Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》06/11/25

万国文化中心報告 vol.195

●2006年11月  <その3>

束の間の●KLPac

 クアラ・ルンプール、パフォーミング・アーツセンター。あまり無いケースなのですが、今回は仕込みだけ、山海塾本隊が北米ツアーから戻ってくる1日間のつなぎのために、2泊1日でマレーシアに滞在しました。雨季の赤道直下、思ったよりも蒸さず都市環境は快適。ご自慢のツインタワーは重く立ち込めた雲に突き刺さり、突然の豪雨と雷鳴、夕方の街の景色はとてもドラマティックです。

 朝から午前中一杯、滞在中は午後3時くらいまでは、晴れ渡った空に朗らかな陽光が溢れます。日々その落差を味わうせいか、地の人々はとても穏やかで、劇場にも街にも緊張した空気がありません。特段の伝統芸能も無い(無いというと語弊はありますが、目立った芸能文化に乏しい)のも、こうした自然環境が背景にあってのことなのでしょうか。なんと私立のこの立派な劇場は、いつでもとても静かです。

 立地的には大きな公園の奥深く、池と芝生に囲まれたガラス張りのエントランスがあります。ショップ(作業場=大道具制作施設)もガラス張りで、劇場創作の一端が公開されています。レストラン、情報ブース、ブラックボックス150キャパの小劇場と、今回の私たちの公演会場である600席ほどの主劇場が、レンガ囲いの主建築に納まっています。2階にはオフィス、3階にはアカデミーがあります。

 アカデミーは、ニュアンスで言うとカルチャー・センターみたいな感じ。講座や講演会、バレエなどのレッスン、研究会などがプログラムされています。経済的に豊かな国内社会の反映なのか、一般の人の出入りは全く無いにもかかわらず、多くの保安職員や清掃員が常に秩序だって働いている様子が、とても大人っぽい雰囲気を作っていて、作業する私たちも、何か、穏やかに、行動しなければいけない感じ。

 周囲の見渡す限りの芝生は、柔らかな丘陵を模して、ところどころに配された人工的な構築物をアクセントに、市民の憩いの場、的な空間を提供しています。平日でしたから誰もいないので、休日には家族連れなどが出掛けて来るのでしょうか。園内、そして建物の中の全ての案内板が英語表記でしたから、それらによれば、いずれにしても、殆んど、人の出入りは考慮されていないんですけどね。

 劇場の施設は低予算で企画されていながら、仲々に機能的。さほど高くないグリッドは二重で、モーター、ホイストを設置して自由な位置にバトンやトラスを降ろす仕組み。仕込み時間はたっぷり必要ですが、良い飾りが出来ます。客席勾配は急で、加えて舞台に高さが無いので、アンフィテアターの気分ですね。プロセニアムはレンガ造、座席はカラフルな6色の椅子がランダムに並び、良い具合に無国籍。

 照明機材はイギリス製、アメリカ製が半々。シンガポールから照明技術の留学生が来ていました。彼は日本にも短期留学していたとのこと。日本の照明技術は国際的に見れば異端ですから、熱心な留学生をもっと現場で受け入れていけば、日本の照明技術のオリジナリティがいずれ国際的にも評価される機会につながる筈ですね。日本の劇場技術と創作力を、外国人でも学べるように体系化してみる必要がありそうです。


(2006/11/25)


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