Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/5/12
●2004年5月 <その6>
ヴィンタートゥール●チューリッヒ近郊の文教都市
お昼頃にジュネーブを発って四時間のバス移動、バーゼル公演の頃から2週間ほど、すっかり初夏の風情。草を食む牛や羊を眺めながらヴィンタートゥールに到着しました。山天気特有の突然の雷雨や呆れるほどの好天を繰り返す日々にもすっかり慣れ、時折遠くに姿をあらわす雪山と高速道路沿いの湖水を地図で確認することにも飽きたのは、贅沢といえば贅沢な修学旅行的感覚と言うか何と言うか。
しかし、この国の多様性たるや驚きの連続です。そんな小屋々々を巡ってコーディネイトを果たすこのフェスティバルもつくづく立派なもんです。7会場連続公演の6会場目、こんどはドイツ風のプロセニアムシアター、常設照明器具の豊かなこと、まさにオペラハウス並みの構成で、今日は朝からの公演準備となりましたが、一日が終わる頃にはすっかりいつものペースに追いついてしまいました。
個性的な劇場です。客席がシンメトリーではなく、上手側の急な階段席で1階席と2階席がつながっています。下手側はゆったりとしたスロープ席、合計で800超のキャパ、立見席もあって、結構な大劇場です。レストランやギャラリーも併設され、旧市街・公園と続く駅からのプロムナードの延長の、文化中心的な市立施設との位置付けと見ました。外観は亜鉛板を張り詰めてハードな印象なのに、です。
駅前の旧市街は教会を芯にいびつな長方形になっています。平日の昼間はお歳よりや赤ちゃんを連れた母親で賑やかなショッピング街です。公園は折からの日和に日光浴を楽しむ若者たちで一杯、観光客はきっと殆ど来ないスイス人ばかりの楽園のような町ですね。近くには軍施設もあるようで、夕方になると制服を着た陽気な兵隊さんたちでカフェは一杯になります。これまでの公演地とは違う人々の姿です。
劇場はテアター・アン・スタディガルテン、ドイツ語圏なのでかちっとした作業進行、小人数ですが統率が行き届き、見事な仕事ぶりで助かりました。慌しいスケジュールが続いたのでこうしたスタッフ達と仕込みをしていると本当に気が楽です。
舞台も微妙にシンメトリーではないので、こちらが戸惑ったり手間取ったりしていてもじっくりと付き合ってくれ、サポートも完璧、ありがたいことです。
設備や備品から察するに、60年代終わりか70年代の建築。例えばアルミダイキャスト製の椅子の支柱や、円弧を多用した細部のデザイン、コンクリート打ち放しに直接電球がねじ込まれているような照明、透明アクリルの窓など、サンダーバードの基地と見違わんばかり。ここまで建築者の美意識が徹底すると左右対象ではないことなど些細なことでしかありません。何ともドイツっぽい感じでエキゾティック。
照明機材も驚くほど古いものが丁寧にメンテをされて、感動の再会を果たした伝説の灯具もあり、いい具合です。もちろんスタッフもそれ相応にオールド。ほぼ毎日の公演(音楽ものあり、演劇あり、ダンスも豊富)を複雑なシフトを組んでこなしている様子。今回の私達の公演には舞台部四名、照明部三名、音響部ニ名。他に例によって楽屋関係の小母さんと小父さんが数名づつ。安心できる劇場です。
(2004/5/12)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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