Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/3/28
●2004年3月 <その7>
ソー●住宅街に
パリ中心部から郊外行きの電車に乗って20分、駅から5分ほどの場所に今回の会場があります。かつて2000年の3月に訪れています。劇場そのものは1994年から、周辺3市の協働で維持されているセーヌ・ナショネール。近くには大小の運河やカスケード、シャトーやオランジュリーの建つ壮大なソー庭園(桜の名所ってことで在パリ日本人には有名)があります。
600弱の大劇場とその客席部上層に200程の小劇場、ロビーにはレストランがあり、その地下にジャズ用のフリースペース(ライブハウス様)、そのホワイエ(ピシンと名付けられたさらに小さなイベント用のスペースでもある)からなり、シーズン中はこまめにプログラムをつないで地域の観客に劇場文化を提供している感じです。もちろんパリからのお客さんも少なくありません。
周辺の街区は一戸建てが殆ど、集合住宅も低層で引退後の老夫婦が住んでいるイメージ、置いてある車は国産車(仏車)が7割、あとはドイツ車。全くの住宅街なので昼間も夜も大変静かで、にぎやかな子供も目立たず、いつもとだいぶん勝手が違います。高級劇場と言うか高級地域と言うのか、「コストがかかってますけど大丈夫です・気にしないで下さい・お金はいっぱい有りますから」感が漂うと言うのか。
ワンスロープの毎度おなじみの造り、客席天井もフラットでそこに作業用のキャットウォークがむき出して2本あるのも一緒、舞台スノコには高さがなくて、それでもギャラリーは2層になっていて、舞台床はどこでも開けられ、奈落は倉庫にもなっているしオーケストラピットも仮設できる云々、フランス国内のその時期のこの規模の劇場にみごとに共通する設計になってます。
劇場としての独創性は外観と大小のホールの組合せにあります。が、ホールそのものの仕様が大よそ揃っているというのは決して劇場の個性を妨げることにはならず、かえってどんな公演でも呼びやすいので、プログラムディレクターの腕前が存分に発揮しやすいんだと思いますね。逆に、日本の市民会館なんかが殆ど同じ仕様で建つ理由は柿落としの時の定番演目の上演のため、という笑い話もあります。
毎日何かをやっているわけではないので(公演はほぼ週末のみ)、レストランもチケット受付もごく限られた時間のオープンなのが不便な気もしますが、気になったのはそれくらい。空いているときのリハーサルルームはレジデンスのダンスグループが稽古に使っていて、貸し館じゃない小屋の運営なら、こういうのもありなんだなぁと余りの人出入りの少なさに感嘆しました。
日曜日マチネで3回目の公演を打ち上げました。17時からの開演、さすがに若い観客(学生〜働き始め頃の歳頃くらいでしょうか)が多く反応は抜群でした。終演後しばらく余韻を楽しむように座席にへたり込んだままの人々もいて、つくづく山海塾の楽しまれ方というのは濃いもんなんだなぁと、自分の仕事なのにもかかわらず、びっくりするやら感心するやら。都会人向けのパフォーマンスなのでしょうか。
(2004/3/28)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室