Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/5/20

万国文化中心報告 vol.123

●2004年5月  <その10>

レイキャビク続き●アイスランドその2

 寒い国な訳で、建物内の暖気や物音は、ともかく洩れない造りになっています。そのせいもあって国立劇場間近のショッピングストリートは人通りは賑やかでもごく稀な喧騒といえば、時折行き過ぎるカーステレオの曲ぐらい。高層ビルは集合住宅か外資系のホテルばかりで、それも町外れにあるので、繁華街のイメージはアメリカの田舎町のダウンストリートに似ています。現在、冬物衣料のバーゲン中。

 窓からはレイキャビク湾を眺めることができます。ホテルでは日の出直後の朝日が正面から射し込んできます。夕陽は劇場にて。ホテルと同じ向きの窓なのに左手から茜色の光が入ってきます。夏至が近く、太陽は殆ど一日中地平線から出ている状態で、約300度の移動をしている事になるわけ。空は太陽高度に応じて柔らかい桃色から硬質の碧色となり再び柔らかく橙色を帯びて、それからグレーとなります。

 いつまでも明るい空は時間感覚を失わせますが、私たちにとっては何とも不思議なことでも、現地の人にとっては要は夏が来たぞ、というサインなので皆明るく楽しそうな様子をしています。それでもまだ雪が降ったりしていて、スパイクタイヤの転がる音も良く聞こえてきます。公園には雁や鴨が帰ってきて営巣しています。そう言えば赤ちゃんを乗っけた乳母車は地面から優に80cmは浮いているのが定番。

 雪深い土地柄だからなのか、日本や欧米で見るタイプとは全く違って、お母さんのお腹の高さで赤ちゃんが運ばれていくのです。散歩にはどうだかってな具合の街並みと天候でも、世界のお母さんたちは果敢に子供を連れて出歩くんです。すぐそこが港で市役所や大統領官邸もあります。大人にとって興味深い風景ばかりではなく、鴨や白鳥の遊ぶ池はパンくずをまく子供とおこぼれを狙う鳩の天国になってます。

 港から真直ぐ丘を登ればそこが劇場からも良く見える・ロケット様デザインで印象的な大教会、その通りを境に港湾側が国立劇場のある商業・文化地域、反対側が居住・文教地区ということですね。劇場の周りは駐車場ばかりです。国立劇場の裏手に別棟で国立小劇場があり、通りを隔てて斜向かいにはオペラが有ります。20数万人の人口でこれらを維持することのすごさ、ちょっと言葉に詰まります。

 照明や舞台技術のことは国内では学ぶ場所がなく、デンマークかUKに留学する必要があるそう。劇場の舞台以外は改装されていて、例えば照明などは最新鋭の設備に入れ替わっています。ベルギー・ドイツなどからの機材が豊富なのはデンマーク経由の技術だからでしょう(推測ですけど)。思えば劇場内装材もすべて輸入品ですね。大きな木の育たない土地ですから、ウッドパネルは高級品ですよ。

 管理職クラスのスタッフさんたちは初日は盛装して観劇し、終演後シャンパンで乾杯。春のイチゴをつまみながら、互いの仕事振りを誉めあったりしてました。こんなところは古いヨーロッパあるいはアメリカの中西部風かもしれません。ひたすらに合理性を追求するのではない、劇場環境維持・観劇文化とでも言えるそれは、日本でも歌舞伎界などにあるもののような気がしました。

(2004/5/20)


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