Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/5/14
●2004年5月 <その7>
町全体が文化中心●ジューク
ヴィンタートゥールから通勤電車に乗ってチューリッヒ、乗り換えて郊外電車でジュークへ。ごく最近建て変えられ再開発されたと覚しき駅舎の周囲は味ない感じで得心しなかったものの、ホテルと劇場のある旧市街を散歩して考えが変わりました。南北に長いジューク湖の北西岸の町、城壁が残り、もともとの古い町が徐々に拡大していった様子がそのまま、ごく狭い200m四方ほどのエリアで観察できます。
町の南のはずれ、すぐ隣のもっとも湖側の14世紀の街並みは高い塔と肩を寄せて立ちあがった古い建物でカチカチに固まっています。魚料理を食べさせる店など高級店が多く観光中心的な街区。北側には広場があって、珍しい鳥を集めた鳥舎やレストラン、噴水もありました。駅からのアクセスも良い場所で、週末には市場も立ち、家族連れでにぎわいます。問題の旧市街はこのさらに山側に展開しています。
まるで迷路のように何度も何度も歩く気になる斜面の街並みは、お城・教会・広場が中心に置かれ、それぞれが博物館や美術館・学校などに再利用されています。その何とも入り組んだ配置のされ方と高低差のトリッキーな具合が楽しく、所々にあるモニュメントも雰囲気を損なわず、カジュアルなエリアを演出しています。外城壁は所々の塔のみ残り、それらは実にムーミンハウスそのままのプロポーション。
夕方以降の自動車の類の通行が制限されているのと、実際の住民が居ない様子(つまり夜間人口が極端に少ない感じ)とで、観光地区にありがちな生活臭はまったく見られません。不便とも不自然とも思われるこうした景観・環境の保存の仕方は恐らく、この国ならではなのではないかと思います。周辺地域と隔絶されて居る訳ではないのに、一歩足を踏み入れると別世界を味合わう思いがしました。
ホテルは旧市街のちょうど中央に、劇場は旧市街の南端にあり、徒歩三分ほど。バスの走る自動車道沿いに通勤しますが、通りすぎる自家用車は恐ろしいほどに高級車しかもスポーツタイプのオープンカーが主。保養地と言うよりリゾート、しかもセカンドハウス持ちのためのスッペシャルな町、という疑いが頭に浮かびます。聞けばヨーロッパ一の夕陽スポットなんだ(と劇場スタッフに自慢された)とか。
確かにスイスは場所には高級保養地的国柄でもあるし、静かな湖面に船を浮かべて楽しむ暮らしも、町に近い土地よりは山の中の方がより目的には叶うわけで、山中湖あるいは軽井沢みたいな、そういった地域なんだろうと思います。お洒落なものを扱う雑貨店のオーナーが、NDTを引退したダンサーだったり、小屋付きのテクニカルディレクターがアメリカ帰りだったりするのも、そういうことなんでしょうか。
ということで駅から歩いて15分で市街の外に出てしまうジュークの、実際のリゾートは駅の反対側の湖の北岸なのだそうで、そちらにはホテル始め大衆的な施設もありそう。私達の会場テアターカジノは、こちら側唯一の集会施設、展示室とレストランを有したちょっとしたカルチャースポットという訳です。夜遅くまで楽しそうな音楽が絶えません。古い建物に新館を付属させた造りになっています。
(2005/5/14)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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