Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》02/4/18
●2002年4月 <その4>
オペラの仕組み●日本ではいかがでしょうか
今回のリヨンでの再演準備は非常に長く感じました。演出美術にも変更なし、音楽も問題なく、照明もここまでのデータ通りで作業が進みました。4月1日に日本を発って、今日18日が初日、2週間半。実際のしこみ作業は3月末から始まっていたので、自分が到着した際にはもはや調整作業が残るのみ、細かいデータの調整を2週間近くに渡って延々と続けていたことになります。やっぱり疲れます。
前回までのレポートにも書いたように、スタッフ職員の労働時間が厳しく短縮され日本のように続けて仕事をさせることが出来ないために、舞台では(稽古場でも職員が付き合う場合は同じく)4時間を一単位とした作業計画になっています。チーフクラスのスタッフは作品現場を掛け持ちせず、別作品のプロダクションとの間でシフト構成します。その結果、当作品も照明作業は週35時間まででした。
大道具も35時間、小道具も衣裳も35時間、オーケストラも同じ、音響も。この制限に合わせて稽古スケジュールを組み、仕込み予定を立て、本番日程を固める作業は、テクニカルディレクター他の管理職の仕事になります。例えば照明部の管理職はチーフ以下のスタッフの各個人の労働時間を配分し、仕込みにエキストラを呼んで(ユニオンに所属のスタッフが手配されます、)稽古には本番と同じメンバーがつくようにしたり、あちこちで1時間ずつ削って通し稽古の日などにまとめて10時間の作業を出来るようにしたり、かなり神経を使うデスクワークだと思います。
オペラハウスそのものはシーズン中の休館日なし、清掃業務まで合わせると午前6時から午後12時(午前0時)までの開館。ただ土曜と日曜は事務部門は休み、音楽家は稽古場の鍵を借りていつでも練習して良いことになっています。
今回は照明機材の吊り込みに12時間、フォーカス作業が20時間、明かり作りが16時間、合計48時間。2週間の内訳で言うとフォーカスが20/35、明かり作り16/35。余りの27時間は大道具に付き合ったり舞台稽古を見ていたり。
日本の分刻みのタイムテーブルが懐かしくなるほどのおっとりペース。経済効率時間効率無視、としか思えません。フランスでも決して全ての劇場がこういう運営であるわけがないので、芸術家のわがままに付き合うオペラだからこその構えということなのでしょうか。これはオペラでは常に不思議に感じていること。労働環境保持や雇用創出をねらったものなのか、間違いなく労働組合は満足しているけど。
日本のオペラ産業はどれくらいの雇用を創出しているのか、気になります。商業演劇などとは比較できないとは思いますが、低予算・小人数を旨としてプロダクションを組まざるを得ないのは貸し小屋・地方回りの鉄則ですし、道具でも衣裳でも日本国内での制作費が高くつきすぎるのでイタリアなどに発注しているという話は良く聞きます。芸術振興と言わず雇用創生と言ってみたら発想が変わりますよね。
リヨンオペラのスタッフが話好きで、しかも政治経済から芸術文化まで、日常生活のこもごも、社会制度や劇場構造など、自分の言語能力の限界をはるかに超える話題が毎日展開しました。仕事が無くても劇場に通ってきて、時間待ちをすることも多いであろう彼らの、ある種哲学的に鍛えられた姿勢は独特のもんです。他人の表現の創作過程をずっと面倒見しているからなのかも分かりません。
相手の話を聞く、何を作りたいと思っているかを理解する、自分たちでそれを実現するためにさらに検討する、相手に見せて再び話し合い整理する、問題を解決していく。技術力って結局はこうしたコミュニケーションの手続きの内容なんだろうなぁ、と深く感じ入っている次第です。日本ではいかがでしょうか。
文化中心は住民への文化サービスとそこで働く人たちへの労働環境、この2つを供給できないと本当ではないんだろうね、と思いました。
(2002/4/18)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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