Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》06/12/10

万国文化中心報告 vol.197

●2006年12月  <その2>

りゅーとぴあ●鼓童12月公演その2

 りゅーとぴあ劇場は真っ黒で、客席勾配もきつく、舞台美術の平面的なものを平面的に照らすのも難しそうですが、太鼓のように立体的なものを適正なモデリングを保ちつつ照らすのにも工夫の求められる会場です。

 太鼓の場合、基本が一品制作の工芸物なので、仔細に眺めると個々の木肌の色、胴の張り、面の荒れ、すべてがそれぞれに異なり、今回のように色味の少ない生の照明で空間を提示する際に、太鼓が空間の表情を出してしまう場合があります。

 舞台の空間性を重く観ずに、音楽の時間性を主にデザインを進めていけば、この太鼓による空間の表情は演奏者個々のキャラクターとも相まって、大変に魅力的なコンサート・ライティングを実現させることが出来るものと思います。

 しかし今回のデザイン課題としてはこの太鼓の表情は極力消さず、さらにトータルにバランスの取れた空間性を構築したい、と思っていました。具体的には太鼓の見た目の大きさを演奏家との対比で自然な感じにまとめること、加えて、空間の見た目の奥行きをコントロールして客席と舞台の交流をし易くすること、の2点です。

 太鼓に対して演奏家のほうが明るければ、太鼓は大きく見えません。太鼓を明るくして演奏家を暗くすると、太鼓の作り物感が際立ってしまって、結果的に演奏家の実在が強調されます。逆説的ですが、演奏家を人間味なく照らすさまざまの工夫が、太鼓の大きさを自然なものに見せる秘訣ということになります。

 空間の奥行きが客席舞台間の交流に与える影響は、普段そんなには気にしないことなんですけど、奥行きを強調すると舞台の緊張感が高まって見えます。奥行きを作らず平面的な構図を印象づけるようにすると、緊迫した構図であれば客席の集中は高まりますが、分かりやすいミザンセーヌの場合には(出演者同士のコミュニケーションは難しくなるものの)客席からは舞台に親しみ易くなるわけです。

 りゅーとぴあ劇場の床が黒塗装されていることは、こうした空間操作を実に容易にします。世田谷パブリックシアター、北九州芸術劇場中ホール、他の劇場にも黒い舞台はありますが、客席勾配との兼合いで考え、その処理の妥当性がこれほどまでに発揮されている実例を探すのは、そんなに簡単なことでは無いように思います。場内壁・座席ファブリックまで含めて黒い、この会場ならではの特質です。

 例を幾つか、太鼓と演奏者の大きさについては「あじゃら」と「大太鼓」、空間の奥行きに関してはプログラム外の「唄(テュエ・テュエ)」を挙げることが妥当でしょう。普通の会館のような白い舞台・適当勾配の劇場では味わえない、照明による空間変容のダイナミクスが実現しています。

 舞台空間の雰囲気の変化が音楽の聞こえ方をも左右し、ひいてはコンサートの根幹を揺るがすようになる、とまでは思いませんが、少なくとも、お客様の集中力を良い具合に途切れさせずにおく、その実証的な公演となりました。

(2006/12/10)


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