Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/12/25

万国文化中心報告 vol.137

●2004年12月  <その6>

北九州芸術劇場●山海塾、シアターで公演。

 前回2月にお邪魔しました。今度は自分で作業を進めてみて、シアターと命名されたその訳を、じっくりと受け止めました。この北九芸劇は大中小の3つのスペースと稽古場がありますが、大劇場をHall、中はTheatre、小がPlayhouse、と名付けられています。大は貸し館対応をイメージし旧来の多目的ホールの仕様に則って、市民会館的な造りになっています。

 一方、小は直方体型のフリースペースとしてあって、地域の小劇団などが工夫を凝らして使う容れ物がイメージされています。ここのキャパは150程度でしょうか、大は1700ほどと聞きました。そして話題の中劇場は約700、山海塾では一階席のみで400位の席数限定×2回公演という、なんとも贅沢なプロジェクト。舞台の大きさは良くある会館と同程度ですから、お客様にはさぞ濃厚な体験だったのでは。

 素人感覚では2階席の最前列など、とても舞台に近接していて特等席だと思うのですが、全景よりは登場人物の表情に注目したいお客様には1階席の方が安心なのかもしれませんね。舞台からの客席観もふと見上げた視線がそのまま2階最前列に吸い込まれる様で、普段の山海塾の空間サイズをベースにすると引きが取りにくい印象すらあります。照明作りも、大味にざっくり仕上げようとするのは困難でしょう。

 それだけ緊密な劇場全体の空間の連携はロビーやホワイエにもあるわけで、シアターと言う言葉のイメージは、ことパブリックスペースに関しては十全に表現されています。ここまでくればあとはリハーサルルームや楽屋などのしつらえへのわがままな注文くらいしか残りません。滞在型の新作創演に関しては、地域でのレジデンスなどの応援があれば、素晴らしい成果を上げられそうな予感がします。

 その予感は、ハードとソフト、この場合は劇場のスタッフの、信頼関係の見事さに拠るもの。自分の劇場を良く言わないことが習慣とすらなっているこの国の労働状況で、私が耳にし目にした中でも珍しいほど、ハード運営スタッフの自信の持ち様は素晴らしいです。設計家と現場者が乖離しなかった幸福、いわば建売住宅に対して注文建築のような、建物の瑕疵は劇場スタッフがカバーするという体制の有難さ。

 これが、一地方公共団体による自主的な管理体制であることに、つくづく頭が下がります。時には合唱大会なども入ってしまい、反響板のない700の、講演会場並みの音質で困った感じにもなるそうですが、アマチュア芸術の発表の場としてもこの館が立派に機能しているのは確かでしょう。ヨーロッパ型の「シアター」的雰囲気の似合うこの劇場が、今後益々の発展と実績を獲得されることを望んで止みません。

 小ホール・大劇場での仕事のチャンスがないのが残念ですが、いつかいずれ、味わい尽くしてみたい北九芸劇のクリスマスでありました。

(2004/12/25)


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