Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》06/10/07

万国文化中心報告 vol.184

●2006年10月  <その2>

グァナファトのダウンタウン●現在のメキシコ

 会場のオーディトーリオ・デル・エスタードは1991年に、この町が地域の主都市となってから250週年を記念した建物とのこと。確かにそれにふさわしいモニュメンタルな外観は、車で山道を抜けていく折など、とても目を引きます。飛行場からダウンタウンへ通う街道の対岸に位置するので、昼間は陽光を浴びて誇らしく存在を主張しています。また回りにほぼ何も無いのが良い効果を上げています。

 設備はやはりほぼ何も無く、セルバンティーノ・フェスティバルのためにレンタルされたもので公演を成立させていますが、公演の無いときにはかなり廃墟な感じだと思われます。私たちの仕込みがこの会場で1年ぶりの仕事だったはずですから、多分2日間かそれ以上、掃除とメンテと片づけでおおわらわだったみたい。公演初日ですらぎりぎりまで、ロビー・ホワイエのガラス磨きが続いていました。

 ロビーは柔らかな曲線と、そのモニュメンタルな空間ヴォリュームをふんだんに用いて、大変おおらかな気持ちの良い場所に仕上がっています。天井は高いのですが、2階席へ導入する階段の設計が上手くて、視線は自然に水平に、あるいはわずかに上向きに滑ります。視線の先々に大きな開口が巧みに配され、あの窓からは小高い丘、こちらは町、またそこには大きな岩肌が、という具合で全く飽きさせません。

 この国では珍しいことだと思うのですが床にはカーペットが敷いてあります。壁体に用いられているコンクリートのマッシブな威圧感と足元の柔らかさの対比、天井の白、そして壁画には赤が印象的なモザイクで、場内一杯の観客の拍手する姿が写されています。場内は赤の座席と金色の壁面がグレーのコンクリートに囲まれるように置かれていて、幾分か質素に、舞台に集中できる雰囲気が維持されています。

 それでも空間の容積は充分に確保されていて、それは「新しい贅沢の感覚」に確かにつながっている気がするのです。この山中ですから移動はバスかタクシーあるいは自家用車ということになります。町は狭いところに折り重なるように住宅が密集し、また市街地でもトンネルや地下通路は自動車専用とされ、人は狭い歩道や街路を伝うようにして進んでいきます。曲がりくねって狭くて見通しが利かないのが日常です。

 メキシコに有るもの→不均質なサービス、無いもの→ダブルチェック、とか言われてしまうほど、目先のことに追われて作業する人ばかりが沢山います。そんな暮らしの中で、このオーディトーリオほどに透明な壁が多用され、直線的な見通しが尊重された建物での体験は、実に現代を表現していることになりはしないでしょうか。東京の街中における有楽町国際フォーラムと同質の経験を、計算させた感じがします。

 グァナファトの町を歩くと、本当に沢山の人とぶつかりながら行き来しなければなりません。今の時期、なお人口が増え、大学も高校も始まり生徒や学生が道一杯に歩いていきます。であればこそ、人っ気の無いモニュメンタルな会館で、1700席を1000名未満で埋める位の動員は、皮肉な気もしますが、国際フェスティバルのステイタス、その優雅な雰囲気の醸成に、成功していたとも言えるのかも。


(2006/10/07)


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