Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/5/29
●2004年5月 <その13>
CCB●セントロ・カルチュラル・デ・ベレム
10年前のキャピタルオブカルチャー(ヨーロッパ文化首都)の際に開館し、その柿落としで公演して以来の訪問です。さすがに年月経て使いこまれ、スタッフも小屋付きさんと増員さんとが仲良くやっている様子。リスボンの中心部からは車で10分ほどですが、周辺は高級住宅や博物館、公園、ヨットハーバーなど、落ちついた感じのところ。同じ建物の中に美術館と音楽ホールなども入った大施設です。
組織的に特殊なので戸惑いましたが、技術トップは技術監督で予算のことなどの権限も持っているようです、ただし、照明と舞台は同一チームで、そのチーフは管理職として一名のみ、あとの10名近くはその場に応じて照明作業をしたり道具作業をしたり。こちらサイドでも必死に監督していないと、いつまでもおしゃべりが続いて仕事が進みません。ラテン系特有の「いつかは終わって帰れるさ」モード。
とはいってもこっちの都合もあるので、一人でも良いので仕事に付き合ってくれるスタッフをその度に捉まえて、なんとか仕込み初日が終わったところです。スペイン・イタリアに比べればマイペース度が低いのが取り柄のポルトガル人は、10年たってもやっぱりポルトガル人だった、という印象ですね。大航海時代にはるばる大洋を横断した精神は、こうした形で現代に引き継がれているというわけ。
日本でもこんな思いをすることがないわけではないので、決して一緒に戦争してはいけない気がします。声の大きい人に引きずられて、トンでもないことになっても全く平気で、後から思い直して別の声の大きい人について行き直す、傍から見ているとかなり怖い作業進行です。事故がなくて良かったです。こんな大劇場なので、さぞかし通常業務は大変かと思えば全然そんなこともなさそうで、可笑しいです。
1階のワンスロープ、2・3階はボックスとバルコニー、全体として立方体に近い直方体のオーディトリウム。スロープ席はまだしもボックス席からは45度の視界しか取れず、バルコニーはかなり遠く、劇場としてよりはオペラやコンサート・会議・講演に向くタイプですね。この大施設が総体として国際会議場的ムードを持っているので、そういう記念碑的な建造物(地方自治体立の芸術劇場みたいな)なのかも。
時代の趨勢とはいえ、現代的なコンプレックス式の劇場施設はなんとも落ちつかないもので、ここ数ヶ月に巡ってきた小規模なんだけれども充実した単館式の劇場の方が面白いです。舞台+客席の個性が出やすく、それに対応したスタッフの仕事振りも期待でき、結果として三方(観客・劇場・劇団)の満足がよい形ではっきり見えてくる。集客で考えれば2000人規模の会場も必要ですが、それは特殊用途だなぁ。
国際的に見て1800席超を持つ行き届いたスタッフを充実させている単館劇場は珍しく、私たち(現在の山海塾)にとって、気持ちよく思う存分仕事が出来る現場は本当に得がたいものになっています。劇場の人的組織の作り方に関して、複合施設の場合のよき例を見つけたいものです。というより、劇場複合施設の本質的な意図についての疑いを明確に持っていないと、規模に騙されて嫌な思いをしますね。
(2004/5/29)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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