Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/3/17
●2004年3月 <その5>
セルジー・ポントワーズ●団地の中のセーヌ・ナショネール
パリから約60km、車で1時間ほどの距離、広大な平野に造成された住宅地と工場群、研究所やショッピングセンターが点在するセルジー・ポントワーズ市。中心街から少し外れた団地内、その平和広場(プラス・ド・ラペ)を囲むように、教会とスーパーマーケット・薬局とタバコ屋・保育所、そしてこの劇場が建っていました。ラ・ポストロフィーという愛称がつけられています。
半円筒形のロビーは3階層分の透明ガラスで戸外の風景と一体化し、1階はカフェ風、一見、劇場とは思わない感じ。自動車ディーラーのようなえらくあっけらかんとした風情で、置いてある椅子もパステルカラー、カジュアルな印象が垢抜けています。建物そのものは団地などと同時期のものでしょうか。急坂(約30度)なワンスロープ650席、舞台間口と客席の幅・奥行きがほぼ同じ正方形プロポーション。
客席内装は数年前にすっかり手が入り、明るいブルーのカーペット敷き、座席はクッションを良く効かせたたっぷりしたもの、壁面などはウッディに仕上がっており、インテリアの紹介写真にありそうな最近好みの雰囲気。楽屋も直して広くなり、エレベータなども設備され、隅々の未改装部分を観察しなければ全く新築の劇場と変わりません。現在はここもセーヌ・ナショネールになっています。
客席側の照明ポジションは舞台床からの仰角45度と60度の場所に設定されていてまるで教科書通り、他の設備も全く教科書通りなので、こうした公共会館建築黎明期の、先駆的実験的設計だったのかもしれません。多くのフランス地方劇場のプロトタイプというか、この劇場が拡大されたような印象を与える小屋があちこちにあったことを思い出しました。スタジオ型の、仮設作業をし易くした劇場です。
客席の壁面も天井も、すぐその裏側に作業用通路が何本も通り、照明や音響他の機材を簡単に配置できます。舞台も余計なものは無くて、例えばプロセニアムアーチもポータルも、反響板やスクリーンも常設では無く、全てをあちこちに仕舞えるようにしています。その分仕込み時の人員と時間はかかりますが、そう言う事にしているみたい。その上でさらに基準を満たしセーヌ・ナショネールとして登録する。
これって一時の日本の「道の駅」ブーム、新築のものも、旧施設を国の基準に合わせて改築改装したものもありましたが、あちこちに一斉にオープンしたのに状況が似ているかもしれません。乱暴な比較で済みません。でもそんな感じです。客席規模は大よそ600から700くらい、小さすぎず大きすぎずの客席容積で舞台サイズはその客席とほぼ同じ床面積、そんな劇場が今やフランス中にあるという訳ですね。
今日のお客さんは皆さん車でお越しのようで若い夫婦連れや学生のカップル、落ちついた中高年の女性グループが目立ちました。かなり高知識層な感じ。このムードは茨城県のつくば市で味わったことがあります。劇場のスタッフは中堅どころの年頃から若い見習さんという幅、テクニカルディレクターはベテランで、彼の指示のもと、この劇場なりの仕事の進め方を探っているように思われました。
(2004/3/17)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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