Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/4/1
●2004年4月 <その1>
ディジョン●オーディトリアム
ブルゴーニュ、美食地方の中心都市は、こじんまりとした旧市街を芯にしています。春らしいブティックのウィンドウは復活祭のモティーフで一杯。観光シーズンいよいよの開幕って感じ。「デュオ」とタイトルされ、2つの劇場を使って繰り広げられているこの街のオペラ・ダンスと演劇のシーズンはもうそろそろ佳境を迎え、客席には活気が溢れていました。会場の一つは古い石造りのオペラハウスだそうです。
一方こちらは2000年開館の大変豪華な内装の劇場で、設備も立派です。開館時に一度訪れ今回は2度目、工事の続いていたあちこちは見事に完成して、その威容に圧倒されそう、何より、クラシックコンサートにこそふさわしいマホガニーや革を多用した客席の重厚な雰囲気と、大理石とステンの金属光沢のコントラストが鮮やかなロビーの印象は、どちらも優雅な幾何曲線をモティーフとしていて極端に都会的。
郊外へと続く街の隅のロータリーの中に位置し、地下駐車場と公共スペース(チケットを持たない人でも利用できるギャラリー)を併設しています。ホールは防音と遮光には徹底的に気を使ってあり、その結果、光と建物の周りを走る車の姿がたっぷり目に入る開放的で愉快なロビーから、2枚(場所によっては3枚)のドアを経て入った会場は厳かな静寂と柔らかな暗さに覆われ、空気まで高級な具合になっています。
スタッフは(照明さんも)前と同じ人で、助かりました。がらんとしていた彼の仕事部屋には照明卓などが幾つも設置され、それでもまだゆとりのある場所にドラムセットが置かれ、普段の仕事ぶりが目に浮かびます。楽屋も舞台裏もそれぞれに充実して、良い感じの事業所になっていました。そこで働く人たちにのびのびと個性を発揮させるのが、この国一流の管理術みたいなんですね。
今シーズンのフランス各劇場では、照明スタッフに必ず1名の若者が入っていました。偶然かもしれませんがほぼ中習い程度のキャリアで、数名のベテランに囲まれるように指導を受けていることがままありました。このディジョンの大空間でも同じ景色を見ます。特に、照明ではフォーカシング作業に習熟することを求められますが、キャリアの浅い彼らを指導する役割なのは、ぼくも同じです。
ゆとりの有無に関わらず、キャリアに関わらず、交代で作業にあたるのはそうした彼らにとって大切な時間、私達にとってはヴォランタリーな時間となります。ここでいらいらするのは分かってない感じを先方に与えてしまうので、ひたすら忍耐の人となって逐一、作業内容を言葉で説明しつづける努力を惜しめません。おかげさまでだいぶんフランス語の練習をさせてもらいました。感謝しなきゃ。
決して世界標準ではない山海塾の照明作業が、一つの事例として提示され、そうしたやり方が存在することを認識し(ぼくもフランスでの仕事の進め方を新たに認識させられ)、急ぐばかりでなく丁寧に現場を立ち上げることの重要性を了解し合い、ライティングデザイナーとテクニシャンの役割を超えたいわば「ライティシャン」として相互に尊敬の空気が静かに満ちるその「時」は、いつ味わっても感動的です。
その感動があるからこんなに長くこの団体と続けてこられたのかもしれないな、と少々メランコリックに、自分の育ってきた環境を思い返したりしたことでした。
(2004/4/1)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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