Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》05/12/28
●2005年12月 <その2>
パリ市立劇場●雑感
今年のパリの、クリスマスイルミネーションは華やかでした。発光ダイオード(LED)の小さく明るいきらめきが街のそこここを飾り、従来の電球を使った暖かなタイプとの相乗効果で、しっとり落ちついた風情も失われず、良いムードです。久しく忘れていた「エレガント」という言葉を思い出しました。
今回のパリ市立劇場訪問は、旧作再演準備のため。舞台装置も照明デザインも10月びわ湖ホールでの上演そのままを狙います。かつて山海塾の、フランスにおけるデヴュー作、この劇場での上演は3度目となります。初回は約25年前、その当時からの劇場スタッフは昔のことを覚えていて、懐かしそうです。
この劇場が25年(もしくはそれ以上)の間営々と、パリと、そして世界における舞踊文化の一翼を担ってきたことに思い至ります。なにしろ上演プログラムの殆どがコンテンポラリーダンス、そして民族音楽。ここに勤め続けている技術職の殆どのメンバーは、まさにそれらの専門家なわけです。
管理職も現場の職員も、一様に歳を重ねて円熟味を増す。円熟という言葉では言い尽くせないほどの経験値と確信が彼らにはあって、それがこの劇場で仕事をする喜びの源泉なのですが、またぜひ訪れたいと思わせる理由のひとつは、ここがまたある種の教育の現場であるからでしょう。
フランスの労働組合は所属する若者に対して、とても熱心に教育の場を提供します(もちろん、この手の公式発言は立場の変わる者からすれば真逆の内容ともなり得る解釈の幅がつき物ですが)。この劇場でも研修期間の終わった若者たちは次々に入れ替わります。見ていると20代のうちは、特に、劇場に定着しないみたい。
照明を例に取ると、およそ2名の20代の研修中の技術者、2名が30代の働き盛り、2名が40代の分別盛り、50代の管理者が2名いて、3名から8名でローテーションを組んで現場を回します。管理者以外はいずれ別の劇場へ異動することもあり、僕の知っているこの14年の間で、ほぼ2回転したというところです。
とはいえ、この劇場もそろそろ管理体制の代替わりが気になる頃で、芸術監督もしくはプログラムディレクターの交代があれば、まずは技術サイドの管理職も交代するだろうことは容易に想像がつきます。となると20世紀末に隆盛したコンテンポラリーダンス専門の技術家たちは、次はどこかの劇場の技術監督に就任するんですね。
我々山海塾などはまさに市立劇場の申し子のような立場でこの数年の公演活動を続けていますが、少しづつ観客も世代交代しています。いまだに明快なコストコンテンポラリーな領域の登場を知らない自分も、前世紀の技術者です。今世紀の新たな出発を期すべき時のように感じます。
漸くとそんな気分になった、2005年の暮れ、パリは珍しく数日間雪に覆われました。
(2005/12/28)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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