Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/3/15
●2004年3月 <その4>
そして。●オリビエ劇場についての続き。
イストー市の市立劇場、テアトル・ドゥリビエ。心に残った一言は「ここはあなたの家だ」、英語で言ってくれたのは「イッツ、ユァホーム」。恐らくは我々の語感には無いニュアンスで、「あなた達は私達のゲストだから、なんでも言ってくれ」ということ、劇場側として出来ることは必ずやるから、ぜひ気持ち良く仕事をしてほしいという感じ。自分も京都では劇場で受け入れの仕事をしているので、これには。
さすがに参りました。自分の劇場へのゲストにはちょっと言えない気がします。なんでだろう。例えば、自分の家のお客さんに対しても「イッツ、ユァホーム」って言わないと思う。そんな言葉の感覚を持っていないと思う。国民性なのかもしれませんし、習慣とか社会性の差なのかも分かりません。劇場スタッフが若いから、私達の要求が高く実現に多大の努力を必要とすることの反映とも考えられます。
ホスピタリティ、という考え方もあります。つまり、観客と出演者をともに満足させるべく劇場スタッフが機能するべきという価値観なのかもしれない。・・・それってかなり、かなり大変なことのようだけど、幼い頃からそうやって育っていたとすればごく自然な姿勢とも言えるわけで、フランスに住む友人がフランス人男性のことをマザコンだ、と切って捨てたこととも関連があるような。
勝手に想像するに、フランス人家庭はお母さんは強くて綺麗で、お父さんは大きいけど優しくて寡黙、お客さんがあるとお父さんが率先して「イッツ、ユァホーム」って言いながらもてなしをして、事前の準備や後片付けもお父さんの仕事で。普段の生活でもお母さんへのケアをちゃんとして、息子はそんなお父さんを見てお母さんに大事にされつつも、時にはお父さんの代わりをして家の修繕なんかをする。
この劇場は全体にとてもおしゃれで、例えばポスターもオリーブの枝があしらわれたデザインで統一されていたり、楽屋も部屋ごとにラベンダー色やレモン色、などなどで壁が仕上げられていたり、古い建物なんだが手はかけています。
そう言えば、この2月に伊丹のAIホールで仕事をしたときも、不思議な感興を持ったのですがそれは、こういう「アットホーム」的印象だったのかも。
勉強したり研修したりだけでは簡単には身につかない人との関わりの持ち方だとは思うのですが、劇場としての根幹に関わる「もてなし」の感覚。文化施設とかなんとか言う箱物のありよう以前の、人が集まる場所、その場所としての魅力を培っていこうとするスタッフの姿勢。そこにやられますね。「イッツ、ユァホーム」。ぼくにとっては深い一言でした。
(2001/3/15)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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