Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》06/10/19

万国文化中心報告 vol.188

●2006年10月  <その6>

怒涛の二日間●トロント

 ようやく、アメリカにたどり着いた感じがします。しばらく振りのユニオンハウスです。会場はハミングバードセンター、1968年に旧名称オキーフセンターとしてのオープン、現在はコマーシャル・プログラムにもレンタルしているトロント市立のアーツセンターです。まるでスタジアムのような2階席まで合わせるとキャパ3000、我々の公演は1スロープ(!)の1階席のみ、それで2000の動員。

 同じカナダでも、ここは鮮やかな商業地で劇場も多く、もちろん英語圏。ダウンタウンは名古屋か大阪かというほどに高層ビルが密集しています。モントリオールも都会だったんですけど寒くて、お店は地下街かビル内でしたね。この街では例えば街路に面してブティックのウィンドゥ・ディスプレイがキラキラしてたり、ポルノショップとオフィスビルやレストランが軒を並べてたり、というのが繁華な気分です。

 ハミングバードでは独自のプログラムを「世界への旅」シリーズと銘打って展開しています。シーズン中ほぼひと月に一回、各国の上演団体を招聘するもので、私たちは「日本への旅」をご案内しました。普段は貸し小屋で、キッズショウやミュージカル、小規模のロックコンサート(キャパ3000しかありませんから)のラインナップ向けの劇場設備ですから、もとより、こもごもに問題はあるわけです。

 過去2回、我々はここで上演していますが、因縁の小屋で、一度たりとも満足に仕込みを終えられた記憶がありません。さすがに三度目の正直です、今回ばかりは万全のユニオン対策で挑みます。間の悪いことに、ちょうど新しいトロント市立のオペラハウスがこけら落としで、若い働き盛りのユニオンメンバーは全てそちらに取られ、こちらは定年後か、定年間際の、ベテランおじさんばかりで攻めてきています。

 ユニオンの課題は、如何に多くの現場労働者を一時間でも長く拘束させて、その人件費約4分の1を占めるユニオン収入を増やすか、にあります。私たちは逆に、如何に効率よく現場の作業を進め、契約書どおりの拘束時間内で、どれだけ多くの仕事をこなすか、を考えます。出来れば早く帰りたいのが本音です。この両者相反する作業コンセプトのぶつかり合いは、早くも小屋入り直後に訪れます。

 今日は何時まで仕事するのか、休憩は何時間取るのか、何をするのか、もし終わらなかったらどうするか、互いに互いの立場や計算をにらみながら、時に脅され、あるいは呆れられ、契約書を振りかざしたり、メールのプリントアウトが出てきてみたり。
これでこそアメリカ、働く者と働かされる者の戦いです(ここはカナダのトロントなんですけどね)。このときに出番なのが、正に、プロダクション・マネジャです。

 どういうやり取りなのか、相手のでまかせを真に受ければ、とんでもない余分の人件費が発生します(一人当たり一時間400ドル、劇場に居る全てのユニオンメンバー20人分とか)。それをこちらの作業内容で譲歩しつつ(照明係だけ残すとか)、相手にも少しだけ上増し請求ができるように配慮しつつ、主催者と我々ゲストアーティストを納得させつつ、プロダクションに余計な出費を発生させないようにしつつ。

 今現在ではニューヨークにさえこのスタイルの交渉は残っていない、とのこと、私たちのプロダクション・マネジャのジム氏は何か、珍しい体験をしたようです。トロント全ての劇場がこうではないという証言(現地、国際交流基金の担当者の方)もあり、ぼくとしては8年ぶりに訪れたこの機会に、是非過去二回のリベンジを達成しなければ、ということで、この項次回へ続きます。

(2006/10/19)


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