Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/4/27
●2004年4月 <その4>
トノン●レマン湖のほとりで
フランスのアルプス地方、レマン湖の南岸に位置するトノン市。その中心街(とは言っても、レストランとホテル、ブティックやスーパーマーケットが並び、駅前の広場があって、あとは公園と駐車場、ときどき学校)の中にその名も「メゾン・デ・ザール」=芸術の家=がちんまりとありました。ガラス張りの公民館のような低層の建物です。ロビーにサイバーエスパス(コンピュータースペース)があります。
ちょうどレマン湖を見下ろし、対岸のスイスの街々が霞ごしに見渡せる、芝生と花壇の公園をその前庭としています。時はまさに春、すがすがしい空気は柔らかく湿り気を帯び、空ほど高く瑞々しい色は湖面に映え、振り向くとアルプスなどの連峰が穏やかに雲を頂く。数日前まで滞在していたイスラエルからの余りの環境の変化に、国際ドサ廻りの妙味を実に鮮やかに体感するわけです。
劇場は少し変わっています。六角形の客席と一辺を接する正方形のステージ、そのレイアウトの外周を囲むようにロビーや楽屋が配置されていて、全体に小さく無駄なスペースは無く、まるで映画館を改装したみたい。何度か手が入っているようで、もともとは簡単なコンサート用の建物だったものに照明音響設備を加え、舞台機構を装備、いよいよ楽屋もきれいに内装が終わりました、というところでしょうか。
客席天井は低く、三角形の反響板を組み合わせたパターンで構成されています。場内には湾曲した壁面で区画がされ、それが立面の反響板も兼ね、プロセニアムは無いものの飾りのような反響板が舞台間口の両サイドと天井部にあって、ここまでがオリジナルと推察されます。その天井にいきなり鉄骨製のキャットウォークがぶら下がっているのが改造の第1段かと。従って客席の見上げはかなり唐突。
間口天井部の反響板は途中で断ち切れ、本来のグリッド高の半分ほどのタッパ(7m弱)に電動バトンを設備。舞台奥行の3分の1が低天井になっているので妙な具合のプロセニアムアーチと化しています。両サイドにはギャラリーのような造りになった倉庫があって、やっぱり不思議な開口部になっています。何となく無理やり私たちの装置を飾りましたが、劇場のあり方とはミスマッチな感じになっちゃいます。
ホテルまでの行き来は15分の道のり、それは素敵な散歩道です。きっとスタッフの人たちも毎朝毎晩気持ち良く通勤しているものと思われ、窮屈なスケジュールなのに色々と便宜を図ってくれています。私たちが片言なりにフランス語を使うのに驚き、日本の語学教育事情について質問されたのはこっちがびっくり。始めてのフランス公演なんだろ?との問いかけに絶句。ここ15年間は毎年廻ってるのに・・・。
世界は広いね、と思うより先に例えばフランス、もちろん日本でも、行ったことのない場所は余程数限りなくあるわけで、そんな国々の津々浦々に、小さくともしっかりした劇場が建っていて、それぞれスタッフが待っている事実。点と点を結びながら旅を続けているわけですが、本当にまったく、良く続きます。明日からは怒涛のスイスツアー、一国を三週間かけて一往復半します。ちょっと楽しみ。
(2004/4/27)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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