Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/4/30

万国文化中心報告 vol.113

●2004年4月  <その5>

バーゼル●スイス初日

 トノンを終え、遊覧船でレマン湖を横断して、スイスに入りました。季節がら山の表情は柔らかく見え、桜やモクレンは満開、菜の花もタンポポも溢れるほど、街の人々も優しそうに感じます。ローザンヌからはバスで2時間半、ドイツ・フランス・スイス三国国境の街、バーゼルです。街の真中をライン川が流れます。

 世界には本当に色々な小屋があるんですね。こちらは旧軍施設の跡利用、兵舎を小学校と中・高校として再生、幼稚園と学童保育を併設、レストラン・小劇場・ライブハウス・メインホール・ミニ映画館、それと、市の博物館施設も同一敷地にあります。芝生の遊び場とアスファルトの校庭を囲んでコの字型に建物が並んでいます。

 メインホールは元々馬事訓練場だった建物で、およそ京大西部講堂ほどのサイズ、床をフローリングにして屋根を鉄骨で補強、そこにアルミトラスを吊って劇場の体裁を整えています。地階は元々倉庫だったのかもわかりませんが石積基礎を大胆にカットしてコンクリートの箱を沈め、楽屋やトイレ、クロークなどの施設としています。
地上部は旧来の雰囲気、地下は大層現代的なしつらえになっています。

 内装には全く手がかかっておらず、窓を電動パネルで閉じるのが不思議なくらいのレトロムード。間口は12m強、梁までは7mという結構な大空間なのに、適度に埃をかぶった白い壁面の色の具合か、窓からの外光で作業中は明るいせいか、威圧感はないんです。客席はイントレを使った仮設ひな壇にプラスティックのスタッキングチェアを並べた自由席。ともかく暇があれば誰かが掃除をしていて清潔です。

 映画館は工事途中のスペースにスクリーンと椅子を設置しただけのもの、ライブハウスはメインホールのロビーとしても使われていて、ミラーボールなどが吊られていたりします。元々が馬小屋ですから屋根裏部分に人間のための部屋があるようで、休憩室やちょっとした事務スペースはそこに置かれています。中庭を挟んで教会などもあり、全体としては市民の憩いの場、文化スペースといったニュアンスですね。

 長年かけて軍縮を進めているスイスでは、こうしたパブリックスペースのあり様も珍しくはないということですが、悪場所的な劇場と対極的な幼稚園までもが併設されている例というのはさすがに珍しいみたい。仕込中も午後になると、三輪車をこいで小さな女の子がいつものご挨拶。そのまま舞台にまで上がってきてスタッフの皆さんと「こんにちは」だって。校庭では元気にサッカーやバスケ、なんて健康的。

 今回のスイスツアーは22都市を舞台に展開している「STEPS#9」国際ダンスフェスティバルの一環です。私たち以外に9ダンスカンパニーが同時にツアーを展開、提携劇場をハシゴしながら約4週間の会期を勤めます。私たちは7都市、ほかにNDTなどの有名どころも混じり、この劇場は3カンパニーを受け入れています。普段のプログラムは資料がなくわかりませんが、こうしたことには慣れている風。

 スタッフの数は少ない(音響1・照明2・舞台3、監督1)のに、皆なんでもやって、また良く出来るので、ヨーロッパなんだなぁ。仕事に誇りを持っているし、現場に自信を持っているし、人間として自由だし。こういう働き方をしなきゃ。

 この会場の名前は「Kaserne Basel」、市電に同じ名の停留所があります。お近くにお寄りの節は是非お訪ね下さい。

(2004/4/30)


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