Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》06/10/26
●2006年10月 <その10>
あがり!●BAM
パリで世界初演を開け、びわ湖で日本初演、ロンドンを経由して、ニューヨークへ。公演すごろく、無事に「あがり」までたどり着きました。ここでの初日は招待客も評論家も多く、東京の公演以上に気が張り、また同時に、準備の期間中クオリティの高い労働者との仕事を味わえるので結局大変なんですけど、終演後多いに盛り上がった客席やBAMフレンド(スポンサー)とのパーティも、これまた大変なんです。
この作品、びわ湖ホールとの共同プロデュース2作品目で、また自分自身がデザインアレンジに関わってきたものなので、思い入れが結構あったみたいです。というのも、今実際実にホッとしているから。美しいのは当然としても、どれだけシンプルにまとめられるかを課題としたアレンジだったので、透明感や距離感のついての照明家としての美意識も、ずいぶん試されているように感じつつ、今に至っています。
劇場としてのオペラハウスは昨夏にリニューアル工事が入って、舞台床は滑らかにフラットになり、照明機材も一新、楽屋もピカピカなバリアフリー。ずいぶん使いやすくなりました。ネクストウェイブ・フェスティバルのダンス部門の大口のスポンサーは元フィリップモリス財団、他にも多くの寄付者がいて、この企画全体が維持されています。劇場の改装も決して自己資金ではありません。すばらしい街ですね。
今回、メキシコ3箇所、カナダ3箇所、そしてアメリカ2箇所と廻りましたが、それぞれの劇場の成り立ちも、運営も、お客様も、スタッフも、それぞれずいぶんと違うものでした。しかしこのBAMほど、自覚的に意識的に「わたしたちBAMは」と語りだす劇場は無かったです。守りが堅いというか、プライドが高いというか、前回来た時はそれほど感じなかった、排他的な姿勢の匂いが気になります。
私たちのオーダーに関する彼らの仕事の段取りについての議論には、当の私たちは全く関わることが出来ませんし、結論は確定的に伝わってきます。もちろん、ユニオンが相手ですからそれも当然というば当然なのですが、何かもう少しうまい進め方がないものか、彼らばかりの問題ではなく自分と自分たち自身の作業のあり様も含めて、いろいろ考えさせられました。言葉の壁は必ずしも大きくないのですが。
ぼくも緊張していたみたいです。帰りがけに、劇場の照明チーフに、もっとにこやかにやろうよ、と言われました。そうですね、プレッシャーに負けて現場の空気を動きにくいものにしてしまっていたかもしれません。まだまだ、学ぶこと、特にセルフコントロールを、身に付けなければいけないと思いました。人を動かす、仕事にせよ作品を通じてにせよ、こちらの構えは広がりのあるものでなければ。
BAMのプログラムは安定的に観客が動員できる国際的なビッグカンパニーに限定されています。このオペラハウス以外の2会場では小規模の演劇やコンサートもありますが、新進芸術家のための舞台とは全く違います。日本から来て、この劇場で仕事が出来るのはやっぱり大変なことなんですけど、そのめんどくさいことを、もっと楽しくこなせるようになることが、今後の目標ですね。
(2006/10/26)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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