Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/2/1
●2004年2月 <その1>
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「だれか、来る」シリーズの二回目です。
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北九州芸術劇場中ホール●でかした小屋です。
世田谷パブリックシアター以降、あちこちに出来ている演劇用中ホールの、良いところ素敵なところばかりを集めたような珠玉の小屋、と感じました。ここでお芝居を見る人たちは大層な仕合わせと思います。是非機会があればご見学下さい。旧小倉駅(現西小倉駅)前再開発事業で立てられた大型商業施設の別棟最上階に位置しています。他に大ホールと小ホール、稽古場なども併設されています。
内装はほぼ真っ黒ですが、床はグレーのカーペットで足元に不安はありません。座席も落ちついたグレー、ロビーが開放的(すぐそばの小倉城をやや見下ろすロケーション)なのに会場内の圧迫感を余り感じさせない天井高のバランスも見事です。1階席のワンスロープも絶妙な勾配で、何故こんな小屋が今まで出来なかったのか、多くの経験が必要だったのか、公共館とは思えない完成度の高さです。
今回の芝居の繊細な仕上りが、実に遺憾なく客席に伝達されたものと信じます(GPのみで本番は見ずでした)。それには客席最前列と舞台の高さの関係もまた良し。
70cm程ですか、決して見上げずに舞台が見渡せる視界はこれまで体験したことのない感覚。そして舞台の充分な奥行き、適度な袖の狭さ。思う存分演劇専門仕様になっているので、ここでなら舞踊や他のものもアレンジするのが楽しそうです。
セゾン劇場(現テアトル銀座)の雰囲気で世田パブの機構、京都府立文芸会館舞台客席の親しみやすさ、しかも立地はパルコ劇場並み。発信型劇場を謳う北九州芸術劇場の中核施設と言う位置付けは、まんざら言っているだけということではなさそうです。ヨーロッパ型の、制作も可能な劇場とするにはスペースにゆとりが足りないようにも思いますが、少なくとも公演空間としては世界最高のムードがあります。
この劇場の優れているところは、スタッフ体制にも反映されています。あちこちに報告が出ているのでご存知の方も多いとは思いますが、小屋付きさんと呼ばれる管理技術者は今時大変に珍しい、劇場職員です。メリットもデメリットもあるのですが、基本的にはこの劇場を知悉した者が一般利用者に対するサービスとして技術提供を行えるようにしようとする考え方で、このことが特段に柔らかい印象を支えます。
地域の基幹小屋になる、という意味の目標を劇場の方から伺いました。確かにそんな勢いというか、空気と言うか、張りきった匂いのような充実が、あからさまにではないのですが劇場に漂います。これはどうしてなんだろう。気持ちの良い緊張感で身の引き締まる感じ、若いスタッフが多くて現場に活気のある感じ。やってみようとすることに新鮮な眼差しを向ける、ベテランとしての大きな構えというか。
公共館としてはその目的からすれば相反することとは言え、地元でなく世界を見つめる姿勢、地域ばかりでなく日本という地方公共団体の集合を海外から見据えようとするスタンス、大きな大きなものを背後に持ち支えながら手元の小さなことを丁寧に見ている。不思議な気がします。いや、公共館だからこそ地球上の一点たる自分たちの居所を探す視線を持てる、ということでしょうね、逆説的とは思いますが。
劇場とは何か、について、世界と自分をつなぐ行動の一部として考えたり感じたりしていくことが出来ると、でかい仕事をこなしていく原動力みたいなもの、細かい作業をつづけていくための気力のようなもの、が生み出されていく。ここから世界は遠いし広すぎるけど、世界からここへの道のりは決して遠くない。この視座と視点を失ったら駄目。小倉駅で帰りの新幹線を待ちながらそう思いました。
(2004/2/1)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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