Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/4/16
●2004年4月 <その2>
テル・アヴィヴ大学●スモラーズ・オーディトリウム
オーディトリウムの名に偽りなく、見事に客席ばかりの会場です。テルアヴィヴの街を見下ろす小高い丘に公園と混在するように大学がありますが、その敷地の境界線上に昨年竣工した建物です。ピタパンを二つに畳んだようなフォルムをしていて、中の具にあたる部分が客席と舞台、外側はステンレスの三角形でピカピカ、ガラス張りのロビーがついてキャパ1700、ワンスロープの1階席と張り出しの2階席。
大学の感じはUCLAとかアリゾナ大学みたい、ただ空がひたすらに広く学生がまばらなのが気になります。テロの危険については拍子抜けするほどに忘却されていて(統計上、交通事故のほうが遭遇度は高いとか)、場所々々にカバンの中を改める係員がいる程度、あまり沢山の人が並んでいるような場所は(狙われるから)危ないとか、三人で出歩けば一人が襲われても一人が応戦して一人は逃げ切れるとか。
街の具合で言うとつい先ごろ訪れた沖縄市みたい、ただ、内海(地中海のことですけど)に面して穏やかな気候なんですね、台風とかはないんです。なんと言うか、日本の東京を世界の名古屋と言った人がいますが(名古屋の方がどう思われるか分かりませんが、すみません)、ここをヨーロッパの沖縄と言うか中東のアリゾナと言うか。いずれにせよ「俺たちゃ異文化に接しているぞ・感」は大層強烈なもんです。
昨年建ったばかりとあって音響も照明も一切の設備は無く、舞台の道具にしても楽屋の備品にしても、全てを持ちこまないと何も始まりませんでした。実はまだあちこちを工事中で、現地スタッフの一人によると「建て終わりが作り始めで、10年後にはここが何のために建てられたかが分かるようになる」そうです。現状ではコンサートホールとも講演会場とも何とも言いがたい。ともかくはここで踊ります。
泣き竜の小屋と命名したいほど変な反射音が一杯あります。その、ステンレスのピタパンの内壁は、磨き上げた木材を使って美しい球面を形作ってあるんですけど、それが災いしたんでしょう。舞台奥の壁際での小声は客席奥の壁際でまるで耳元でささやかれたように聞こえます。客席の真中にいるとあちこちからの音が全て集まって聞こえ(松本清張原作・砂の器・音響的拷問を参照)、ちょっと耳の中がぐるぐる。
手を叩く、足を踏み鳴らす、物を落とす、と、会場中にキュンキュンキュンと残響が駆け巡ります。袖幕も文字幕も無い単一空間なので客席観は宗教的に統合されたような格別の印象を与えるだけに、確かに、10年も経たないとどうやって使っていくかは決まらないのだろうと思わせます。私たちのカンパニーが竣工後2度目の公演、劇場には職員は居ず、管理をする小父さんが一人、鍵の開閉を担当しています。
テクニカルクルーはバッシェバ・カンパニー付きの面々。日本にも何度か出掛けたことがあるんだそうです。勢いがあって、適度に雑で、時間の使い方はマイペースで、仕事は出来たり出来なかったりしたりしなかったりで、それがまた異国情緒をかきたてるんですね、知らない国に一人居る興奮、みたいなものを作業中何度も味わいました。ヘブライ語は聞いても全く分からんのです。
ともかくは昨晩、無事に初日を終えました。
(2004/4/16)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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