Exhibition Report / CEZANNE AND JAPAN at Yokohama Museum of Art

展覧会寸評

横浜美術館 
開館10周年記念 「セザンヌ」展

会期:1999年9月11日(土)〜12月19日(日)

開館時間:10:00〜18:00 (金曜日は20:00まで)
休館日:毎週木曜日(9/23は開館)
9/17・24・27、 10/12、11/5・24

料金:一般1200円、大学・高校生800円、中・小学生300円

「アーツカレンダー」横浜美術館のページへ→「セザンヌ」展

暦の上では白露を迎え、ぬけるような青空がようやく秋の気配です。昼間はまだ夏物を着ないと汗ばむ陽気ですが、そろそろやせ我慢をしてでも秋の装いを楽しみたいところ。落ち着いたこげ茶色のブラウスに袖を通して横浜美術館へでかけることにしました。開館10周年記念企画の目玉でしょう、大規模な「セザンヌ」展が開催されます。オープニング・レセプションとプレス記者会見に!

近代絵画の父ともいわれるポール・セザンヌ(1839-1906)。この展覧会では初期から晩年にいたるセザンヌの画業を「初期絵画、風景、人物、静物、水浴」の5つのグループに分けて展示してあります。油彩が約60点、水彩・素描などが約30点。これだけの規模の回顧展は国内では13年ぶりとか。そして展覧会のタイトル CEZANNE andJAPAN が示している通り、日本におけるセザンヌ受容の歴史を振り返るというもう一つの重要なテーマが全体をまとめています。

さて、この展覧会は横浜美術館とNHKと東京新聞との共催。プレス内覧の時間に会場に足を踏み入れると、美術館独自の企画展だった前回の「世界を編む」展とはさすがに様相がちがいます。記者会見場も広いレクチャーホールが当てられ、質問の内容も10周年記念の企画事業としての意義付けに集中します。例えば総費用は、とか99年度の予算配分は、とか。企画立案は6年前で、その時から国内外の美術館・コレクターとの接触がスタートしたと聞いて、美術館の活動のスケールの大きさにはあらためて感じ入るものがあります。

そうした質問ばかりではなく、やはり「セザンヌと日本」という独自の味付けにも質問が及びます。明治末期から大正期にかけて図版で紹介された作品や収集家が集めた作品が展示されるということで、その調査のプロセスなども興味深いものでした。

ただ、会場ではこうした視点は作品タイトルの下に添えられた小さな解説プレートと、展示されている何冊かの資料でしか観客には伝わりません。「白樺第**号に掲載」とか、「収集家のだれそれが**年にパリで購入」とか。絵を見ることに集中していると気がつかないのでは、と感じてしまうほど控え目な主張です。そこのところが少し残念というより不思議な印象を持ったのですが、学芸員の方によると、それはあくまで「美術館はこういう視点で『セザンヌの回顧展』を用意した」ということなのです、という答えでした。「セザンヌと日本」は大切なテーマであるけれど、それを見る人に押し付けるものではない、とも。たしかに独自の視点で企画者側の意図や主張を強く感じさせる展覧会もたくさんあります。その是非は別として、見る人が作品に向かいあって自由になにかを感じることが基本、ということなのでしょう。つまり「それぞれのセザンヌ」を楽しむのが、なにより大切なこと、ということかもしれません。そしてせっかく足を運ぶのだから、こうした独自の視点にも少しでも注目してプラス・アルファを得ることができれば、それは展覧会を楽しむ醍醐味のひとつといえるのではないかしら。

さて、そんなことを考えていると開会式の時間です。横浜市長さんの挨拶やら、テープカットやら、約3ヵ月間開催される展覧会が華やかに始まりました。きっとたくさんの人たちが押し寄せることでしょう。レセプション招待客の内覧はもうすでに大混雑状態。

とりあえず人ごみの中で「私のセザンヌ」を確認して帰ることにします。「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」です。この絵を見ると一遍の物語が頭にうかんでくるのです。7月に書いた辻邦生「十二の肖像画による十二の物語」には姉妹編があって、タイトルは「十二の風景画への十二の旅」。その中の一遍がこの絵をモチーフにした「地の掟」という不思議な物語です。本の中でしか見たことのなかったこの絵、きらきら光る透明な空気で満たされていることを発見して大満足!解説を読むと、1929年に日本の収集家原善一郎氏がパリで購入して日本に招来したものだそう。お目が高い!

気持ちのよい風が通り抜ける入り口前の広場にもテーブルと椅子が並べられていました。パリのカフェ気取りでレセプション会場のケーキとワインを楽しんで、幸せなひととき。

横浜美術館開館10周年記念「セザンヌ」展には記念講演会やスライド・レクチャーなどさまざまな催しが予定されています。カタログもとても充実しています。

Sep. 11, 1999 Sumitani


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