Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/5/15

万国文化中心報告 vol.121

●2004年5月  <その8>

テアター・カジノ・ジューク●元の建物は歓楽施設

  夕陽を見に来る人が多いこのエリアは、劇場も西側を湖に開放した造り。元々の建物は豪華なボールルームを有したカジノ・テアターと言うことで、現在はレストラン、パーティー会場として営業を続けています。素っ晴らしいレイクヴューで、お料理も最高、結婚式の披露宴や大事なご会食に是非お使い下さい、的な私設施設です。隣敷地の湖に向かった斜面を利用して、劇場が増築されています。

 ロビーはもちろん全面ガラス張りで、レストラン以上に美しく湖面を見渡せます。例えば株主総会や学会などにも向く感じの、600から700程度のキャパ。舞台間口は狭く(7間弱)、大規模な作品の公演は困難でしょうがそれでも設備備品は見事なもので、私達の公演に際しては全く不安はありません。貸し小屋運営なので、スケジュールはそんなに詰まっていないみたい。スタッフ数も少なめです。

 客席椅子が明るいオレンジ、壁は渋めのワインレッド、天井は白、床は濃栗色のフローリング、家庭的なインテリアで落ちついた印象はありますが、必ずしも舞台に集中できる色合いではないですね。それでも勾配が程よく、なんとなく沖縄の「あしびなー」を思い出しました。感激することを心待ちに、楽しくさせてくれる、そんな劇場なんです。人間的なサイズって言うことなのかもしれないですね。

 楽屋にはこれまでのゲストカンパニーのポスターが順次貼り重ねられて、古いものは1982年、もちろんステップスのポスターも。ミグノというスパーマーケットチェーンがスポンサーのこのフェスティバルは、こうした特殊な施設劇場をも舞台としてかれこれ18年、続いているんです。どのカンパニーも一回だけ、それぞれの劇場の要望に応じてオルガナイズされると言うことで、ここではアジアものがメイン。

 ドイツにほど近く、またチューリッヒからも往復可能な観光地としては、是非アジアものをプログラムに入れていきたいと考えているんだそうで、今回の山海塾も、真っ先に受け入れを表明したそうな。単一劇場では招聘が困難な遠来からのカンパニーも、いくつかの劇場で予算を分担して製作することで、公演が実現する、そのありがたさについて、劇場スタッフからよくよく話を聴かされました。

 始めてのスイスが最後のスイスになることも多いこうした遠来のカンパニーとの仕事を、現場のスタッフたちは本当に楽しんでいるようです。ここは見事なほどのピラミッド型組織で、一人のテクニカルディレクターが照明から大道具まで全てを管理し作業を進めていきます。隅々まで掃除が行き届き、細々したことまで目配りがされている、理想的な小劇場でした。照明1名音響1名舞台2名+増員2名の布陣。

 彼らはこのカジノ全体の技術職でもあって、レストランのことや、付属するレイクハウス(湖水浴のお客さんのための施設)の面倒も見ています。折からの夏日に湖岸は水浴びをする人で一杯で、劇場シーズンの終わりが近いことを思い起こさせます。
長い冬から一転して短い夏へ。スイスの自然は美しいばかりではありません。しかし、今こそがベストシーズン、素敵なツアーが過ごせました。

(2004/5/15)


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