Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/3/14
●2004年3月 <その3>
テアトロ・ドゥリビエ●イストー
組織として新人を養成・育成すること、それは社会的団体の責務なのではないかと思いますが、劇場もその運営には必ずこの視点が必要なのではないかと考えます。大劇場ならば尚のこと期待される部分と思います。しかし、地方地域ではそれは必ずしも実現可能な運営方針ではない、という事実もあり、小さなしかし独自な組織と機構・設備を有する劇場がこの点での存在意義が出て来る場合もありそうです。
ということを、前回の劇場で痛切に感じました。今回は、まさにその点をずばりつくような「快」劇場です。南仏、マルセイユの北方、入り江からは奥まった立地になりますが空軍基地や多くの工場などがある地域、イストー市。中心部は湖に面して風光明媚な小街区になっています。旧市街は丘の上の教会をぐるりと巡る迷路のようになっていて、その丁度入り口にこの劇場が立てられています。
750〜800ほどのキャパシティの、つまり中程度の大きさの映画館を想像していただけると雰囲気が伝わるかと思います。正面玄関の見上げに壁一杯の看板でプログラムを紹介しています。毎日営業のカフェがあり、ここが公演情報も取り扱っています。ロビーもホントに映画館みたいで天井が低くキラキラした照明と、ポスターが張ってあって悪くないムードです。パーティールームとギャラリーもあります。
築後20年ほどでしょうか、舞台は7間間口程度奥行きもそれくらい、オケピもあって、タッパが無いのはこうした小屋には共通の仕様、約8mがグリッド高です。
バトンは全て手引き、約20cm間隔に前から奥までぎっしり入っています。中途に一本ロールアップスクリーンがあるのはご愛嬌な感じ。下上にキャットウォークもあるので結構専門的に本格的な作業が出来ちゃったりして。
こんな小屋を是非身の回りに実現したいものだと、半ば憧れ、半ば諦めをもって、数日間を過ごしました。このサイズの小屋ならば初心者でも、綱元の仕組み、照明音響の作業手順、表方と裏方のやりとり、劇場組織の運営などを無理せず把握することが可能でしょう。普段は大道具2名・照明2名・音響1名、技術監督1名、お掃除の小母さん2名、スタッフ食堂の小父さん1名、他、計12名の布陣です。
技術監督も管理職というよりは不足する人手の部分をカバーしたり、技術職間でも相互の協力があり、家族的にやっているみたい。食事の時間は交代で小父さんの手料理を食べ、情報交換もそのときに効率よく行われています。プログラム部門が劇場内には無いので、そこでの意思決定がどんな具合に現場に下りてきているのかは分かりませんでしたが、現場スタッフの機嫌はとても良かったです。
公演当日はきちんとした身なりの穏やかな年頃のお客さんが殆どで、週末の食後をゆったりと楽しむ風情。開演前と終演後は隣のカフェでも簡単な生演奏があり、そうした気分を盛り上げていました。街中の小粋な小劇場という感じでしょうか。
岩村原太としては是非、こういう小屋が日本のどこかに実現していることを、望み
たいものです。どなたかご存知ありませんか?
(2004/3/14)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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