Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》06/2/1

万国文化中心報告 vol.162

●2006年2月  <その1>

ブゾン●パリ郊外の町

 セルジー・ポントワーズでの公演は会場変更となりました。昨年末、パリ郊外暴動の被害を受け、劇場が使えなくなった結果の措置です。セルジーの劇場は集合住宅街の真ん中にある瀟洒な低層の建物でしたが、テレビ越しに見ていた事件の実際の影響を知ると、複雑な気分を味わいますね。パリにはバス利用で45分程度の距離。

 今回の会場も住宅街の只中に在って、一見したところ劇場というよりコミュニティセンター然とした外観です。舞台のグリッドに高さが無く、思いがけず低層建築としてまとめられているからだとは思いますが、もしかすると住宅地ならではの建築規制があるのが理由かもしれません。周囲には小学校などが集中しています。

 プログラムには映画もダンスも演劇も、一通りのものは取り上げられています。郊外のいくつかの似たような規模の劇場が企画協力し合って、今回の山海塾の会場提供もそうですが、あわただしい劇場運営ではなく、むしろゆっくりと、地域に根ざしてのコミュニティ活動をベースにしている感があります。

 ここも市立の劇場なのですが、キャパシティは500席あるかないか程度、舞台も小さいので親密な上演効果が必要な作品に向きます。上述の通り大規模な装置を組むことも出来ませんし、なんというか、行政的な要請による地域地区の拠点とされる文化施設ですね。皮肉で裏腹ですが芸術的モティベーションは決して高くない。

 前回のヌベールの劇場もそうでしたし、座席配置を同心円状にして緩やかな勾配を持たせてあります。客席空間の緊張感は殆んど無く、くつろげる良く出来た内装です。さりげないこうした地域の施設でもそうした雰囲気が実現できているのは、さすが「民度」の高い国だからでしょうか、不思議なバランス感覚を見る気がします。

 施設設備的には実験的な中規模公演をサポートするのにはとても便利に出来ています。大学や上演研究が必要な団体には実際的な設計ではないでしょうか。舞台部分のプロポーションは1/√2、√2−1の分が舞台奥のスペース、舞台の幅を一辺に取った正方形を客席部分のサイズとし、基本的には正方形2つ分の上演空間です。

 建物の天井高は客席から舞台まで同じで、プロセニアムの場所にちょっした区切りをつけてあります。舞台側は屋根ぎりぎりのところに綱元のシステム、客席側は内装的な天井を作ってそこからキャットウォークが下がります。このキャットウォークと同じレベルでギャラリーが客席両サイドから舞台奥まで廻してあります。

 プロセニアム部分の区切り方、舞台と舞台奥のスペースの区切り方、劇場ロビーと楽屋スペースの配置、搬入口の設置、搬入車両置き場や観客のための劇場前庭の設計、照明音響映像のための調整室の場所と大きさ、運営・技術担当スタッフの常駐場所、それぞれ地下2階からの積み上げ方に工夫が凝らされています。

 この劇場の場合は他に映画館とスタジオ(小劇場)、レストランもあって、どちらかというと大劇場のほうが従の施設のような感じで、それもまた良し。懲りすぎない全体の構えと造りは大いに参考となるものがありました。

(2006/2/1)


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