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●万国文化中心報告

 パリから郊外電車で20分、ソー、という町のセーヌ・ナショネールです。ここで山海塾の「卵熱」を五晩連続で公演します。駅からはずーっと住宅街を抜けて歩きます。一軒家が並ぶその風情は京都なら衣笠・下鴨、閑静な上中級層が暮らす趣。果たしてどうしてこんな街のど真ん中に600席もの小屋が成立するのか。そんな疑問からレポートを始めようと思います。

 西陣のはずれ、それでも住宅地のど真ん中に位置する私達のスタジオギャラリーは、アマチュアのアーティストのためのオルタナティブなスペースを標榜しています。名づけて「西陣ファクトリーGarden」。西陣の元織物工場を私達の手で私たちが憩う庭にしていこうと、こんな長い命名にしました。そして3年目、アートセンターとかカルチャースペースとか、そんなイメージでこの元工場が語られる機会も増えました。でも、実際にアートとかカルチャーとか、センターとかスペースとか、きちんと定義付けられているわけでも無し、「本当の」カルチャーセンターについて調べたいと思うことも多くありました。一体そこはどんな場所で、何が行われる場所なのか。

 幸運なことに、ぼくの仕事がその疑問の答えを導いてくれそうです。山海塾は20年弱に渡って海外や日本の劇場を回っています。その中にはアートセンターと呼ばれる会場も多くあります。百聞は一見にしかず、現地で情報を集めてくれば良いのでは、と思いました。そこで働くスタッフに、いろいろ訊いてみれば良いじゃないかと考えています。そして、自分もそこで作業をしてみて、感じたことをまとめていくことにしました。これを名づけて「万国文化中心報告」。いかがでしょうか。

 ソーのこの小屋は、ロビーにちょっとした図書館とカフェ、あとはポスターなどが張ってある情報スペースという造りです。一見したところメゾン・ドゥラ・キュルチュール(文化会館)みたい。聞いたことだと、なんでも国家予算が若干ついて、国に選任されたプログラムディレクターが仕切っているとのこと。面白かったのは別のセーヌ・ナショネールにいた照明係りの女の子が、そのディレクターと一緒に異動して来ていたこと。同じ作品をやったのだそうで、彼女は本番を見て我々のことを思い出したとか。ぼくもそう言われて彼女のことと彼女たちがいた前の大きな劇場のことを思い出しました。
(2000/3/20)

●テルアビブのパフォーミングアーツセンターで無事初日が開きました。

イスラエルオペラの本拠地であるこのセンターには、コーラスとオーケストラ、バレエ団とスタッフが所属しています。スタッフは2交代制で、徹夜での作業も可能なシフトを組み、オペラのインターバルにジャズやクラシックのコンサートと例えば山海塾のようなゲストカンパニーの公演を取り上げて秋から春にかけてのシーズンをプログラムしています。ぼく達の公演の間に、次のオペラの準備を進め、劇場が遊ぶことのないように効率よく回転させるわけです。

前回の会場はフランスの国立の文化会館でしたが、比較すると劇場文化の有り様が、国民性によって、もしくは国の文化政策の方針によって、全く雰囲気も組織も違う事が良く分かります。イスラエルのように新しい国では、多分まだ、劇場で夜を過ごす人たちは珍しいのではないかと感じました。ちょっと高級な時間の使い方なんだと思います。(21/3/000)

●通称してTAPACと呼ばれるこの会場は、一般にはテルアビブミュージアムとして知られています。広い敷地の地下に駐車場を設け、中庭を囲んで図書館とイスラエル現代美術のギャラリー、ブティックが並び、その一画にオペラハウスがレイアウトされているわけです。外観は壁材のコンクリートブロックがむき出しだったり、コンクリート製のアーチが象徴的に使われていたりしてまとまりのない印象を受けますが、内部空間には存分に大理石や毛足の長い絨毯を使って白一色にコーディネート、社交的な雰囲気が上手に演出されています。

面白かったのは公演のない昼の時間帯です。一階の喫茶店でオペラのヴィデオを流し、その脇の中二階に現代彫刻のギャラリーが開放され、休憩のコーナーはちょっとした参考書も販売していて、学生がデートなどに利用、夜と違ってカジュアルな空間になってました。中庭とガラス越しに連続する計画が貢献している感じです。ホールのスタッフはみんな若くて愛想もあって好感度良し。文化殿堂なんかじゃないオペラハウスがイスラエルにも実現しています。

追伸、イスラエルの現代美術はちょっとヒップな感じ。タブローを目にする機会は少ないけど、オブジェはどれも単純形態を使った楽しい作品ばかりです。色彩はにぎやかでなくどぎつい印象がないのもぼくが見る限り共通しています。アートという作業が、クラフトやミュージックと距離を置かず生活を楽しくするために機能してそうな、健全な雰囲気が魅力的だと思います。若向きの服屋さんもそんな味わいで、手作りの靴やかばん、服、アクセサリーを商う店が目立ってました。
個人的にヒットされたのは、シンプルなAラインの黒のスリップドレスに手書きの宇宙模様をちりばめたデザイン。そんな物があふれてます。(25/3/000)


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