Arts Calendar/Art's Report site/《Report
from TABISAKI》07/9/10
岩村原太の「万国文化中心報告」vol.212
|
サントリーホール●小ホールでの室内オペラ ジョン・ケージのオペラ、小規模の、室内楽のような上演に携わりました。サントリーホール・小ホール、この夏の改装から「ブルーローズ」と名付けられた室内楽用、ボールルーム様の会場です。床壁は全て木製、天井は漆喰をイメージして白く仕上げられ、16個のクリスタル・シャンデリアが下がります。椅子は仮設ですが、きちんとした肘掛け椅子を、いつでも決められたように並べています。 大ホールでの上演に際し、リハーサル会場として使用されるケースも多いと聞きましたが、部屋の幅と同じだけの昇降床があって、それにあわせての反響板の設置もあり、響きも良く、もしかすると隠れた名会場なんて評価がされてたりするかな? しかし、サントリーホール、20年前のオープン、計画はさらに前から、ということを思うと今世紀日本が獲得している劇場ハードの設計ノウハウ、それらの膨大な蓄積は恐るべきものですね。施主が明快なイメージを持ってさえいれば、きっとその建物は必ずや世界的名会場(劇場であれ演奏会場であれ)になる筈、と思いました。 このビジネス街の地下に与えられたスペースは、外光外音から全く遮断され、とても人工的な環境を構築しています。ところが音楽は自然なものなので、このアンバランスはどういうものなんだろう、と疑問を持ちました。少し窮屈な気がするのね。 音楽が自然というのは、19世紀作品を主としたクラシック演奏会においては人間の自然な情動を否定することは少なかろう、という岩村の個人的印象です。つまり音楽を享受(観賞)する環境はその演奏作品に影響を及ぼす、という前提で岩村はこの文章を書いていますが、必ずしもそうではない、という可能性は否定しません。何か会場のどこかに、「生(なま)」の部分が欲しいんだけど、という感じです。 ところがこの点に関してこの街、六本木アークヒルズでは異常なほど極端に、環境が人為的に操作されていて、館内の前々世紀ヨーロッパ文化を背景に持った絨毯や壁装照明器具等のアレンジは、それだけでも充分に自然な人の肌に逆らわない感じのするものでした。地域的なロケーションからすればアメリカ文物に由来しない欧州色の強い空間それ自身が、反都会的な存在を示す場合の、自然物の一例と言えます。 高層ビルの谷間の高速道路の狭間に、三角の形に一般道路が交差します。ビルは道路に面してのファサードなので、その三角地帯に東南と西南から光が射入します。はるかな高層建築ですのでガラス面での日光の反射は地面を直接照らさず、ビル間をジグザクに伝いながら穏やかに、大規模に周辺を明るくします。高速道路の白い構造がさらに光を乱反射して、まるで夢のような、光のシャワーが谷底に現出します。 ニューヨークやパリはもっと高緯度なので、こんなに強い光を味わう経験をしてきませんでしたし、それにもっと規矩正しくビルが並ぶので、こんなに乱れた光を目にすることも無かったと思います。残暑の季節とはいえ、鋭角的な真夏の光を東京で堪能しました。映像に写し取られた例を知りませんが魅力的な東京の光です。 (2007/9/10) |
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室