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from TABISAKI》07/9/15
岩村原太の「万国文化中心報告」vol.213
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ガラス張りのコンサートホール●奈良100年会館中ホール こんなホールがどうしてここに、という不思議な印象を持つことが時折ありますが例えばこの、100年会館中ホールはその理由の、一つの証明かも知れません。 先日のサントリーホールとは逆の、充分な環境が自然=人間の生活スケールを決して裏切らない奈良県奈良市、JR奈良駅の西側に立地する人造的なフォルムの建物、それが奈良市制100年を記念する大中2つのホールを擁した市民会館です。 外壁そのものを構造体として、建物の中は自由に区切ってホール要件を満たしています。中ホールはフローティング構造によるコンサートホール(約400席)。白く塗った鉄柱で組み上げたトリカゴのような骨組みに裏表にガラスをはめて、防音と反響と自然光とキラキラした内装の4つを同時に得ています。空間的には実に豪華。 無駄としか見えない内部の使い方は、建物の外構のゆとり(風が抜け見晴らしがよく空が広い)と対比的に、天井が高く光は洞窟の様に射し込み音もこだまするデザインを成立させています。非日常というキーワードが実効性を持って機能している感じ。大仏殿が現代化された味わいというか、神秘的な印象すら漂います。この立地でなければこの建物は意味を持たないでしょう、建築家の業について考えさせられます。 外光の取り込みを壁面への映り込みを介して実現する計画は、間接的で、直射光より天空光の、空の色味を意識した作業のようです。このことがなお大人っぽく、コンサートホールの浮き感、つまり地に足の着かない不安定で極楽的な、ゴージャスな空間印象を助長します。床板に採用された明るいオークイエローの着色も一役。 ここで踊ったのはセレノグラフィカのお二人ですが、音の薄い作品だったことは幸いだったと思います。舞台で発せられた音はひとまず頭上の空間に響き、そして客席に落ちてきます。ガラス材の反響が、とても綺麗に設計されています。 常にこの空間容積が意識される仕組みの会場では、観客とダイレクトに表情を見交わしたりする演目は、成立させるのが少し難しいのではないかと思いました。 会館の方にお聞きすると、ここではお能・狂言ワークショップの発表や、ピアノ・合唱の演奏会などに使用されているとのこと。実際には弦楽カルテットなどに抜群の音響特性ともお聞きしました。多目的ではないが、利用は単目的ではない訳。 この会場ならではの作品上演を構想するのはとても楽しい経験でした。場所的に限界があることも、職員の方たちとのコミュニケーションの材料になり、創作の内実が深められましたし、逆にこの会場ならではの可能性を教えていただくことにもなって、ご覧になったお客様にも喜んでいただける成果を得たものと自負しています。 クセのある会場が成立してしまった事情は回避できないとして、であれば運用的に、柔軟なプログラムの中で、使いにくい空間をいろいろにアレンジできるアーティストをレジデンスに迎えるのが面白いのではないでしょうか。市民参加は難しくてもどんな会館建築にもセールスポイントはあるはず。音の響きや光の美しさをきちんと使える演出家・技術家こそが、これからの時代に求められるのかも知れません。 (2007/9/15) |
岩村原太の「万国文化中心報告」の扉へ
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