Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》04/9/30
●2004年9月 <その1>
ダムダ●禁酒と上ノ町、二つの会館
今年立ち上がったばかりの新しいダンススポットです。岡山城すぐの「城下」交差点を挟んで、一つはシンフォニーホールを見上げる様に佇む「禁酒会館」、そしてオリエント美術館のとなりの甚九郎神社参道に建つ「上ノ町会館」。本拠は上ノ町会館の3階事務所、その2階がバーとスペース。禁酒会館は現役の禁酒運動の牙城であって、その漆喰天井の元食堂と集会室をダンス会場として使います。
9月の連休に4日間連続のダンス公演。仕込み期間中の技術サポートを頼まれて入りましたが、いやはや、びっくり魅力的なスペースです。オープニングに丹野健一氏のパフォーマンスを組み、廃ビル同然の建物の内壁破壊が柿落とし。その後2プログラムあって、今回は床について考える公演集でしたか。ハツリ仕上げもない打ち放しのコンクリ床に簡単な木床を載せた公演と、その剥き出し床の公演がありました。
代表の一人小石原剛さんは、土舞台や水舞台、その他様々な素材床の可能性を呻吟されていたのが印象的です。天井も型枠の跡も生々しい荒っぽいコンクリートで、建物東西全長にある窓が実に生き生きした豊かな光を取りこみ、ありがちなコンテンポラリー空間からは明らかに決別した雰囲気。制作センスとは違う、言うなれば美術家センス一杯のスペースが、これから序々に姿を現すことと思われます。
スペースの上階にはビルの店子さんが幾つか。週末のみとかいろいろ個性的に営業中です。屋上もあって初夏にはビヤガーデンも出たとか。同階のバーは仕込み中のくつろぎの時間を提供してくださって、ありがたく、歩いて5分の禁酒会館はカメラマンのコーヒー屋さんや雑貨屋・骨董屋さんがテナントなので、レトロめぐりをしている様です。忙しくて濃厚な4日間を過ごしました。
禁酒会館は国の文化財に指定されている建物で、戦災を辛くも免れ、同じ小石原さんらの尽力で現在的な意味を付与され復活。裏庭があるのですが、その背景の石垣は国宝指定のお城のものと聞きます。天井の高い1階の元食堂は、通常は喫茶室として一般に利用されていて、裏庭に通じる大きなガラス窓(扉?)が開放的。会館の表を通る路面電車の響きと対称的な今っぽさが売りかなぁ。
そしてその2階の集会室は今も現役で、週日決まった枠に定期の利用があり、その合間を縫っての公演準備。規模は違っても欧州のレパートリー劇場並みに技術監督力が要求される難しい会場でしたね。窓越しに見える薄紫色はシンフォニーホールの明かり、時折ガタゴトと蛍光灯を点けた電車が行き来します。建物が夢を見ているような光の移り変わりが、それはそれはきれいで、良かったです。
機能が分散するアーツセンターという、不思議なスポットになっている気がします。宿舎や食堂もごく近所にあって、仕事をしながら一日を過ごすと、この城下交差点を何度往復することになるのか。町で仕事をする感じ、この町一帯を拠点とする気分が、この春過ごしていたスイスの幾つかの町を思い出させて、知らなかった日本の一つの町とアーツの形を発見しました。
(2004/9/30)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室