Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》02/6/29

万国文化中心報告 vol.64

●2002年6月  <その2>

かるぽーとプラザ●高知市立新劇場その他

 いやはや、たまには想像を絶する体験をするものです。高知市立かるぽーと文化プラザは、まさしく文化中心的複合施設の誕生です。愉快愉快。
 1000席の大ホールと移動200席の小ホール、音楽スタジオとリハーサルルーム、5つの展示室からなるギャラリー(今は掘りたて恐竜展を開催中)、公民館(それも絵画室・陶芸室や音楽室、軽運動室や調理室を備え、和室も会議室も複数ある)、横山隆一記念漫画館(これは3フロア分)、レストラン、そしてエントランスの大空間が一見脈絡の無い組み合わせで2棟のビル(一部分11階の10階建て)に収められています。案内図を見ても構成が複雑で、その迷路感覚はJR京都駅ビルの空間展開に似ています。行きたいところになかなか行きつけない。
 建物外観は円筒をイメージさせる昨今流行のガラス張り仕上げ、一階部分は公開空地扱いで石畳のちょっとした広場になっています。所々に関係者入り口や公民館直通エレベーター、大階段式のギャラリー導入路・地下駐車場車両出入り口、大ホール行きのエスカレーター、欧風レストランの玄関が装置されています。一見してシンプル、しかしてその実体は・・・。設計関係の皆さんの苦労が偲ばれます。

 今年の6月がオープンですが運用は昨年度からということで、比較的落ち着いた様子になっています。大ホールを含む文化ホールではこの4月から公演が組まれ、山海塾は柿落としの扱いではありません。とはいえ、照明音響機材も舞台床も、何もかもまっさらですから使っていて気持ちが高揚します。
 劇場スタッフは殆どが若い経験の浅い、管理業務で手一杯と言う感じで、緊張していたり、つっけんどんだったり、こちらとしては付き合いにくい雰囲気だったのですが、大ベテランが一人いるおかげで仕込み作業はずいぶんスムーズに進みました。
 実際に仕込みを手伝っていただいたのは、高知の業者さん達です。新しいホール特有のトラブルは、既に大体出切ってしまっていた様で、慣れた空気があって良かったです。これからの高知の劇場舞台状況はこのホールがリードするのかもしれません。

 さて、このホールの魅力的な特徴は、不思議なアンバランスさにあります。
 充分に広く奥行きもあるのですが、音響反射板や映画用のスクリーンがあり、ブリッジがあり、かなり大きめの大迫りと普通サイズの小迫りがあり、スケールの均衡が悪いのかもしれないなりに、この舞台はなんとも見なれた市民会館の様相。重量のかけられる電動バトンと軽量用の手動バトンがお互いの隙間を探しあって並んでいます。ひだ有の袖は割り幕、同じくひだの一文字と大黒、さらに松羽目が常設です。客席には客席用の照明バトンも仮花道もあるんです。ところが客席にびっくり。
 1階席は500席余りのスロープのなだらかな作り、その奥に鳥屋口を兼ねた調整(音響照明同居)室。つまり1階席の奥行きは大歌舞伎の花道程度で、2階席は殆ど1階席を覆わずに始まります。およそその最前列は歌舞伎小屋で言えば大向うといった風情。しかしそこからはしっかりしたスロープで登り300席弱を収めます。さらに天井立見席も斯くやと言わんばかりの3階席が急坂を見せ、ここにも250席が入っている次第。明るい木製パネル張り、この客席観はかなり雄大です。
 客席壁面の4層のバルコニーと床の赤いカーペットはコンサートホール調なので、最近の多目的ホールはここまで来たか、との感慨を深く持ちました。
1階ロビーからは愛称「かるぽーと(カルチャーの港)」の由来となった堀川が、2階から高知の町並が見渡せます。
 この10数年間に建ったあらゆる名物会館の特徴をすごく丁寧にパッチワークしたような、そんな文化ホールであります。

 時間が無くて施設の他の箇所の見学が出来なかったのが心残りです。多分盛り沢山に様々の工夫が凝らしてあるに違い有りません。今度はじっくり館全体を探索したいと思っています。

(2002/6/29)


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室