勉強させてもらっています。今回は劇団ひまわり研究科の卒業公演。3時間の大作「検察側の証人」を上演しました。育つということ、育てるということ、について思うところ大でした。
アイホールは正方形の床面に、外観上はほぼ同じ高さの建物が乗っかって、立方体の空間印象です。18mだったと思うのですが、日本伝統の寸尺間モデュールを意識したサイズで、幾つもの部分に分かれて昇降します。搬入口もフラットなアクセスになっていて、大きく開口されています。一般的な劇場と異なって、特に舞台や客席が定まっていないので使い勝手が良い場合も悪い場合もあり、舞台監督や美術装置家の腕如何で様々に評価が分かれる劇場なのではないかと思います。
天井部は5列のフライトラスが仕込まれてあり、なかなか考えた回路配列・昇降区分で、照明音響担当者の発想や仕事がシビアに仕上がりに反映する感じ。適度にこだわり、適当に手を抜き、按配良く手配りしておくと、自然と恰好のついた仕込みになってしまうのが面白いところです。演出家の趣味や意図が存分に表現された空間を創るのは結構大変ですが、それだけに挑戦し甲斐のある劇場だと思います。
ぼく自身が、この劇場で、何度も挑戦させてもらえたのでそう思うのでしょうけれど、間違い無く若い舞台人を育てることに熱心な施設。ホールと練習室2室を使って、演劇ファクトリーと名づけた演劇コース、私塾とタイトルされた戯曲コース、連続ワークショップのスタイルで継続されているダンス講座、どれもが熱心な講師を得て着実な成果を上げている育成型の事業を展開。ほかにも地域の子供さんたちを招いての「プレイ!」(ダンスと造形・音楽の1日ワークショップ&イベント)や、最近では中学高校演劇部の大会などもあるよう。
ロビーも狭いのに、一杯にチラシ・ポスターが貼ってあって、ちょっとした情報ブース。まめにこれらを貼り替える手間を思うだけでも頭が下がります。
大阪から意外に遠くないということも幸いして、キャリア不充分のスタッフさん達やキャスト志望者がまま訪れている劇場なんだと思います。そして、ここでいろいろ経験する。大阪にも小劇場・小スペースはたくさん有りますが、公立で・しかも演劇等の公演のために週末にかけて4日5日連続で借りられる、となると大変貴重な劇場な訳なのですね。それだけでもユニークな存在になってしまう。
劇場という施設はそこに常駐する劇場付きのスタッフの志向でどんな入れ物にも変容する、と信じていますが、さしずめアイホールは親切で熱心、教えることも嫌いじゃないし考えることも嫌じゃない、珍しい体質の劇場の筆頭に数えることが出来ると思います。ただのホールであることを逸して、劇場目指して進化中、というような勢いを感じさせられます。演劇人から舞台人に、舞台人から劇場人に、日々成長を遂げることを目標にしているような。
キャパシティが多くないのが制作的には悩みの種とも伺います。しかし、多少の狭さが成長中の劇場人には必要なのです。広い劇場を広々使うことはとても難しいことで、狭い劇場を広く使う工夫が何倍も要求される。このアイホールはそんな工夫の集積を感じさせます。そして実は適度に広い。
床面がグレーと黒のパンチカーペットでステンの目地が入っていておしゃれ、壁面もグレーと黒のストライプで凸凹していてきれい、並べるパイプ椅子が黒と茶色と水色ですてき。こうした会場条件が日本離れした劇場観を持たせているのもありましょうが、息の詰まりそうな風通しの悪い人間関係を全く感じさせず、使い勝手の良いように設備に手が加えられて、出入りする劇団員たちを見守りつつ、行儀の悪いところには即座に指導し、技術の不足するパートにも早速意見をし、という劇場側の姿勢には深く感銘を受けます。
こんな劇場に研修に行けば、ホントにいろいろ学べるだろうな、と改めて思いました。
(2002/3/18)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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