Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》05/02/09

万国文化中心報告 vol.139

●2005年2月  <その1>

仕事始めは●アンサンブルゾネ

 例年この時期に東京と神戸で上演を持つ機会が増えました。アンサンブルゾネ、今回は広々と明るい舞台装置での2場所公演、両国シアターXと神戸アートヴィレッジセンターです。共にこのグループではお馴染みの会場ですが、舞台装置が変わると全く印象が違うので、照明家としては良い勉強になります。

 劇場天井までの高さをタッパと言って、普通、照明には高ければ高いほど良い、などと言われますが、今度ばかりはそれを実感しました。タッパがあるというのは、照明灯具の数が少なくて済むということなんです。ちなみに、両劇場のタッパの差は2尺ほど。低かったKAVCでは、都合3灯の追加が発生しました。

 今回は少ない灯具でシンプルな光場を造ることがテーマだったので、これだけの変更でもかなり気分は重く、デザインと視覚の両立を図る際の面倒くささをじっくり考える必要がありました。出来あがった空間で評価すべきなのか、灯具のレイアウトまでをデザインとしてその全体感を評価の対象とするのか。

 勿論大切なのはダンスとその時空間ですが。

 結論としては詰まるところ、同じ演目とは言え会場が変わる以上、厳密には同じデザインでは上演出来ない、との認識ですね。ダンスを尊重するならばデザインの変更は余儀なくされるべきであって、その意味で、舞台美術装置も会場毎のアレンジが必須という訳です。今回照明と美術がいつもほどには密接に関係していなかった、という反省もありますが、美術と照明の関わりも微妙なもんです。

 美術を装置に拡大して考えた場合、劇場装置には客席と舞台の接し方のデザインが含まれると思っているのですが、一方で、照明を美術として捉える節には、道具空間の埋め方ばかりでなく、照明装置としての光場のあり方・佇まいを考察しなければなりませんね。照明家よりは演出家の眼を、養わなければなりますまい。

 KAVCも10周年を迎えるそうです。気がつけば、阪神間の若手劇団にとってはなくてはならない劇場となり、それでも地域経済の地盤沈下に引きずられそうなロビーの空気感など痛々しい印象も時に持ちますが、いまこそ、これから、本当に劇場を必要としている人たちに開放的な、実験の出来る場所でありつづけて欲しいと願います。ゆとりのある設備、大き過ぎない舞台、柔軟な運営管理、それが宝です。

 今日は旧暦の正月一日とか。遅れ馳せながら、今年もどうぞよろしく、お願いいたします。

(2005/2/9)


岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室