Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》06/2/8
●2006年2月 <その3>
サン・ブリオゥ●ブルターニュ
ブルターニュの古くからの町、サン・ブリオゥのセーヌ・ナショネールです。市街地は細い石畳の道がまるで迷路のように入り組み、忽然と現れた郵便局前の広場に面して、新旧2つの劇場のファサードが並んでいます。新しいファサード
から中に入ると、フォーラムと名づけられた地下展示場、地上階の映画館、そして2階が舞台面になっている劇場にアクセスします。客席観はほぼ日本の市民会館と同じです。
キャパシティも空間容積もその3分の2くらいでしょうか、1000席弱の、2階席もちょっとだけ付いた、スクエアな印象の劇場です。ところが、裏側の複雑さは並大抵ではなかったのでした。隣の旧劇場が、これが1880年代のイタリアン・シアターで、実によく保存された現役の施設なのですが、これが曲者でした。
この建物を取り囲むように新しい劇場施設を計画したためだろうと思われますが、搬入口は、20mほどの大きくカーブしたスロープを使います。階床差は優に3mはありますので、このスロープを通る巨大なゴンドラで荷物を運びます。
また、新劇場の真裏が旧劇場ですから、下手から上手への移動は、この旧施設の舞台から客席へ抜けロビーを通って行くことになります。もちろん上がったり下がったりも激しく、しかも時代を幾世代も通過することになるわけで(新劇場は1980年代から90年代のもの、旧劇場は戦後に2回の修理を経ていて、その仕上がりと仕事の質の違いは明らかに分かります)、ちょっとめまいを覚えますね。
旧劇場は、傾斜舞台、綱元のシステムは木製バトンを使った手引きになっていて、3本のブリッジと、緞帳代わりの防火扉があります。防火扉には近所の商店広告がレトロに描かれ、客席にはシャンデリアが下がっています。4層の客席最上階は、木製ベンチの天井桟敷になっていて、映画のロケにも使えそうな、昔のままの雰囲気。
どちらかというとこの旧劇場が主な施設で、ここでは計画が出来ないことを手広く実現するために増改築を重ねた結果が、この複合建築なのかも。建物全体の愛称は「ラ・パセレイユ」といいますが、その名の通り全体が郵便局前広場から裏通りまでの「通路」にもなっています。大変ユニークな劇場なので、ぜひご見学ください。
新劇場ではダンスやポピュラー音楽が多く、旧劇場では演劇やクラシックの室内楽などを上演していて、動員規模と上演内容にあわせ、またロビーのフォーラムも使ったりしながら、気の利いたプログラム運営をしています。他には映画館と、さらにアンフィテアターという名の小スペースまでもあり、こうした隙間がたっぷり残してあるのは、非活動的なシーズンだからなのか予算がそんなにある訳では無いからか。
劇場の周りの旧市街には古い民家や商家も並び、無骨な石積み壁がそのまま建ち、曇り空と霧雨でしっとりとした佇まいがなお寡黙に感じられます。魅力的な谷間の街、サン・ブリオゥ、訪問をお勧めいたします。
(2006/2/8)
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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